第30話 真意 ●

2時間1280円で焼肉に、

寿司にサラダにアイスクリームが

ぜーんぶ食べ放題。


まぁ内容はね……、

油の多い外国産のお肉を

濃い味付けのタレに漬けたもの。

機械で握られた薄ぺらいおそらく

魚であろうものがのった寿司。

明らかに冷凍の野菜たち。

まぁレタスとかはあるけど……。

着色料で色とりどりのアイスクリーム。

缶詰めのフルーツ。


まぁまぁそれなりにお肉を焼いて、

野菜を堪能して、デザートまでしっかりと食べた。李静リヂン劉偉リュウイは何やら大きな声で(もちろん中国語)でベラベラ喋りながら何往復もしていた。


心凌は……、

お肉は少しだけ、

あとはソーセージとソーセージと、

少しフルーツを挟んでソーセージで、

ノーベジタブル。


「焼肉食べないの?」


「わたしこれがすき。」


とソーセージ。


「野菜は?」

とブロッコリーを指差して聞くと、


「すきじゃない!」

と笑って言ってみせた。

なんだかその笑顔を見る度に心がキュンとしてしまう。


「にほんの食べ物は、あのー……。」


「ん?何?」


「うーん……」


と深く考え込んで、劉偉に何やら中国語で質問している。けれどもその劉偉も頭を悩ませて李静と話だした。それから結局スマホに翻訳させて、それをこちらに見せて、


「にほんの食べ物はがすくない。だからおいしいじゃない。ソーセージはこれが多い。だからワタシは好きです。たくさん食べます。」



翻訳されたを見て


「ハハ……。」


と乾いた笑いしかでない。


←これ?って



おいおい……。

さすがというか……。

どこまで翻訳が正解かわからないにせよ、

おそらく内容は遠からず……でしょう。


ソーセージの時間が終わるとやがて、

アイスクリームの時間がやってきた。

全種類制覇?くらいの勢いでアイスは彼女の口の中に溶けていった…。

そういえばアイスが好きって言ってたな。


2時間もかからずに、おそらくみんなお腹は満たされて、しばらく満腹の沈黙が続いた。

さてこのメンバーでいったい何を話せば良いのだろうか……。



「あの……。みんなでたべてうれしいです。それで、あの……。わたし……。」


と心凌がたどたどしく話しはじめたが、

まだ何かを伝えようと悩んでいる。


「ん?どうした?」


それでまた劉偉と中国語で早口で会話を始めた。全く言葉が通じないのは不便なようで、がわからないという意味では都合がよい。

だってもしかしたら悪口を言っているかもしれない。そしたら傷つくし、やっぱり気分が悪い。知らない方がいい事だってあるかも知れない……。

しばらくすると劉偉が納得した素振りで大きく何度も頷きながら、

突然こちらに話しかけてきた。


「あー彼女…心凌さんはあなたが気持ちが悪い…と言いたいです。」


……ほら……知らない方がじゃないか。

あからさまにショックを受けた顔をしていたのか、心凌が劉偉の腕をバシバシと叩いて、中国語で小声で喚いた。

それで劉偉は慌てて、


「あ、ごめんなさい。気持ち悪いじなゃないか?……。えと、こわい?、なに?難しいな…。」


まぁいずれにしても良い表現では無いだろう。


「その…だから私と李静さんが一緒にたべました。でも心凌は今はとても怖いじゃない。だから私たちは駅で帰ります。」


「ん?劉偉と李静は駅でおりる?という事かな?」


「はい、わたしたちは、えきで買い物ある。あなたと心凌は2人で……へへっ」

と李静と2人で顔を見合わせて笑った。



心凌がふくれっつらで劉偉の腕をバシバシとたたいた。

それから三人でしばらく早口で話していた。もう何を話しているかなんて気にならなかった。


食事の代金はみんな払うつもりをしていたけれど、劉偉と李静は知らない間に自分たちの支払いをすましていた。ちゃっかりポイントカードまで作っていた。

心凌はそれを知らされてなかったみたいで、慌てて財布を取り出そうとしたけれど、

そこはそうはさせない。

何度か押し問答した末に……。


「ありがとございます。」


と素直に受け入れた。

2人を駅で下ろすと心凌と2人きりになってしまった。望んでいたはずなのに……。

何を話したらよいのかさっぱりわからない。

無言の時間がしばらく続いた。

とりあえず車を借りると決めた時に、

最初に思い描いていた場所へと向かう事にした。


「海に行こうか。」


「はい。」

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