11本目 周囲が賑やかになりました、モンスターです。


 私の目の前に広がる世界は私の手によって何十年も手入れをされた結果、初めに見た2色だけのシンプルなものを遥かに超えてとても素敵な世界になりました。


 はるか遠くまで続く広い地面には植物の力強さを感じさせるような濃い緑が広がっていて。

 そんな深い緑が基調の地面には、絵の具袋の全ての色を使って描いたんじゃないかってほどカラフルな花が咲き乱れています。


 それだけではなく、ところどころ全く別の植物が群生していたり、不思議な形をした大きな木が生えていたりします。


 中空には細かい葉をつけた枝が草木を守るように広がっていますし、空には花弁や葉かま風船で出来ているような花がぷかぷかと浮かんでいますし、天には大きな光が存在していて、此処にある全てを輝かせています。


 私の能力をフル活用したことによってさまざまな特殊能力が備わった植物が創られ、一つ一つが伝説となりそうなほどチート植物が生い茂る秘境となっています。


 そんな秘境の植物を目当てに遠く見える森から動物達が沢山集まってきました。

 至る所に巣を作り、好きに草を喰み、外敵も存在しない。


 そんな動物達の楽園と呼ぶに相応しい地になりました。


 私の腕からは、体長5メートルをも超える大きな青い鳥が猛々しく飛び立ち、風を切って飛び去って行きます。

 それは凄い勢いで黄金色の畑に突っ込み獲物を獲りました。


 遠くの土地では、二股の尻尾を大きく揺らしながら歩く金色の毛皮をしたキツネがこれまた雷のような速さで黄金色の畑に入っていき、獲物を漁っています。


 小熊のような体躯の素早いウサギ、でっぷりと大きくなり力強くなったタヌキ、木と見間違えるほどの大きく立派な角を生やしたシカが黄金色の畑に入っていき獲物を漁ります。


 私が創った完全栄養食の麦は動物達に蹂躙されていました。


 動物達の楽園というのは訂正致しましょう。

 私の目の前の世界は、まさにモンスター達の楽園になっていました。

 

 これだけ強そうな動物ばっかりですけど、皆温厚でこちらに被害を与えてきたりはしないので、見ていて見てるだけなら楽しいです。


 ほら。私の創った植物達もなんだか嬉しそう……いや、食べられているだけですから寧ろ生きにくくなっているような。

 やっぱり草食動物は私達の天敵なんですね。

 でもたまーに植物が反逆マンドラゴラすることもあります。


 しかし、肉食獣が居ない世界では、草食獣がここまで猛威を振るうんですね。


 あっ。また間違えてしまいました。

 肉食獣がいないのではなく、肉食獣より草食獣が強すぎる世界でした。

 オオカミやクマの嘆きが聞こえてくるような。そんな世紀末がここでは起きています。

 食物連鎖という常識は何処かに逝ってしまいました。

 生態系は崩壊の一途を辿っているのです。


 自分の創り出した世界を見守りながら、それを憂いていると、蜂が私にアピールするように周囲を飛び回っているのに気づきました。

 蜂と言っても体長30センチは軽く超えているような化物です。

 最初見た時は小さな蜜蜂のはずだったんですけど……。


 化物蜂が何かを手に持ちながら、ブンブンと8の字を描きながら飛び回っています。

 これが本物の8の字ダンスですか。餌の方向を指し示すために行うと聞いたことがあります。


 つまり君の今日の餌は私だと……?

 やる気ですか?はたき落としますよ?


 私の殺気を感じ取ったのか、蜜蜂はその手に持っていたものをこちらに掲げて見せつけてきました。


 手に持っているのは……金色に煌く蜜蜂の巣の一片。まさか……巣蜜ですか!?

 もしかして、私にくれるんでしょうか!?さっきは勘違いしてすいませんでした。


 蜂蜜ですよ!蜂蜜!!パンケーキにたっぷり掛けて食べたいです。実は甘いものは前から大好物なんです。

 チョコレートとか飴とか、ラムネとか。

 ……今は味覚が無いんですけどね。


 パンケーキは材料と機材の関係で無理だとしても、レモンを創って漬けておくだけで美味しそうですね。

 クッキーやケーキなんかの生地に練り込んで焼くだけで……。


 しかし、この状態のままだと妄想することしかできません。

 どうにかなりませんかね。


 とりあえずありがたく頂きます。

 貢ぎ物ありがとうございます。


 御供物を厳重にしまえるように綺麗にうろが空いた木を創りましょうか。


 うろの中の空間は空間魔法か何かでコンテナぐらいの大きさまで広げて、うろに入れたものは時が止まったように状態保存されるようにします。

 理屈は分かりませんが出来るので問題ないでしょう。


 ポンっと。私にアピールを続けていた蜜蜂の隣に、そんなに大きくない木、うろの空いている木が現れました。もうすっかりこの能力には使い慣れましたね。


 自分のそばに木が現れたことに気づくと、私の意図が通じた様子で蜂はそのうろの中に入っていき、奥の方に持っていた巣蜜を置きました。


 一応神眼で巣蜜を見てみましょうか。もし食べれないものとかだったらこの期待感が一気にゼロになってしまいますので。

 巣蜜は一時期買ってみたいと思って見てたことがあるんですけど、実物を見たことないのでもしかしたら違うかもしれませんし。


 金色に輝いている巣蜜をロックオンして、ずっと見ているとスプーンで掬い取って食べたくなってしまいます。


 えーっと、命神の蜂蜜ですか。

 私の名前がついているんですね。私の創った花から出来ているからでしょうか。


 それに何か色々と追加効果がついているみたいですね。

 なになに……この蜜をひと舐めするだけで寿命が100日延び一口食べれば10年寿命が延びる。……と。


 えっ……?なっ、なるほど?寿命増加ですか……。



 いや、チートすぎません?


 この蜂蜜を食べるだけで寿命が伸びちゃうんですね。

 さまざまなチート植物の花の蜜を集めるとこんなものが生まれてしまうと。


 秘宝とかいうレベル物ですよね。それこそラストダンジョンの宝箱とかに入ってそうな……。

 怖いです、蜂との共同作業ではあるんですけどこんな物を生み出せてしまう私の能力が怖いです。

 しょうがないので、これらは私が責任を持って処分しましょう。

 蜂蜜♪蜂蜜♪

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