二人にしかわからない夫婦の歴史

正直重たいわ……。


と優美が口をはさむ。


これからもその思いを抱えて生きていかなければならないなんて……。

なんか束縛されてるみたい……。



それは違うと思うけどな……。


という緑郎の一言に



なんで??


と不服そうに優美がつめよる。



多分夫婦にしかわからない歴史があるんだと思うんだ……。

僕と優美の事だってきっと何も知らない人には理解できないだろうしね……。

僕は生駒先生の夫婦感は知らないし、

自分の死を目の前にした静子さんの気持ちもわからない。

けれど死を直前にしてまで、

生駒先生の先々を心配して、

励まして……。

きっとそれを先生はわかっていたからこそ、辛かったんじゃないかな?

重たいのではなくて、どちらかと言えば

静子さんの死を恐れていた。




う〜ん……。

それはわかる……。

わかるけどそれってやっぱり理想論だよね。

挙句の果てに自分の思いを込めたお花の横に、報復という言葉の花を添えるなんて…。

深月さんが生霊って感じるのもわかる気がする。



……。

言葉がでてこない。


とにかく真相を確かめる為にも、

先生に会いにいくのが良いと思う。

ね?深月さん??


そうだね。

良かったら僕も一緒にいくよ。



うん……。

緑郎さん、いろいろ調べてくれて本当にありがとう。優美ちゃんも一緒に考えてくれて、二人がいてくれてわたしはすごく心強いわ。



二人で顔を見合わせてニコリとこちらに微笑む。



この二人の仲が戻って本当に良かったと改めて思う。意見は違っていてもどこか尊重しあっている。相手をさげすむのではなく、しっかりと相手の話を聞いてクリアにしていく。

むしろ何故離婚したか私には理解できない。

まぁそれが緑郎のいう

なのかもしれない。



生駒先生が今どこにいるか深月さんは知ってるんですか?



わからない。

事件の後大学では私が先生と不倫していたという噂が広まった。

ゼミは他の教授が引き継いで、生駒先生は長期の休暇をとるという話になっていたわ。

私は大学には行きづらくなって中退してしまったし……。しばらく家に引き込もっていたわ。



そうですよね。

じゃーとりあえず生駒先生の名前で検索してみましょうか?



緑郎の意見を聞いて

生駒隆志

で検索してみる事にした。



本当は前からそうしたかった。

けれど真実を知るのが怖かったのだ。


心臓が高鳴った。

本当に辿り着けるのだろうか?

不安な気持ちになり

緊張が高まり

楽しみような……

怖いような……

ドキドキが続く……。

こんな時って待ってる時間が

どうして長く感じられるのだろう?

なかなか画面が切り替わらないようなつ気持ちになる。


画面が切り替わる。


①クラウドファンディングの参加?

…これは違う

②ユーチューブ

…これも違う。

③アーティスト?

まさかねー……。

やっぱり違う。



④雨宮天満宮の神主……。


ドクン!!


赤い筋がひどく騒がしく波打つのを感じた。

ずっと見えなかった出口の扉をやっとみつけられた気分だ。


間違えなくつながった。

不安は確信にかわり、

今自分の宿命を切りひらくべく道

が開かれた気がした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る