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「何やってんですか」


「え。わたし。あれ。死んでないや。おかしいな」


「なんであなたが。ゴム弾でも、頭に当たったら危ないでしょう」


「いや。わたし。あなたを殺すのは。それだけは。できない。です。むりです。ごめんなさい。好きだった、ので。わたし。あなたのことが」


「え」


「なに顔を朱くしてるんですか」


「あ、いや。どうしよう。俺。そういうの、言われたことが。なくて」


「ばかですか。女性につきまとわれてたって自分で言って、あれ、ほんとだ、なんでだろう。うそ言ってない」


「つきまとわれてる女性、みんな幽霊なので」


「え」


「言ってませんでしたっけ。幽霊に。ずっとつきまとわれてるんです。俺」


「じゃあ。ええと。女性経験は?」


「恋愛なんて、したことないです。だってずっと女性につきまとわれてるし」


「わたしのこと。好きって言った」


「あ。はい。好きです。あなたのことは。殺してほしいって思うぐらいに」


「だめ」


「え?」


「だめ、です。しんじゃ、だめ」


「動かないでください。いてて」


「あ。右手。血が」


「銃の弾が当たっちゃって。あなたが無事でよかった」


「しんじゃ、だめ。だめです」


「殺し屋の台詞ですか?」


「好きです。おねがい。しなないで。おねがい、します」


「泣かないでください」


「しなないで」


 病院の、待合室。


 しなないで、という言葉だけが。


 ちいさく、空虚に響いて。消えた。

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