第4話

 なんか、男性が現れた。よたよたと歩いている。


 こちらを見つめていたので。座りたいのだと思って、席を空けた。その男性が隣に座る。


 そして、気付いた。


 この男性。


 しぬほどイケメン。


 わたしが殺し屋じゃなかったら、惚れていたかもしれない。


 でもわたしは殺し屋だから。相手を顔で判断したり、しない。


 イケメンの男性。こちらをちらちらと見るしぐさ。


「見ます?」


 検診結果が気になるのかと思って、訊いた。彼は、なんか安心した様子で。わたしの検診結果を眺めている。


「すごいですね。評価測定のところ。アスリート並みって書いてある」


「まあ、仕事柄、身体が資本なので」


「精神構造のところも。はじめて見ました。ここに鋼って書いてあるのは」


「生まれつきですね。鋼のメンタルは」


「右足、ですか?」


 右足の故障と左腕。


「あ、はい。なんか、このまえ走ってて挫いたせいで、左手がちょっと」


「そうなんですか。おだいじに」


「ええ。なんとか仕事に戻りたくて。仕事人間なんですわたし」


「そうなんですか。うらやましいなあ」


 彼が。にこっと笑う。


 ちょっとだけ。心のひだが、ふわっとした。


「あなたは?」


「俺ですか。俺は精神科に」


「精神科?」


「はい。絵が描けなくなっちゃって」

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