第12話:リムの進路とプリシラの進路
「うん、少し合ってる。人を治す仕事だ」
リムは、さらりと言った。しかし、リムの胸は熱く、目はプリシラの目を射抜くように真っ直ぐだった。
「ってことはドクター?」
「当たりっ」
「えー、どうしよう?」プリシラは急に慌てて頭を抱えた。
「どうしようって?」
「えっとねー、私も医療関係にしようかと今思ったけど、無理よ、ね・・・・・・?」本当にリムの進路を聞いて、今まさに思った。
「お前、人殺す気?」
「酷ーいっ。どーゆーことお?医療系っていっても、ドクターやナースだけじゃなくて、受付とか、作業療法士とか、PSW*¹とか、介護士や理学療法士とか色々あるじゃない」
「お前が何で、そんなに医療系に詳しいんだ?」
「前に、男友達の自転車に2人乗りしてたら、転んで骨折して、3週間くらい入院したのよ。その後リハビリもしたの。それでね」
「へえ、お前にも男友達いるんだ?」リムは、プリシラが骨折して入院したことより、プリシラの異性関係が気になった。
「そんくらいいるわよ。友人の少ないカタブツのリムお兄ちゃんにガールフレンドがいる方がおかしいわ」プリシラは少し面白くなってケタケタと笑った。
「笑うなよ。俺はモテるんだよ。あっちから声かけて来たんだ。それに彼女も女性ドクターかナースになりたいって意気投合したんだよ。お前の男友達みたいに転ばせて怪我させるような軽い奴じゃないよ。真剣なんだからな。中学の男子なんかバカばっかりだ。しかも西中なんて」
そうリムに早口で吐き捨てるように言われて、プリシラは急に悲しくなり、幼き日のように涙がこみあげてきて、目に涙を溜めた。
「リ、リムお兄ちゃん、そ、そんな風に言わなくたっていいじゃない。あたし笑って悪かったわ?そ、そんな素敵な人と付き合ってるの・・・・・・」
胸と目が熱くなってきて、涙が無意識のうちに出てきて、プリシラは、中学生から幼児の時に戻って、同じく、2つ上の幼少期のリムの前で泣いているかの気持ちになった。
リムは、そんなプリシラに戸惑った。プリシラに恋心はないが、昔のように、妹を見るような憐れみの思いを覚えた。しかし、幼少期から、もう長い年月が経っていたので、リムは焦ってしまった。
「お、おい、プリシラ、泣くなって!まだ泣き虫は治ってなかったのかよ?」リムはプリシラの顔を覗き、慌てた。
*¹精神保健福祉士
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