12本目 妖精に会いました、必殺技です。
今、私の
その小さな肩に着くまである青みがかった銀髪は、水晶で出来た花みたいな簪で結ってあり、両目は緑色で透き通っているようです。
身体は小さいですけど幼児体型というわけではなく、すらっとしていて、可愛らしい顔つきをしています。
まさに人形のような見た目ですが、サイズは1メートル無いぐらいなので、私が想像するような西洋人形よりかは少し大きい気がします。
人形扱いするには少し生々しい大きさでしょう。
自称妖精さん、ちゃんと見た目も妖精ですけど、初めてみる生物なので。
こんな時こそ神眼の能力の使いどきですね。
目の前の生物は……。はい、確かに妖精みたいですね。名前はないみたいみたいです。
HP表記がなくて、MPが15万弱もあります。精神体みたいなものだからでしょうか?
それにしては普通に蜂蜜を食べてましたし、私に触ってる感触もあります。
不思議ですね。HPとMPが同じということは、魔法とかを使い過ぎて無くなったら消滅してしまったりするのでしょうか?
そういうキャラなにかにいた気がします。
「どうしたのじゃ?急に静かになりおって」
年齢は700歳と……。私も結構歳をとったと思いましたけれど、その10倍以上ですか。
こんな見た目をしておいて、結構なおばあちゃんですね。
ここまで来るとどこまでが子供で、どこからが老人なのか見当もつきませんけど。
自分で原初の妖精と言っていたので、この世界の初めからいるというのも考えられます。
あの神様は1000年は経ってないと言っていましたし、きっと700年ぐらいなのでしょう。
「おーい」
私の
私の体は丈夫ですから、彼女の細い腕では痛くも痒くもない……そもそも触感が薄いのですから全く無駄な行為です。
神眼。
なるほど、もともと別の大陸に居たけど大量の魔力を感知して、魔力を吸収して成長する為に、この大陸にやってきたらしいです。
こことは別の大陸があるんですね。
大きな星なので、考えてみると当たり前の事なのですけど、なかなか想像がつきづらいですね。
元々いた大陸には人が住んでいて、彼らが興した国もあったみたいです。
異世界の国……行ってみたいですね!わくわくします。
西洋の都市国家のような場所なのか、それとも魔法という分野で発達して、色々ごちゃごちゃしてたりするまさに異世界のような場所なのかとか、考えるだけ後30年は戦えます。
今は、溢れ出る魔力の元を見つけて、此処が結構いい場所だったので、しばらく腰を落ち着けて生活しようと思っている。蜂蜜食べたい。
いい場所だって言ってもらえるのは凄い嬉しいです!
私がずーっとひたすら試行錯誤をして作り上げた楽園なんですよ!
少し野生動物が怖いかも知れませんけど、此処よりいいところなんてそうそうあってたまるものですか。
空気は美味しいし、天気は荒れないし、食料に困ることはなく、どんな傷も病気も呪いだって治してしまいます。
いい場所だって褒めてくれとやった甲斐があるってものですね。
そして最後に、あなたは今蜂蜜を食べたいと思っているでしょう。
私は神だから貴方の考えていることぐらいわかるんですよ!
って。その蜂蜜は私のなのであげませんよ。
相手の情報や感情を全て知ることができるという神眼の能力ですけど、初めて使いました。
今まで、相手がいなかったので……。
結構新しい情報が色々出てきましたね。もっと私の前に知的生命体が現れてくれればいいんですけど。
残念ながらこの大陸には人はいないみたいです。少なくとも彼女がみた範囲では。
「反応しないようじゃな。まぁよい。」
私が神眼を使って様子を見ていたら、神の感覚はようわからんからなぁ。とか、独り言を言いながらまたペロペロと蜂蜜を舐め始めました。
ここの蜂蜜は私のものだって言ったはずです!
言いましたよね?言った気がします。
なんて卑しい妖精なのでしょう。これは懲らしめなくちゃいけませんね。
妖精さんをロックオンして、必殺!
『
どこからともなく薔薇の蔦が現れると、そのままグルグルと彼女の体に巻きついて固めてしまいました。
うまくいきました!
どうです!私のずっと考えていた必殺技なんですよ!
ここにある花を作ってる時にずっと考えてたんですよ、ここが平和すぎるので要らないかなって思ってたんですけど、使い所があってよかったです。
薔薇のトゲが肌に食い込み、出血で継続ダメージです。
なかなか怖いものを創り出してしまいました。
「痛い!痛い!」
あっ、ちょっと。だめです!
「痛いのじゃー!」
あー……。それ以上暴れないでください。
どうしましょうか。
妖精さんが無駄に暴れるせいで、蔦が絡まって締まっちゃいました。
薔薇の茎が妖精さんの体の至る所、その小さい胸とか、足の間とかに食い込んで他の人に見せてはいけない姿になってしまっています。
それも、痛々しいというだけでなく、ちょっと変態チックな方面に……。
これ……。私がやったんですよね?
うわぁ……なんだかとっても申し訳なく感じます。私もここまでするつもりは無かったのですよ。
人は皆やってしまった後に後悔する生き物なのです。神だってそうに違いありません。
「解いてくれんかのぅ……」
それにしても。この絵面……。
トゲのついた薔薇の蔦に色んなところを縛られていて、血を流しながら泣きそうになっている妖精……。
ふむふむ。
もしここに不健全な男子がいたら雄しべが大変なことになっていたでしょう。
このような事態になってしまった件に関しては私も猛省しているところであります。
なので、彼女が暴れたせいで蜂蜜を地面に落としてダメにしてしまったことなんて目をつぶってあげましょう。
——許しましょう
「そっちが謝る側だと思うのじゃがぁ……。まずこれを離してくれんかのぅ……。」
そうですね、私が創った薔薇を消しましょう。これは暫く封印ですね。
一本で10トンまで耐えられるようにとか、攻撃力じゃなく拘束力をメインにとか、ついでに弱らせられるようにトゲをつけて出血ダメージとか。
これでも色々考えて創ったんですけど、此処で使うべきではなかったですね。
しかる場面が来るまで封印しておきましょう。
「助かったのじゃ……。ありが、謝る必要はないのう。急になんなのじゃ!あんな真似をしおって!」
思ったよりも元気そうですけど、色んなところから出血していて痛々しいですね。
——まず治してあげましょう
「ありがたいのじゃ、回復魔法かのう?」
——よくぞ聞いてくれました!
——この私の広い世界で1番多く咲いているその白い花こそが世界一の薬草なのです!その白い花の名前は、モーリュと言います。それは、傷を癒す薬草という機能性と白く小さいという見た目の綺麗さ可愛さを両立させた、まさに私の最高傑作とも言える花でしょう。その花の一部を食べると、体の傷、刺し傷切り傷なんていうのが体が繋がっている限り全て癒えますし、すべてを食べるか成分を抽出してポーションにすれば、昔の身体欠損なんかまで治してしまいます。病気もある程度は治せるんですけど、全ての病気を治すという概念は別の花に移植しました。なんといっても、その花の魅力は……
あれ?どこいったんでしょう。さっきまで、私の
あー、
私の足に座って、おいしそうに蜂蜜に齧り付いていますね……。
ですから!
——それは私のです!
『
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