0本目 神様に目をつけられました、転生です。


 僕のせいで空気がなんだかしんみりしてしまった。


 神様は、そんな空気を打ち破るように話し始めた。


『それでね!僕がここに来たのは、そうだね、なんとなく思いつきだよ。せっかくだから、君にそのまま次の生を与えてあげてもいいかなぁって思うくらい?』


 そのまま次の人生ってことは、記憶を保ったまま転生できるって事なのかな?

 そんな、最近の小説みたいな事……


『そういうこと〜』


「えっ!いいんですか?でも、何で僕なんですか、僕なんてそんなに楽しい人じゃないかなって」


『何でって言われてもね。何と無くとしか言えないよ?何故か君のことが目に付いたんだよね、こんなの滅多にないことだから誇っていいよ!』


 ほらっ!ラッキーだよ!自信持って!なんて言いながら励ましてくる。

 僕そんなに卑屈になってたかなぁ、いつも通りだと思うけど。


「そうなんですか」


『そう!それで!新しい生を送るとしたら何をしたい?英雄?王様?魔法の世界に行ってそこの支配者になるっていうのは?もちろんだらだら遊んでいるだけの生活もいいんだけど』


 僕が乗る気になったのを感じたのか、急に軽やかな喋りになったので少し怖く感じる。


 あれ?今魔法の世界って言った?

 剣と魔法の世界ってことは、つまり、ファンタジー世界!?

 そんなゲームみたいで楽しそうな世界本当にあるのだろうか。


「ちょっと待ってください!魔法の世界なんてあるんですか?」


『もちろん!そもそも魔法の世界って作りやすいしね、ちょっといい加減に作っても魔法っていう御都合主義でなんとかなるから、それに神様の奇跡とかポンポンあるからね』


「いい加減に作ってもって」


 ちょっと今の一言で不安を感じたんだけど本当に魔法の世界があるんだ。

 もしかしたら僕でも小説みたいな活躍ができるのかもしれない!


『もちろん!何だっていいよ!世界を壊さない程度ならね。どんな力でもあげよう。さぁ、君はどんな世界で何を為すんだい?』


 更に口調がハキハキと早くなって、僕に選択を迫ってくる。

 正直やっぱりちょっとどころじゃなく怖い。


「なんでもいいって言われても……。そう。元の世界とかは?」


 一応聞いておく、それが1番いいと思うし、正直元の世界には未練しか残ってないから。

 幽霊にはなれない程度にはだけど。


『出来なくはないけど、元の体とかは無理だよ?もう死んじゃったんだろうし、魂を戻してもね。すぐなら大丈夫だったかもしれないけど、死後に蘇るのは君の世界のルールに反するし……』


 ここの世界時間が経つのが結構速いんだよ。少し先の別の人になるなら出来るんだけど……


 目の前の神様は少しぶつぶつと考え込んでしまった。

 そんなに考えさせるつもりはなかったのに。


 未練はあるけど、せっかくなら全く違う別世界で面白おかしく過ごしたいし。


 でも、それはつまらないしって聞こえたのは気のせいですかね?

 気のせいならいいんですけど、最初に気まぐれって言ってたのはちゃんと聞いてたんですけど、完全に僕で遊ぶつもりですか?


「あのっ!」


『あくまで転生しか出来ないんだよ、ごめんね。君が死んでなければ転移とかも出来ないことは無いんだけど』


 話しかけると、そうはっきりと言われた。


 最初は、復活が出来なくはないけど……。みたいな話だった気がするけど、それはもうなくなったらしい。


 それに死んでなかったら、この人と会うこともないし、元の世界から離れる理由もなかっただろうから完全に机上の空論になってしまう。


『それで?どうする?』


 急にそんなこと言われても本当にどうしようかな?断るのはあり得ないし。


 そうだね、とりあえず思いついたことを全部言ってしまおうか、ダメなところは諦めればいいし。


「えっと、まず、その世界で十分に活躍できるような力が欲しいです!それと、初めてやる事でもある程度上手く出来てちゃんと鍛えればどんどん上達するような才能を下さい!」


『それで?』


 まだ大丈夫なのかな?それじゃあ。


「えっと、それで、前世だと結構すぐに死んじゃったので出来るだけ長く生きたいです!いろいろやってみたいですから」


『もう一声!』


「じゃあ最後に、その世界の歴史に名前を残すようななんか凄いことをしたいです!」


 楽しそうに僕にそうやって聞いてきた神様は、そこまできくと、僕に向かってビシッと指を差し大きな声で言った。


『了解!わかったよ、強い体と高い能力と長い命ね、最後のは行ってから頑張りなさい!』


「あ、ありがとうございます!」


 そのあと神様は、数秒悩んだように顎に手を当て頭を傾げると。


『それじゃああの世界にしようかな、まだ作ったばっかりでね1000年も経ってないかな?その世界の中で色々な神様達が存在している世界だよ、そこの最高神の一柱にしてあげよう。そう!神にふさわしい能力をつけてあげるからこれから頑張ってね〜!』


 自慢するように、さっきよりも早口でそう言い切った。


 そして僕がお礼と返事をする前に辺りは白く染まり始めました。


「それじゃ〜、行ってらっしゃい!」


 えっ!あれ?僕神になるんですか?それも最高神?


 すぐに意識はブラックアウトしました。

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