5本目 神になりました、命の力です。


 私が力を振り絞り前方を暫く睨みつけていると、次の瞬間私が睨みつけたその場所から小さな木がぽんっと音を立てて現れました。

 ここに来てから3年経った末にやっと成長すること以外で外界に影響を及ぼすことの出来た歴史的な瞬間でした。



 そうなんです、なにかが出来そうな気がするという正体不明の確信を持って行動を始めてから、なんと2年もの歳月が経ってしまいました。


 私も色々頑張って試行錯誤したんですよ!


 力を込めて前方に何かを発射しようとしたり。

 炎よ出でよ、水よ出でよなんて叫んでみたり。※声は出ませんでした。

 規則正しいそれっぽい踊りを考えて踊ってみたり。※体は動きませんでした。

 大自然に宿る火の精霊よ!我が魔力を持って我が敵を撃ち滅ぼせ!!ファイアーボール!!!なんて全力で叫んでみたり。※声は出ていません。


 結果、錯誤しかしてないことは分かりました。



 私に魔力はわかりませんでした。

 魔法を使ってくれる生物が周りにいたとしたらなんとかなったかもしれないですが、そもそも体を全て把握しきれていない状態で自分の体の魔力を感じようとするのは流石に無理がありました。


 この体はおそらくハイスペックなのでしょうが、実感したことはないですが、神様なのですからハイスペックなのでしょう。

 神業、神対応、ゴットハンド、全て基本のスペックが高くないと使えないはずです。

 ですが、前世の私はいいとこ普通なので、無理なことは無理だとすぐに諦めるべきなのでした。



 それはともかく、何か今の私に出来ることは無いのかなとステータスをちゃんと見ていたら大変なことに気づきました。

 私は神様なのです、そして神である私はそれ相応の能力を持っていて然るべきであり、実際に神様らしい素晴らしい能力をもっていたのです。


 またやってしまいました。ちゃんと書いてあったのです。

 私の能力とその詳細が……なんて事でしょう。こんなくだらない事で3年も費すなんてあっていい事でしょうか。

 転生者になったつもりでしたが転生の『て』の字もこなせていなかったのです。


 まぁ、へこんでいたってどうしようもありません、ぼちぼちしていたらあのせっかちな光の神がまたどんどん私の上を過ぎ去っていってしまいますから。



 要するに、魔力がわからないので何か他にできないかなと思ってステータスを見てみたら、ちゃんと神としての能力を持っていたのが分かったのです。



 まずはじめに、神眼です。

 これは、この世界のすべての情報を見ることのできる目だそうです。

 知りたいものを視界に入れなければいけないのですけどなんでも知ることの出来るという能力です。


 実は、私自身無意識にこの力によって自分のステータスも確認していたみたいです。

 それに、物語に出てくる神様のように人の情報や記憶を読むことも可能です。


君はこれまでこれからこういう試練を乗り越えてきたんだね。大変だったね。それで私の力を借りたいと?

なんで私の言いたいことわかるんですか?

だって神様だからね。


 みたいな最強ムーブができてしまうんですよ!ワクワクしますよね。


 簡単に言っちゃうと異世界転生もののつきもの鑑定様の最強バージョン?

 これだけで異世界無双するラノベが出来ちゃうかも知れないほどの最強スキルですね。

 もしかしたらすでにあるかもしれません。

 昨今、ただの会話能力もスキル化されて無双することのできる時代ですからねぇ。


 次に、神の祝福です。

 神に祝福されることによってその神の司る能力を一部使うことが出来るのだそうです。

 私に信仰を誓っている人がいないと使えないので、残念ながら今使うところがないスキルですが、面白いですよね。


そなたに命の神の力を授けよう。

ありがたく頂戴致します。この力で必ずやこの地に平和をもたらしましょう。


 みたいな?

 私の場合その力はどうなるのでしょうか、命の神ですからね。

 えっと……死者蘇生とか出来るようになりそうですよね……。もしかしてやばい?


 でも、残念ながら今使いどころが無いです。そう、知的生命体が近くに存在しないから。



 後の能力は最後の一つを除いて天界に行かないと使えないので省きます。

 そういえば天界に行くことができるのも神の能力の一つですよね、どうやったら行けるのでしょうか?


 空を飛んで?私はそらをとぶ使えましたっけ?





 私についている全ての枝を箒に見立てて大量の箒で空を飛ぶというはどうでしょう!


 あとは、ラピ〇タのように下の地面がすべて浮かぶ石でそれを大量に身につけてとか、カ○ルおじさんみたいに大量の風船を身につけるって言うのもワンチャンス!



 こんなことを考えて、また一年が過ぎました。


 私は何かを集めるのが好きだったのでしょうか?とりあえず全部実現不可能です。


 そもそもこの状態世界樹のままで天へ向かうというのが間違いなのです。


 神眼で見てみると、世界樹を依り代にしている命の神みたいなので、きっと分離出来るのでしょう。

 まず魔力的な何かを見つけないと何にも出来ないということがはっきりとしました。


 あそこ天界には私の家があるはずなのに……。たぶんすごく立派なお家が。

 とても素敵な一軒家です。


 森を抜けた先には草原が広がっていて、ほわほわと沢山の色の光が漂っているのです。

 その先にそびえ立つ古く大きな城。

 とってもメルヘンですね。嫌いじゃありません。



 最後に、私専用の特別な能力!

 命の神の権能!生命の創造です!!


 新しい命を創り、物に命を吹き込む力らしいです。


 植物限定で……。


 新しい命を創るのが植物しか作れないと、なんで植物だけななのかは謎です。

 私が植物だからなのか、これから訓練することで虫→魚→爬虫類みたいにもっと色々創れる様になるのかはわかりません。


 命を吹き込むのは物さえあればなんでも可能です。

 粘土で精巧に龍を作って詳しく設定も作って能力を使えばその通りの龍が出来るというような頭おかしい神能力です。


 超高性能なゴーレム?ホムンクルス?それよりも生物的な何かを創造出来ます。


 まぁ、今の私に粘土細工は出来ませんしどうしようも無いんですけどね……。



 それはともかく、この能力で草や木、花なんかをいくらでも創造することが出来るんです。

 もちろん設定次第ではどんな病気も治す薬草に出来たり、新たな能力を獲得できる木の実だって作れるんですよ。


 何を造りましょうか……。そうですね。



 綺麗な花畑にそびえ立つ一本の立派な樹なんてとっても素敵じゃありませんか。

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