第3話 勇者パーティー襲来の理由

 うん、何だか益々訳分からん状況になってきた。

 このままだと、どんどん収拾つかないことになってしまうんじゃないか?

 この辺りでどうにかしとかないと、更に面倒になってまずいことになるかもしれないな。


「それで、自称異世界から来た勇者パーティーとやらは、一体どこから入ってきたの?」


 取り敢えず一つずつ疑問を解消していくかと頭痛がしそうな頭を押さえながら、思いっきり怪しげなものを見る目を向けると、チビ以外の少年二人に盛大な溜息を吐かれてしまった。


 一人は困り果てた様子で、もう一人は呆れ果てた様子で。


「やっぱり信じてない…」

「そりゃそうだろ。俺達だって無茶苦茶にもほどがあるって呆れてんだから」

「確かに、異なる世界で修行するとかとんでもない話だよな」


 は? 修行? 何だそれ?

 てか異世界設定はそのままなのか?


「でも、無茶苦茶だろうが何だろうが、このお姉さんに理解して納得してもらった上で了承を得ないことにはどうしようもない状態だからな」

「それはそうだが…」


 ん? 理解? 納得? 了承?

 どういうことだ?


「全く、異なる世界であの薄い板みたいなやつ使って修行とか師匠も何考えてるんだか」

「ああ、何故そうなるのか理解に苦しむな」


 待て、薄い板でタブレットを指差してるのは何だ?

 タブレット使って修行するってことか?

 てか修行って一体何の修行だ?


「何を言うておる! 怪我もせず、死ぬリスクもなく修行が積めるのだから、これほど合理的で効率的な手段はないではないか!」


 おいジジイ、だからなんでお前はそんな偉そうに頓珍漢なこと言って踏ん反り返ってるんだ?

 いい加減お前らだけで納得してないで、私にも分かるように話してほしいんだが。


「それで、あんた達はどこから入ってきたわけ? そろそろ私の質問にもちゃんと答えてほしいんだけど」

「そんなことも分からんのか。これは随分と頭が…、ふごぉっ!?」

「はいはい、面倒なことになるから師匠は黙っててくださいね。お姉さんが分からないのは当然のことですよ。寧ろそんな常識的なことが理解出来ない師匠の方がおバカさんですよ」


 ほう、このジジイ、また理不尽に私をバカにしようとしてたのか。

 それで、これ以上いらんことを言わないように口を塞がれて逆に諌められたということか。


「師匠が失礼な真似ばかりしてすみません。ただ俺達がこことは異なる世界から来たことを信じてもらわなければ話が進まないので、取り敢えずでもいいから信じた上で話を聞いていただけませんか?」

「…分かった。取り敢えずそういうことでいいから話してくれる?」


 いや、もう何が何だか分からないんだけど、話すと言うんならそうしてくれ。

 嘘か本当かは別にして、話を聞かないことにはどうにもならなそうな気がするし。


「やっぱり全然信じてない顔ですね。まあ、仕方ありませんけど…」


 それはそうだろ。

 普通、そんなこと簡単に信じたらやばいと思うんだけど。

 それ以前に、この状況で警察に通報しようとしない私も充分おかしい気がしてきたぞ?


「そうですね、まずはどこから入ってきたかってことですけど、俺達はその薄い板みたいなものを媒体としてこちらの世界にやって来ました。つまり、その薄い板の中から現れたってことです」

「……はあ?」


 何だそりゃ? 確かに異世界から来た設定じゃないと成立しない話だな?

 それでタブレットから光が溢れてきたってか?

 いくらなんでも有り得ないだろ、あはははは。


「まあ、信じられねえよな」


 説明している少年じゃなくて、ジジイの口を塞ぎ続けている少年が溜息混じりにボソリと呟く。

 いや、だってね、こんな訳分からん話、どうやったら信じられるんだよ。


「それで俺達がこちらの世界にやって来た理由なんですが、魔王復活が予想よりもかなり早まっていて、それが約一ヶ月後だとされています」


 うん? 魔王復活が早まったことと、こっちの世界にやって来たのに、一体どういう関係があるんだ?


「その魔王を討伐する役目を担うことになったのが勇者パーティーである俺達なんですが、今の俺達にはそれを成し遂げるだけの実力はありません。それで、こちらの世界で急ぎ修行を積み力をつけることになったんです」

「何がどうなったらそういう話になるのよ?」


 だから何で、それでこっちの世界で修行することになるの?

 いや、もう、何だか全く理解出来ないんだけど。


「その修行っていうのが、その薄い板を使ってやるんですけど」


 さっきもそう言ってたな。

 だから何でその修行とやらにタブレットを使うことになるんだ?


「実は俺達もよく分からなくて…。師匠が言うには、こちらの世界のゲームとやらの機能を応用したものらしいのですが…」


 何だそりゃ!? ゲームで修行? 何でそんな訳の分からない話になるんだ?


 あれ、そういえば私、『勇者育成プログラム』なんて何だかよく分からないアプリ起動したよな?

 それでタブレットからぶわぁって光が溢れて気付いたらこいつらがいたよな?


 えっ、ちょっと待って、どういうこと?

 まさか、あの怪しげなアプリが原因?


 ん? そういえば、アプリ開いてそのまま放置してたけど、タブレット画面にジョブ選択なんて表示されてるな?

 ええっと、選択肢が勇者に剣士、魔導士に神官?

 なんか、勇者パーティーっぽいジョブだな?


 うん? あれっ? そういえばよく見たら、ジジイ以外の四人の格好って……。


 えっ、何これ? どういうこと?

 なんか凄く嫌な予感がしてきたんだけど!?


 いや、本当にちょっと待って。

 一体何がどうなってるのか全然訳が分からないというか分かりたくなくなってきたんだけど!?


 もうヤダ何これ? どう考えても有り得ない。

 というか、やっぱりこんなふざけた状況、信じたくもなければ受け入れたくもないっつうの。


 それに何で私がこんな訳分かんない状況に陥る羽目になってるの?

 本当に全然分かんないし意味不明なんだけど。


 頼むから、誰か私にそれを分かりやすく納得出来るように説明してくれ!

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