第41話
『昨日、お昼ごろ人が川に足を滑らせて落ちたという通報を受け、現場に駆け付けた救急隊により救助された心肺停止の女性ですが、すぐに病院に搬送されたものの、亡くなってしまったとのことです』
「おっ?」
『警察では自殺とみて調べを進めており――』
「うーん。コレって、ちゃんと気が付いてくれたのかな?」
多分、この人を最初にパッと見た感じは『かっこいい成人している男性』という印象を受ける人は多いだろう。
「一応『ただの自殺』じゃないんだけど……」
簡単に言うと、この人の見た目は『かなり大人びて』いる。
「まぁ『こっち』は、当初の計画通り進めているから、世間の目はすぐに変わるだろうけど、ただその人たちからすれば、本当に
そう言いながら、その人物は不敵にニヤリと笑った。
「でも、仕方ないよねぇ。だって、とんでもない事をしておきながら、不思議な事に今までなーんにも起きていなかったんだから。まぁ、そうなるように手を回したんだろうけど、だからまぁ当然焦るよね。ただ、僕にとってはその時の表情がたまらないんだけど」
しかし、このどうしても『大人びた』見た目と言『幼い少年』という言動をしているこの人物は、どうしてもアンバランスな印象を人に与える。
「うー……ん。さてっと、それに『こっち』の準備も万端。後は、タイミングかな?」
そう言いながら軽く伸びをしながら、映し出されていた画面を軽く手で払う様な動作をすると、その動きに反応する様にさっきまで点いていた画面はパッと消えた。
「でも、僕としては自力で見つけて欲しいんだよなぁ。そりゃあ、元々計画していた通りだし、気長に待つけどさ」
そんな独り言をブツブツと呟きながら、その人物は立ち上がった。
「でもやっぱり、早く来ないかなぁ。一応『ヒント』は、出してあげているはずなんだけど。分かりにくいのかなぁ?」
この人物が待っているのはただ『一人』で、その待っている人物がようやく『ヒント』に気が付いてくれた気がした。
つまり、それはこの人物からしてみれば『ヒントに気が付いた』という事は『もうすぐ自分に会いに来てくれる』という事を意味している事と同じと感じていた。
「それにしても、奏の友達って事は……お兄ちゃんの友達って事だもんね」
本当であれば、もっと早く会いたかった。出来るのなら、本当は自分を生んでくれた『兄の紹介』で……。
『ナビゲーター』
「ん? はいはい」
『新規ユーザーが登録されました。皆さんに説明等をお願いします』
「了ー解。分かったよ」
ここ最近この『ゲーム』に登録してくれる人が増えている様な気がする。それはただ単純に、このゲームが面白いと思って登録してくれたのだろうと思う。
「それはそれで嬉しいんだよ? お兄ちゃんのゲームの楽しさが伝わった事だからね。でもまぁ、登録者がいくら増えようが『僕に』とっては意味はないんだけどね。ああでも、有名になった方が分かりやすくていいのか」
そう言いながら、彼は鼻歌を歌いながら軽快なステップを踏むように歩き出した。
「とりあえず、僕は『あの人』が来てくれればそれでいいんだけどなぁ。それで、色々なお話をして……あっ、そうだ。お兄ちゃんが死んでしまった時の気持ちとか、あっ。僕に会った時の気持ちも聞かないと」
しかし、そうなるにはまだ時間がかかりそうだ。
なぜなら、彼はまだ『ヒント』である『共通点』に引っかかりを感じているだけだからである。
「早く僕を見つけてね。
そう言って笑いかける自分の事を『僕』と言っているこの『外見と中身がアンバランスなこのナビゲーターの少年』と出会い。
「僕は君を待っているよ。そして、君なら、分かってくれるよね?」
この『アンバランスな彼の存在』そのものが、探偵をしている『彼』自分自身の『過去』が深く関わっている事を知るのは、この少年が思っているよりも早く、目前まで来ていた。
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