11本目 御供物を捧げられました、ドロボーです。
あれからいくつかの年が過ぎ、私の年齢が60を超えまだ何も精力的な活動をしていないのに老後を考えるような年になってしまいました。
この世界の普通の人だともう寿命でしょうか。
私は寿命が無いので分かりません。
あれから、あの蜜蜂を見習ったのか、他の動物達も私に
ちゃんと蔵の中まで仕舞ってくれます。
やっぱり、知能が進化してますよね。
此処を見守っている私という存在を認識してくれているのでしょう。
ここまで崇められると流石の私でも嬉しくなってしまいます。
つい絶滅しかけてた穀物を更にチート化して増量してしまうぐらいには気分があがりますね。
動物なので話が出来ないことだけが残念です。
此処に巣を張っている動物や虫達が私の御供物倉庫の樹に物を収めるので、沢山のスペースを創ったはずなのに埋まりかけています。
寿命が延びる蜂蜜、何でも回復させる花、水が入ったきのみ、力を高め進化を促す草、甘く熟れた果物、呪いを解く花、硬くて軽い鳥の羽、などなど色々なものが詰まっています。
嬉しいんですけど、嬉しいんですけど、蜂蜜ぐらいしかいらないかなーなんて。
ありがたいんですよ。こうやって供物を捧げてくれるだけで心が満たされるんですけど。
そこにある全ては私の作品なので下手な話いつでも創れますし。
綺麗で大きな羽は見てると心躍るので、ありがとうございます。
それを眺めながら、動物達のためにのんびりと次はどんな植物を作ろうかなと考えていたらふと遠くから何かが飛んでくるのを見つけました。
デジャブでしょうか。
それが前世を含めても初めて見るような不思議な生き物だったので、つい気になって見つめていると、ふらふらと色んな木やカラフルな花畑に寄り道をしながら私に近づいて来ます。
私のところに来るんじゃないかなとドキドキしながら待っていたら、私を無視して私の宝物庫に入っていきました。
沢山の御供物が詰まった私の宝箱に無断侵入です。
しばらく経った後、それはその中から蜂の巣を取り出して来て、私に腰掛けながら、それにゆびを突っ込んで舐め始めました。
その蜂蜜は私のなのに!です!!
蜂達はその人に近づきたくないのか、我関せずとそこらを舞っています。
進化した蜂さんたちです。
決して気づいていないわけでは無いのでしょうが、いや、所詮虫なので気づいていない可能性も確かにありますが。
それに、鳥達は一目散に逃げ出しました。
蜂蜜泥棒です。
その泥棒は小さい人間の形をしていました。
ですけど明らかに普通の人間ではありません。
なぜなら背中から蝶のような羽が生えているのですから。
——ドロボー!!
「木が喋ったのじゃ?」
私の心の叫びにその生き物は反応したみたいに見えました。
言葉が通じているのでしょうか。
——え?声が聞こえてるんですか?
「聞こえておるよ。お主は何者じゃ?」
私?私は……
——私は命の神ユグドラシルです
「神樹だとは思ったのじゃが、神が憑いているとは思わんかったのじゃ」
——あなたは何者なのでしょう?
「わしは原初の妖精の1人じゃよ!」
のじゃろりだ!しかも妖精だ!
すいません。ついテンションが上がってしまいました。
私の異世界でのはじめての話し相手はそんな不思議な生命体なのでした。
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