第4話
弟のいる病院に行く途中にある、その大通りを通っている時。ふと『違和感』を覚えた。
「??」
いつもであれば、この時間帯は自転車に乗った人やちょっとした散歩をしているご老人や小さい子供を連れた親たちが行きかっているはずだ。
しかも、今日はあまり暑くもなく、なおかつ雲もあまりなく、雨が降る心配もない。つまり、非常にいい散歩日和なのにも関わらず、人がほとんどいないのである。
「なんかイベントでもあってみんな早めに出ているのか?」
確かに『文化祭』とか『体育際』がある日はこんな事もあるが……。
そんな違和感を抱えたまま、歩き続け行くと……そのまま『田崎総合病院』と横に書かれた看板が目に入った。
この『田崎総合病院』は、昔からこの場所にあったのだが、ここ最近改築して建物が新しくなり、看板も真新しくなっていた。
そして、この病院は住宅街を抜けてすぐという場所もあってか、この住宅街のほとんどの人が利用していた。
しかも『総合』と書かれているだけあって、ここでは皮膚科や耳鼻科などの診療だけなく、手術やリハビリも出来、入院も出来る。
この近くには保育園や学校もいくつか点在していて、実はあの『爆発事故』があった学校もこの近くだった。
「それが何か関係しているのか? おっと、そうだった」
そういえば、病院に入る前に連絡を入れる……という事を忘れていた俺は、すぐにスマートフォンで「そろそろ着く」と弟に連絡を入れた。
「よしっ」
キチンと送れた事を確認した後、病院に入った。
「…………」
入るとすぐに入り口の横にあるコンビニが目に入った。
いつも弟は、ここのあるメーカーのカフェオレを飲んでいる。それこそ、俺が持って来たシュークリームを入れる冷蔵庫にいつも三本はストックされているくらいだ。
そして、いつもそのカフェオレを俺に分けてくれる。だから、今回に限って「飲み物が何もない」という事はないはずだ。
「とは言え、念には念を……だな」
たとえストックがあったとしても、ほとんど毎日の様に飲んでいるのだから、弟が怒る事はないだろう。
それに「多すぎて困る」となれば、俺が持って帰ればいいだけの話だ。
「別に嫌いでもないし」
そうして、コンビニに立ち寄り『カフェオレ』を買った俺は、慣れた手つきでエレベーターのボタンを押した。
弟が入院しているのは三階なのだが、その階にいるほとんどの人が個室である。
「…………」
別に「個室がいいです」と自主的に言ったワケではない。ただ「空いているけど、どうする?」と聞かれたので、個室にすることにした。
弟は少し引っ込み思案なところがあり、昔から体が弱く、人とあまり話をした事がなかったため、他に人がいない方が気が休まるだろうと俺が勝手に決めてしまってのだが。
「さてと」
エレベーターが三階に到着したアナウンスが聞こえ、扉が開くと、俺はそのまま目の前にあるナースステーションを右に曲がった。
毎日とまではいかないが、一週間から二週間の間に一度は大体この時間にここを訪れているため、何人かのナース、看護師さんとは顔見知りである。
そして、そのまままっすぐ弟が入院している病室の前に着いた。
「ふぅ」
軽く息を吐き、扉をノックした後、中から「どうぞ」という声が聞こえたのを確認した上で、ガラガラとゆっくり扉をスライドして開けた。
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