1本目 別の世界に来ました、特別な高揚感です。


 あの真っ暗な世界で神様にあってから幾らの時が経ったのでしょうか?


 私のブラックアウトした意識が、少しずつ起きようとしています。



 完全に目が覚めとき、さっきまでいた世界とは、また別の場所に今いるのだ。


 そんなことは、誰に言われなくともはっきりと分かりました。



 何故なら、さっきまでは魂みたいな精神体という感じの状態で、自分の体の実体がないように感じていたのです。


 しかし、今はちゃんと地面に足をつけて立って自分の体で空気を吸って呼吸を行なっているのがはっきりと分かるのですから。



 だからどうしても、今まで生活していた世界とはまた別の新しい世界に一歩を踏み入れたのだ!


 この全ての法則が異なる世界で素晴らしい力を貰ったのだ!


 という様々な思いで胸がドキドキと高揚感で張り裂けてしまいそうになってしまいます。



 そんな高鳴っている胸をひとまず押さえつけて、まずはじめに深呼吸をすることにしましょう。



 すーーーー、はーーーー。



 今まで肺に入れたどんな空気よりも澄んだ心地の良い空気が体の中にスッと入ってきて、私の心の奥底まで満たしていくような気がします。


 体に入った空気からやっぱりこれまでの場所とは違うのを感じて、どんどんこの世界への期待感が増していきます。


 気持ちを落ち着けようとした深呼吸でさらに興奮してしまうとは思いませんでした。



 ですけど、それも仕方ないことでしょう?


 ずーっと好きだった、アニメやライトノベルを楽しむ度に勝手に夢想していた、異世界転生というものを、自分の身をもって実際に味わえるかもしれないのですからっ!



 今、私の目の前にはどんなに素晴らしい世界が広がっていて、私が今いるこの世界ではどのような冒険が物語ができていくのだろう!と、頭の中でありったけの妄想が膨らんでいきます。


 この世界を壊してしまおうと画策している魔王だっているかも知れませんし、そんな魔王を倒して世界中の人々を救わんとする勇者もいるかも知れないのです。


 そして何より、私の手に入れた力、神様から授かった新たな能力でそのような確実に歴史に名を残すような傑物たちと協力したり、彼らの力になることができるのかも知れないのです。


 なんてワクワクするのでしょう。

 これで興奮しないのであれば、もうそれは人じゃなくて感情を失ったロボットか何かです。


 深呼吸、深呼吸。


 サワサワと風によって草が流す音が、もう待ちきれないと私の精神を掻き立てます。


 さて、ゆっくりと目を開くとしましょう。


 この世界の全てをはっきりとこの目に収めてやるのです。

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