03

 病院のソファ。


 誰か、いる。


「珍しいな」


 精神科は、諸々の事情で待合室に人が少ない。違うところに個室の待機所があって、ほとんどの人はそれを利用する。


 自分は正常だと言われているので。普通にソファに座っていた。いつも、ひとりで。


 ソファに座っていた先客。どうやら女性らしい。


「あ、どうぞ」


「あ、はい」


 隣を空けられたので。座る。


 ばかみたいだった。


 こんなに大きなソファが、いくつも並んでいるのに。


 隣を空けてもらったからという理由で。隣に座ってしまって。


 隣の女性。


 なんか見てる。


「あ、見ます?」


「あ」


 しまった。視線が。


「いいですよ。遠慮しなくて」


「あ。そうですか。では」


 よかった。


 彼女は。大丈夫らしい。

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