我が物と思えば軽し傘の雪

さわさわと

小雨の音から次第に

風を含む大粒の雨になりバチバチと

窓に降りつけてきた。

遠くで大きな石を落としたような轟音と共に眩しい程の稲光


病院の前に黄色い車がとまった。


昔カリオストロの城かなんかで、

ルパンが乗っていたクルマだ。

しばらく動きなく、停車してると思ったら

助手席の扉が開いた。

中から優美が慌てた様子で傘もささずに

走ってくる!


僕は急いで傘を持って優美にかけよる。


緑郎さん!

どうして?!


あー…。それよりどうした?


あー、あの運転してくれた女性が、

病院に着いた途端にハンドルに伏せってしまって…。


受けつけの人に話して…、

いや受付まで運ぼう。

行こう!


そう言って優美を促して車へとかけよる。


ハンドルに伏せっている女性を見て、

あっやっぱり彼女か?!


優美傘持ってくれる?


はい。


そう言って僕は彼女を抱きかかえた。

そのまま優美に傘を持ってもらい、

病院へと向かった。


受付に向かおうとすると向こうから看護師が、よってきてこちらの様子を伺ってきたのでそのまま話したら、ストレッチャーを持ってきてくれて、彼女を診察室へ連れて行ってくれた。


優美はいろいろと質問されていたが、

どうやら運ばれた彼女は看護師の見立てによるとただ眠っているだけのようだ。


待合室で待つように言われ

優美を連れて移動する。



二人で病院のベンチに腰をかける。


何があった?

そもそも優美が入院したんじゃなかったの?


うん。

また緑郎さんに迷惑かけちゃった…。

私が病院にいたのはただの熱中症で

脱水症状。

自己管理不足よ。

その上お金の管理もできないから、この病院代も払えない。払ってしまったら次の給料までご飯も食べられない。

でも私には誰も頼る人がいないから…。

 

そう言って涙をボロボロとながした。

肩が小刻みに動いて、

軽く嗚咽しかけている。

 

その肩に手を回して彼女の髪を撫でた。

彼女はそのまま声を抑えてシクシクと

しばらく泣き続けた。


ビショビショに濡れて重くなった傘。

たえ間なく流れ続ける優美の涙。

その涙の分だけ彼女は色々な思いを

背負い込んでいたのかもしれない。


今ならその思いを自分の事として

一緒に考えられるかな。


我が物と思えば軽し傘の雪か…。


ふっふっ!


それ何かの例え?

でも…雪って!

こんなに 暑いのにね!


と彼女が微笑んだ。

それは僕が大好きだった優美の笑顔だった。


優美。


ん?


僕が悪かった。

今更こんな事言っても許してもらえないと思うけど…。

もう一度やり直さないか?


運命を信じるかはわからない。

けれどやはり僕には優美が必要で、

こうなる事は彼女のいう通り宿命だったのかもしれない。


彼女が目覚めたら聞きたい事が山ほどある。











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