第14話 あー……正直1人はつらい ○
すっかり弱いところを見せてしまった。
感情の
少し恥ずかしくなってきた。
「少し落ち着きましたか?なんか本当にすいません……。俺が余計な事言ってしまったからですよねきっと……。現場変更しましょう。あなたみたいな人辞められたらもったいない。最初に配属決めた人のセンスを疑うな。まぁ課長だけど……。一言文句言っておきます。」
私は黙って頷いた。
宮本は私が少し落ち着くまで何事もなかったようにして、静かに待ってくれた。
乱れた呼吸をととのえながらなんとなく
『優しい人なんだろうな……。』
と感じた。
ちょっと整った顔立ちをしているし、
きっと昔はもてたのだろうな……。
なんて考えてしまった。
先程まで怒りと悔しさの感情のブレ幅が
目一杯だったくせに……。
「とりあえず明日は休んでくださいね…。
それで配属先をもう一度課長と話してみます。
それから……よかったらライン教えてもらっていいですか?会社から電話してもいいけれど、電話って少し恐縮するでしょう?
決まり次第連絡しますし。」
「はい。」
と今度は声をだして頷いた。
そのままラインを個人的に交換してその日は家に帰った。
ところがその日は最悪な事が続く日だった。
帰るとすぐに小学校から電話がかかってきた。
「あっお母さん良かったつながって。仕事と聞いていたもので。息子さんがウンテイから落ちてしまって、頭を打ったみたいなんです。
それでお友達が知らせてくれて、今病院に向うところなんです。お母さん今からこられますか?」
「わかりました。今から行きます。」
真ん中の子供がウンテイから落ちて頭を強打したらしい。
こんなに嫌な思いして帰って来たのに、
休む間もなく病院か……。
子供の心配より心労が先に頭に浮かぶなんて
私は駄目な母親だ……。
あの人が悪いんだ。
こんな小さな子供を残して自分は出て行ってしまったのだから。
そう思うと怒りと悲しみが膨らんで情緒を乱された。
一度深呼吸をして、自分に「大丈夫」
と言い聞かせた。
どれだけ文句を言っても何も変わらない。
もうしかたがないのだ。
一人で育てると決めたのだから……。
あー……正直一人はつらい。
家事の一部は母がしてくれるとはいえ、
結局子供の事は私が判断しなければならない。男の子が3人いるのだ。
まだ小さいとはいえ……いやまだ小さいからこそ何かと苦労も多い。
特に真ん中の子はとても手がかかる。
よく怪我をするし、なんとなく落ち着きがなく、先の見通しがたちにくい。
例えば高い塀の上から飛び降りたら、
もしかしたら怪我をするかもしれない……
というのがわからないのだ。
〇〇をしたら良くない事がおこる……。
そういう想像力がかけているのだと思う。
そして失敗を誤魔化す為に嘘をつく。
そういうところが元夫に似ていて苛つかせる。
電話をきってすぐに言われた病院へ車を走らせた。
「腕はレントゲンを見る限り大丈夫だとは思うけど、本人さんが痛がっているので、微量にヒビが入ってるかもしれないので、一応固定しておきますね。」
「すいません。ありがとうございます。」
「それから頭を打ってるみたいなので、念の為CT検査をしましたが、こちらもおそらく問題なさそうです。ただこのあと吐き気とか、頭痛を訴えたりしたら直ぐに病院に連絡ください。」
「わかりました。」
「本当にご迷惑おかけしました。ありがとうございました。」
と付き添ってくれた学校の先生と、説明をしてくれた病院の先生に深々と頭を下げて受付に向かった。
「お母さんごめん。」
「あなたねー……。」
大人や他人に迷惑をかけるな……。
と喉元まで出かかったが……、
「よく無事だったね。」
と抱きしめた。
頭は怖いから触らない。
だから出来るだけ強く抱きしめた。
次男坊は腕の中でシクシクと泣いた。
私がこの子たちを守らなければいったい誰がこの子たちを助けてくれるというのだ。
仕事も現場を変えてくれるみたいだし、
始まったばかりだけど、
心機一転もう一度子供の為にがんばろう。
心にそう誓った。
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