第11話:プリシラの部屋で2人で
そうしてミリィとメルシェラは、そのままキッチンで片付けをしてから話をし始め、リビィとラシェムは、ケビィを連れて農畑や家畜を見に行ったり、教会やカフェに行った。プリシラとリムは、1階のプリシラの部屋へ入って行った。
プリシラが、高校生になったリムに恥じらい、部屋に入ったものの、固まってドアの裏に背を付けて怪訝な顔をして立っていると、リムは慣れたように、プリシラの勉強机の椅子に座って足を組み、食事の時とは打って変わって堂々とプリシラに話しかけた。
「まあ座りなよ。酷かったテスト見せてみろよ」
リムは、プリシラの部屋なのに、自分の部屋にいるかのように振る舞う。プリシラは自室なのにオドオドと、リムの斜め向かいの、ベッドの縁に肩をすくめて座った。プリシラには、今のリムの態度は彼がバレジアへ引っ越す前よりも、余計に偉そうに見え、言い方はあまり変わらないように聞こえたが、面倒見が良く、気持ちにどこか温かみがあるように思った。
しかし、プリシラは、背が高くなり、座って組んだ足は引っ越す前より長くなって、一段と男らしくなったリムと、その声を聴いてドキっとした。その反面、そんな格好良くなったリムにガールフレンドがいると知って落ち込んだ。リムが、これまでのリムに見えないような気がして緊張し、どう関わればいいのか戸惑い
、もじもじとした。
そんなプリシラにリムは、変わらぬ態度で接しようとして、ひょうひょうとし、淡々としていて、その態度が余計にプリシラを戸惑わせた。
「いいの?折角来たのに勉強見なくて」リムはプリシラが黙りこくっているので、引っ越す前のように落ち着いて聞く。
「いい。もうリムお兄ちゃんを頼りにしてちゃダメだから」
「そんなこと言ったって、お前、高校はどこ行くの?」
「バレジアに行ってガールフレンドも出来たのに、あたしのこと心配?」
「まあ、引っ越すまでずっと隣同士で、お前の面倒を見てきたし、心配というか、見た甲斐があってほしくてね。親心のようなものだよ。で、高校は?」
父親のように聞き返すリムに、プリシラは、親心のようなものかと、気持ちがまた沈んだ。しかし、
「え、えっと、ブレジア西校・・・・・・」と、大好きなリムには何でも正直にオドオドしつつもリムをチラと見て答えた。
「西校?あんな受験が要らないような地元の高校?今時、もっと専門的なことが学べる所に行くもんだよ。頑張る気ないのか?そこまで貧乏でもないだろう」
「いいの。高校は遊んで、大学か専門学校は専門的なとこに行くつもりなの」
リムは呆れて溜め息を長く吐いた。「そんなんで大学や専門学校に行けるかよ。甘いなあ。なんかやりたいことや目標はないの?」
リムはプリシラに自然と話し、兄のように進路相談をし出した。少々一方的だったが。
プリシラは昼食時のリムと今のリムと態度が違うと思ったが、そこまで違和感を感じず、むしろ懐かしく思った。プリシラは、リムと同じ場所で、リムと同じ職種で働きたかったので、リムの進路によって自分の夢や目標が変わった。リムがどんな職種を目指して、どんな大学などに入るのかが重要だった。リムにガールフレンドが出来たとはいえ、すぐに諦めるタイプではないので、少し戸惑ったが、リムと話せることが嬉しかった。段々、今のリムに慣れてきたプリシラは、リムの方を見て答えた。
「それはあるわ。家政科に行こうと思ってるの」家政科は自分に合っていると思っていたし、母も勧めるし、プリシラには受験が簡単なので、一応、周りにはそう言っていた。
「家政科?ああ、それはお前にぴったりだな。受験も、お前には難しくないだろうし、ブレジア西校からも行けるだろう。でも、それだけ?他には?」
「リムお兄ちゃん、パパみたい。ガールフレンドいるのに、あたしの進路そんなに気になる?」
「だって、お前はガールフレンドよりも脳ミソ少ないからな。それに、俺が引っ越す前までは、よく勉強教えたから、俺のプライドのため。ケビィだって結構賢くなったしね」
「ずる賢くね!」プリシラは、大好きなリムに対しても、カチンときたし、ケビィは可愛くないので、上手いこと言ったわ、と思った。
「シーラ、酷いこと言うなあ。なあ、家政科だけなの、やりたいのは?」
「え、えっと、そういうリムお兄ちゃんは何目指してるの?」
「何だよ。質問されて質問で返すなんて。何だと思う?」
リムは背筋を伸ばして足を組み替えた。自信があるようだ。
「何だろう?何でも出来そうだし・・・・・・」
「当てて見ろよ。お前が苦手な分野だよ。死んでも無理な職種だな」
「えー、もしかして理数系?電気関係とか?それか政治経済か、とにかく難しい仕事?」
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