さしのべられたて

あぶないよ。


え?!


電車来るから。


それまで周りも見えなくて、

全てが無音の世界だったのに、

その声だけ聞こえた。


そのまま手を引かれて

されるがままに線より内側に引き戻された。


ショートボブに綺麗な茶髪で

色の白い女性がいた。

可愛らしい

白い少しピンクがかった、

ふわふわなコートに、

ロングスカート。


どこか幼い顔だちなのに

辛辣な顔でこちらをみていた。


越えてはいけない境界線。

あなたには限界だったかもしれない。


また涙がでてきた。


でも死ぬ気になればなんでもできる。

死のうとする気力があるなら、

今ある物を全て捨てたらいいと思う。


今ある物?


お金

家族

プライド


そんな…。

何もかも捨てられない物じゃないか!!


でもあなたはそれを捨てられないから

自分の命を捧げるの?


捧げる?

いったい誰に?


そうそんな物は誰もいらない。

あなたの命なんて誰もいらない。

私はあなたの事何も知らない。

でもあなたの奥さんは

子供たちは

あなたが居なくなったら

あなた以上の苦労をしていかなくてはならないわ。

それでもあなた

この問題から逃げ出すの?


確信をついているのに、

責められた気がしなかった。


あなたは

必要のない人間じゃないから。

どうか自分と向き合って。 

不要な物は捨てて、

あなたが幸せになれば良い。

そうすれば

お金が無くても

家族は救われるわ。


そうして手をさしのべられた。


赤い糸

朱い糸


運命は貴方がきめる。

私にはツナガル糸か見える。

その繋がる色は貴方次第でかわるわ。

 

さしのべられたて

つきつけられたことば

返す言葉を考えているうちに

彼女は人混みの中に消えていった。


不思議な出来事なのに、

当たり前の様に受け入れられた。

人混みに消えた彼女を

追う気にはならなかった。


彼女はいったい何者なのか?

さしのべられた手の温もりを目で確認しながらまた会える気がした。














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