ふかいもりのひかり

深月(みつき)が初めてその糸を見たは、


暑い夏の最中さなかだった。

その日は朝から不吉な雰囲気だった……。


家の前の電柱にやたらとからすが集まっていた。

窓を閉めてもうるさいくらいに

カラスたちは鳴き続けて、

その青い空を徘徊し続けた。


気持ちが悪いなー。


と思いながらも何もできず。

ただ家に留まる事しか出来なかった。

洗濯物はなんとなく外に干すのをやめ、

仕事に行くまでに

彼らがいなくなる事を切に願った。


昼過ぎからの仕事に向かう

そういえばもう彼らは一羽もそこにはいなかったので安心して家を出た。


家の門を閉めて

住宅街の細い道を抜けると

小さな道を乗用車や、作業トラックが

ビュンビュンとばしていく。

大通りの抜け道になっているので、

制限速度なんてあってないようなものだ。


横断歩道まで自転車をこいで、

大きな公園の中を通って駅に抜ける道はと向かう。


この公園は数年まえまで、

市が蛍の幼虫を離して、

夏の風物詩にしていたがその計画とも頓挫してしまい、

今では深い森の様な公園だ。

夜に通るのなど、

薄気味悪いくらいだ……。


真ん中に大きな木の切り株がある。

樹齢はどんなものなんだろう?

わたしが子供の時から切り株だ。


その切り株に何やら黒いからすがたむろしているのが見えた。


不快に思いながらも

そこを通るしかなかった。


目を合わすと襲われる気がして、

真っ直ぐ見ているはずなのに、

怖い物見たさか、

切り株に目を向けてしまう。


確かに烏が2羽、

切り株で……。


何かをつついている……。

蛇だ。

蛇をつついてる。


しかも目に杭の刺さった真っ赤な蛇。

いや真っ赤なのは蛇の本来の色ではない…。


青ざめて足早にその場を去った。


今見た事が現実なのか?


呪いの類なのか、


見てはならない物を見てしまった気がして

吐き気すらした。


公園の出口が見えた時、

ひどく救われたような、

悪い夢から覚めたような

安心感で

早くこのから

抜け出したくてたまらなかった!


なのに…。

すぐ目の前にあるはずなのに、

出口に向かえない。


昼過ぎだというのに、

公園の木々に遮られ、

そこに何羽もの烏が飛び交い

あたりは暗闇に包まれた。


戸惑いと恐怖を感じながらも、

なんとかこの場を抜け出さないと、

必死で目を凝らすと、

闇の中に僅かな光をみつけた。


闇を照らす光は、

太陽というよりむしろ

月明かり

のように感じられた。


とにかくその光を頼りに、

なんとか歩きはじめた。



























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