0本目 神様に会いました、魂です。
『おーい!?』
「うわっ!何!?」
急に何者かの声が頭の中へ届いたので、急いで辺りを見回すと、目の前に光の塊があった。
この永遠に続いていると思われた暗闇をあたり一面明るく照らし出してしまうほどに、煌々と輝く光の塊だ。
それなのになぜか、その光を直視しても眩しく感じることはなく、それどころか暖かくてどこか安心感がある。
その光は、どうやってか人の形をとっていて、僕に向かって話しかけているように感じた。
さっきまでの光のない真っ暗闇の世界は、1人だけの部屋、自分だけの世界で、誰にも邪魔されずにゆっくりと人心地つくような安心感があった。
しかし、今の光があるこの空間は、1人きりじゃなく、両親に優しく抱きしめられているような暖かい安心感で満たされている。
同じ心の安らぎなのだが、何かが決定的に違う気がする。
この世界の中でなら、自分が溶けて消えて無くなってしまってもいいと思えるような。
『ちゃんと僕のこと見えてるよね?』
おっと。
その何かに話しかけられてる最中だったんだ。
「今、目の前にあるこの光……ですよね?」
『うんっ、そうだよ!良かった〜、さっきからず〜っと話し掛けてたのに全く反応してくれないから、もしかしたら君には僕のことが見えてないのかと思ったよ』
いや〜、焦ったなぁ。という風に自分の頭をかく光の人。
こんな存在感を放っているのに気づけなかったのは僕の方が悪いので、なんだか申し訳なくなる。
完全に自分の世界に浸かっていたから。
それにしても、こんな真っ暗闇のよくわからない状況でこんな楽しそうな様子でいれるなんて、一体どういう存在なんだろう?
煌々と煌めいて、明らかにパワーに溢れているから。神様的存在だったりするのかな?
それにしてはフレンドリーすぎるんだよなぁ。
それに神様がいるのだとしても、こんなどうしようもない僕に直接会いに来るなんて暇なことする筈がないだろう。
『うんうん、それでね、僕は簡単に言っちゃうと、君たちで言うところの神だよ。世界の絶対的存在って言えばわかりやすいかな?』
正確には違うんだけどね。とか言いながらニコニコとしている光。
「か、神様?」
え?このなんかふよふよしてる光の塊が?
『失礼だな〜。君も同じようなもんじゃないか』
彼がそう言うので、今の自分の体がどのようになってるのか、なんとかして見ようとしてみる。
しかし、自分の体が全然言うことを聞いてくれない。
今までどうやって自分の四肢を動かしていたのかすらも怪しいほどに動けなかった。
それでもどうにか自分の状態を確認しようともがくと、やっと確認することができた。
視界だけゲームのように別のところにあるみたいな感覚になってしまったけど。
本当だ。
体を全然動かせないと思ったら、淡い光になってる。
それも、前にいる神様(仮)のような人型ですらなく、一点に集まっているだけの光の球。
さらに、目の前の存在と比べてしまうと、もうすぐに消えてなくなっちゃうんじゃないかっていうレベルの淡い光。
死後の世界に淡い光。
もしかして今の僕って、魂だけの状態なのかな?
『魂か〜。まぁ、そんな感じ?それでね、君の事が気になったから見に来ちゃった!』
魂みたいな感じらしい。
とりあえず、これが人間の死後の状態なんだろう。
来ちゃった!なんて、仲のいい友達みたいなこと言われても腑に落ちない。
だって、そんな友達が今生でできた試しが一切ないのだから。
『なんか悲しいね、まっ、細かいことは気にしないでよ』
そう。悲しい話……えっ?
「僕今なにも喋ってないですよね?」
『あのね〜、僕は神様なんだよ?心を読むぐらいのことはできるに決まってるじゃないか』
「そ、そうなんですか」
神様が心を読めるのは当たり前の事らしい。
この神様の前で、悪口とか変なこと考えたらやばいよね。絶対。
フレンドリー過ぎて少し気持ち悪いとか思ってたことも絶対出さないようにしなくちゃ。
『全部ちゃんと伝わってるからね?』
「そ、それで、何で僕なんかのところに?そもそもここは何なんですか?」
目の前の彼が、本当に神様なんだとしたら、きっと、この世界のこととか、僕のあの後のこととか、色々知ってるんだよね。
『そうだね、まず、ここはさっきまで君が思ってた通りの場所だよ。人の、死んだ人のっていうか全ての魂の行き着く先ってところかな。ここで魂はその生を振り返ってこの世界に溶けて消えてゆくのさ、そしてそのエネルギーから新しい魂を作り出す。そう、そういう場所なんだよ、ここは』
そう……なんだ。
やっぱりここで僕の存在が消えていくという考えは合っていたって事だ。
どこかで既に分かっていたのかも知れない。
というか、今さらっと言ってたけど……さっきまで僕が考えていたこと全部知られてるの?
思いっきり自分語りとかしてたんだけど……。
『まあまあ、ここはそういうところだから大丈夫だよ。他の人はもっと深くまで、それも自分の存在が消えるまで、周りを気にせずその生を振り返ってるものだしさ』
「他人に知られたのが恥ずかしいんですよ……」
『大丈夫、大丈夫。だってほら僕は神だし?』
「だいしょばないです」
いくら神様が全知全能だったとしても、恥ずかしいものは恥ずかしい。
それに、それだと他の人と比べて薄っぺらい人生だったって言われてるもんじゃないか。
あっ、そうだった。
「あのっ、僕の最後とかは?」
僕が死んでしまった後、家族とかはどうなったんだろうか。
不謹慎だけど、みんな悲しんでくれただろうか。正直気になる。
『いや、知らないよ。君に会うのってこれが最初だもん。全部を全部見てられるほど、僕は全能じゃないんだよ。ごめんね……』
「そうですか……」
その後、その人は、調べることはできるけどさ……どうする?なんて聞いてきたけど、そこまでする気は起きなかった。
結果がどっちでも知らない方がいいことだってあるだろうから。
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