第17話 自分の生き方 ●


冷凍のブロッコリーに、インゲン豆、それに最近では茄子の揚げた物まである。

それからビールにはフライドポテトは欠かせない。あと枝豆。

キムチに漬物に、豆腐、油揚げ……。

ん……?酒のつまみばかりだな?

もう少し健康も考えないと怒られるな……


っていったい誰に怒られるというのだ……。



馬鹿だな僕は(笑)

彼女はもういないのに。

人の顔色を伺うクセは抜けない。

だいたいいつでも

僕は人に言われた事を気にして、

人が不快にならないようにしている。

争う事を望まない。

だから揉めそうになったら我慢する。

長男と三男に挟まれて育った

真ん中っ子体質というやつだ。

まぁ本当のことを言えば我慢してるをしているだけなのだが……。

いずれにしても僕の生き方には本当に自分がない。そういう生き方をしているうちに、自分が本当はどんな生き方をしたいのかわからなくなってしまったのだ。



なんて思いながら王心凌の方を見る。

カゴに入っているのは、小麦粉にニンニクに、リンゴ、ひき肉に、ニラ、ネギ、ジャガイモ。それとアイスクリームと、アイスクリームとそれからアイスクリーム……。

いやいやどれだけアイス買うんだよ。

っていう目で見ていたら…


「なに?」


と言われたので

「いやいやアイスばっかりだな。」


「なにをいった??わからない」


アイスクリームを指差して、


「これ好きなの?」


満面の笑みで


「すき。おいしいです。」


だそうだ。

それから他の食材を指差して


「何を食べるの?」


と聞いてみる。


「ちゃおず」


ん?ドラゴンボールのキャラクター?

……じゃなくて餃子ね。

えーでも皮買ってないじゃないか?

とどうでもいい事が気になって、

勝手にスーパーの中探し回って餃子の皮をみつけた。

それを王心凌に得意げに見せた。


「これ、買わないの?」

と餃子の皮を見せながらいったら、


「いらない」


といわれたので?


「なんで?」


って聞いたら


「ちゅうごくじんは、ぜんぶじぶんでつくります。わたしこれつくるのじょうずです。」


とまたもや満面の笑みで言われた。


ドキっ…


あれ……あららら……。

不覚にもドキッとしてしまった。

いやいやもう女はいいでしょう……。

やっと1人になれたんじゃないか。

ありえないでしょう……中国人だしな。

ないない……研修生だよ。

それに僕よりずっと若い娘だ。

ありえない。と心に気持ちを押し込めた。



「どうした?」


とスマホをさわりながら聞いてきた。


「ん?いやなんでもない。」


「これ…!」


と一枚の写真を見せてくれた。


「きょうはわたしたちみんなでごはんたべる。」


見ると見たことあるような、ないような中国人の女性たちがテーブルを囲んで何やら料理をしている。


「そうなんだ。それなに?LINE?」


「ちがう。ちゅうごくのらいん。」


「それ俺もできるの?」


「しらべて」


と僕のAndroidを取り上げてアプリを探し出した。それから手早く自分のスマホを操作してそのアプリに僕を招待した。


「はい。これではなしできる。」



「いやでも……。中国語わからないよ。」



「だいじょぶ。これニホンゴからちゅうごくごにできます。」



「へー。」

とか平静を装っているが心臓の高鳴りをおさえられなかった。

「惚れてまうやろー」とか言ってた芸人を思いうかべて、少しニヤニヤした。


「あなたもいっしょにごはんたべるか?」


「え?」

行きたいと思ってしまったが、

ここは気持ちをおさえて、

「いやいかない。」


と伝えた。そしたら彼女はあっさりと


「わかった。」

と言った。そのまま会計を済ませて。


「じてんしゃ…ありがとうございました」


「いやいいよ。気をつけて帰りなね。」


「はい。」


と、店をでていった。



袋いっぱいに買い込んで(もちろんエコバック持参)店をでた。

しまったなー……。

流石に目一杯買いすぎた。

何が駄目かって自転車をこげない。


仕方がないので、カゴに入れられるだけ入れて、あとは両ハンドルに袋をかけて手押しで自転車を走らす事にした。


歩いても15分そこらだ。

この計画性のなさが命とりだな。

と仕方なしに歩いた。

でも何も苦では無かった。

少し浮かれた気分だった。

鼻歌なんかうたいながら夕方の道を自転車を押しながら帰った。


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