第20話 血のつながり ○
「お腹に水が溜まっているのですか?
心配ですね。何か出来る事があるなら手伝いますが、僕にできる事はないと思います。
どうかお体に気をつけて。」
それだけ書かれていた。
他人行儀なその言葉になんとなく傷ついた。
なんて冷たい人だ。
私の苦しみを少しも理解しようとしない。
人情とか優しさとかそんな物は何も感じられないじゃないか……。
でもそんなものなのかもしれない……。
長年連れ添った夫婦でも「離婚届」という紙切れの契約を交わしたらただの他人だ。
いや……むしろ夫婦なんて元はただの他人だ。当たり前の事だが、親や子供たちとは血がつながっていても元夫とは血のつながりはない……。
妻と夫というその関係性が終わってしまったら他人以下に関係に成り下がってしまうのかもしれない。
血のつながりっていうものは良くも悪くも大事なものだ……と私は改めて思うのだ。
それでも……あれだけ憎いと思っていたのに、なんだかとても悲しい気持ちになった。
なんでだかその理由はわからない。
私はいったい何の為に生きているのだろうか?そう思うと生きているのがとても辛くなった。
部屋に閉じこもって涙をポロポロ流して一人で声を殺して泣いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
鳥の囀り、バイクの走り去る音。
スマホから聞こえる不快な音。
遮光カーテンの隙間から朝日が溢れる。
眩しいな……。
元から朝の弱い人間だ。
その光は心地よくも煩わしい。
スマホのアラームを手探りで消して、
時間を確認する……。
6時か……。
なんでこんな早く……。
眠たいなー……。
うつらうつらして、もう一度浅い眠りにつきかける……。そしてハッとする。
今日はそうも言ってられないんだった。
初出勤で遅刻は洒落にならない。
パジャマを、脱ぎ捨てて綺麗目の服に着替える。昨日の晩から用意しておいたその服を着て見たものの、鏡に写っている姿がなんだかおかしい。
上着と下が合ってない?
職場ではどちらにしても作業着を着る事になるのだが、パートとはいえ適当な服ではいけない。
「お母さーん。これとこれ変?」
と、とりあえず母に見てもらう。
「うーん。おかしいなー。もう少しシンプルな感じの無地の服ないの?白とか、ブルーとか?」
「そんなもの持っていない。」
そもそもあまり無地の服は着ない。
仕方がないので白い長めのシャツを母から借りた。前日から用意していたのに直前で不安になる……悪い癖だ。
とそこにLINEが入る音がする。
「おはようございます。今日から出勤ですが、大丈夫でしょうか?前回伝えるのを、忘れたのですが、今日改めて契約書に印鑑をもらいたいのでお忘れなく。
私はもう会社にいますので着いたら声をかけてください。」
なんか気にかけてくれてるのだと思うと嬉しかった。
その後に続けて可愛いクマのスタンプが頭を下げている。
なんか親近感のもてる人だな。
とまた感じた。
「ありがとうございます。また本日から改めてよろしくお願いします!」
とLINEを返して
子供たちにご飯を食べさせて、
小学校に行くのを見送り、
母に末っ子を保育園への送りを頼んで、
洗濯物を干した。
決して楽ではなかった。
でもこの数日で起きた子供たちの事と、
元夫の冷たさとで私は私を奮い立たした。
負けるものか!!
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