14本目 実体化しました、TSです。


 魔力、この世界の万物の源。


 この世界の魔力というものは、それをもとに魔法で水を出したり、土を出したり出来ます。

 それを行うのも容易なことではないようですけど。


 それだけではなく火や風も出せるのです。

 エネルギーにも物質にもなるってどういう事なんでしょうね?

 理論上なんでも生み出す事が出来る万能エネルギーらしいです。


 私も命の力ー!!とか言って、一体何でできているのかよく分からない植物を大量に創っているので間違いではないんでしょう。


 まほうのちからってすげー!


 そんな不思議なものを理解するべく、ティターニアに魔力について教えてもらい、訓練を重ねた結果。

 実際に魔力を感知出来る様になったのです。


 この間なんと、3年!

 気がついたら10年飛んでいたのがザラだったのでなんだか新鮮ですね。


 そして、なんと!


 私の体から流れ出る魔力というものを理解すると、案外簡単に世界樹から出ることができました。


 体が動ないという樹生90年の悩みがついに解決しました。

 手や足が枝や根っこではないですし、なんといっても自由に動かすことが出来ます!


 これまでの苦労が全て何だったのだろうというぐらいに簡単に解決してしまいましたけど、ありがたいのでよしとしましょう。

 私は寛容な命の神であり世界樹ですからね。


「うーーん」


 両腕を天に伸ばして、こんな風に手を広げて体を伸ばす事だって出来てしまいます。


 手だって、細くて柔らかくて綺麗な手をしています……?

 あれ?私の手ってこんな感じでしたっけ?


 服もゆったりとした綺麗な白いワンピースみたいなものを身につけていますけど……。

 こんな体型でしたっけ?


 鏡の樹


 それが欲しいと念じると、目の前に小さめの木がポンッと音を立てて現れました。

 木は2本現れ、上の枝が繋がっていました。まさに大きな姿見のように。

 その間には突くと破れてしまいそうな膜が張ってありました。


 2つの木の間に広がるシャボン玉のようなその膜は、全ての光を反射しています。


 つまり、私の姿を確認することが出来ました。


 目の前にいたのは、絶世の美女でした。


「え?」


 腰まである長い金髪は美しく光に照らされて輝いていますし、緑色に見える目は垂れ目で優しそうですが、まるでモデルのような美しい顔をしています。


 ゆったりとした服を着ているのにその上からわかるぐらいスタイルがいいですね。


 まさか……女体になってしまったってことでしょうか……。


 自分でもびっくりするぐらいに違和感が無いんですけど。


 いつから性転換していたんでしょう。


 はじめは……。

 信号を渡ろうとした瞬間、目の前に大型のトラックが突っ込んできて、僕の平凡な人生が終わりを告げた。

 一人称男ですね。


 転生して……。

 今、私の目の前にはどんな素晴らしい世界が広がっていて、私が今いるこの世界ではどのような冒険が物語ができていくのだろう!と、頭の中でありったけの妄想が膨らんでいきます。

 一人称変わってます!


 つまりTS転生してたんですね。全く違和感感じてなかったんですけど、神様に脳内弄られたり?

 転生者は神様に脳内弄られてるんじゃないかみたいなことが創作物でありましたけど、自身で体験することになるとは思いませんでした。


 だとしても、なんだかんだ90年以上女だったんでしょうか……。

 それは違和感感じなくてもしょうがないかもしれませんね。

 樹に性別があるかどうかはわかりませんけど。


 うっ、視界の高さは前世と変わりない……ような気がします。気のせいかもしれません。

 んっ、だって半世紀以上前のことですから。


 はぁ、これは。なかなか凄いですね。


「お主、さっきから何をしておるのじゃ?」


 いきなり変な事を聞く妖精ですね?

 なにをしてるかかって?それはもちろん。


「胸を揉んでいます」


「何故じゃ!?」


 何故と聞かれても……。誰だってTSしたらやるでしょう?


 女子が性転換したとしても自分に生えてしまったものをいじりたくなってしまうでしょう。

 完全に偏見ですけど。


 ということで。


 おもむろにそこへ手を伸ばそうとした瞬間。


 ティターニアに手を取られてしまいました。

 何故でしょう。私は自分の欲求に素直に従っているだけなんですけど。


 なんですか。顔がちょっと怖いですけど?


「ここでそこを触り出したらもう話をせんからの!」


「そこまで言いますか?」


「隣で急にそんなことされたら嫌じゃろう?」


 そうですね。私の配慮が足りてなかったです。後で隠れてしましょう。


「どうです?実体化しましたよ!」


 見て下さい!この美女神の姿を!!こんなに綺麗になるのからTSも不満ないです!


「嬉しそうじゃな」


 それは嬉しいですよ。ずっと植物状態でしたからね。全く動けない状況はなんだかんだストレスが溜まってしまっていたのでしょう。

 今は、とても清々しい気分です。


 それはもう。花畑に寝転んでごろごろしたくなるぐらいは。

 


 それにしてもそんなに嬉しそうじゃないですね。

 私がこんなに嬉しいそぶりをしているのに隣でふてくされているようにどんどん小さくなっているように見えます。


 なんでそんなにつまらなそうなんでしょうか?

 一緒にごろごろします?きっと楽しいですよ?


「天界へ行くのじゃ?」


 ……!

 もしかして、私がここから居なくなってしまうことを悲しく思っているのですか?


 えっ可愛すぎませんかこの生物。持って行ってしまいたくなってしまいますね。


「行きますけど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る