第15話 呪いとペンダント
クレープを食べ終えた二人はショッピングモールから蓮夜の家まで戻って来た。
蓮夜は家に戻ると美里の買った服をリビングの美里の泊まる用の荷物の近くに置き、買ってきた本をリビングの本棚に入れて美里に話しかけた。
「じゃあ、俺は昼寝するけど、美里はどうするんだ?」
「どうするって言われてもね。夕飯の食材はあったし、蓮夜の家いつ来ても綺麗だからやること特にないんだけど……」
「今から夕飯を作るにしては流石に早いしな」
「んー、取り合えず買ってきた本でも読んでるかな」
美里は少し考えた後、ソファーに座って買ってきた本を取り出した。
「蓮夜はどこで寝るの?」
「寝室のベッド」
「ここで寝てたら夕飯出来た時にすぐに起こせるんだけど」
「ん、じゃあ、ここで寝るか」
美里の提案を聞いて蓮夜は美里が座っているソファーの対面に置いてあるソファーに寝転んだ。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ。八時くらいに起こすね」
「ん、分かった」
蓮夜は美里に返事をして美里が本を読み始めて十分くらい経つとぐっすりと眠っていた。
美里は本に適当なしおり替わりの紙を挟んで閉じると、蓮夜に近づいて軽く揺すった。
軽く揺すっても起きないことを確認すると、美里は少し微笑み蓮夜の頭の近くに座り起こさないように気をつけながら頭を持ち上げて頭が膝の上に来るように少しずつ座っている位置をずらして蓮夜の頭を膝の上に置いた。
蓮夜に膝枕を出来たことで嬉しそうに微笑み、蓮夜が突然起きないかドキドキしながら蓮夜の寝顔を見ながら優しく頭を撫でた。
蓮夜の寝顔に集中していた美里が時計を見ると、時間が一時間近く経っていた。
「そろそろ夕飯作り始めないと」
蓮夜の頭を名残惜しそうに膝の上から降ろしてキッチンに移動し、冷蔵庫を開けて夕飯の調理を始めた。
夕飯を作り終えた美里はテーブルの上に料理を運び、夕飯の準備を整えて蓮夜を強く揺すりながら声をかけた。
「蓮夜、夕飯出来たから起きて」
「ん、ん~もうそんな時間か?」
体を起こした蓮夜は眠そうに目をこすりながら時計で時間を確認した。
美里が言っていたように時計は八時少し前指していた。
「ほら、夕飯食べるわよ」
「ああ、分かった」
美里が蓮夜の隣に座って夕飯を食べ始めた。
蓮夜は寝起きのためほとんど何も話さずに夕飯を食べ終えた。
夕飯を食べ終えた後美里は食器を持って洗いに、蓮夜はリビングから出て風呂の用意に向かった。
二人はそれぞれの用事を終えてリビングに戻って来てソファーに座ってくつろぎ始めた。
「これからどうする?風呂に入って寝るか?」
「さっきまで寝てたのにまだ寝るんだ」
「いや、それ以外にやること特に思いつかないから」
「相変わらずね。……そういえば、私、蓮夜が持ってる石見たことないな」
「そうだっけ?」
美里は蓮夜に返事をして何をするか簡単に考えて昼の買い物で見た天然石のことを思い出して口に出した。
蓮夜がどんな天然石を集めているのか気になった美里は蓮夜に頼んで見た。
「蓮夜の石見せて欲しいかな」
「別にいいけど、石に興味ないとあんまり楽しくないと思うぞ」
「いいの、見てみたいだけだから」
「そうか」
蓮夜は美里の返事を聞いて立ち上がり、美里について来るように言って一緒にリビングから出た。
蓮夜は階段を上がり寝室の隣にある部屋の扉を開けて中に入り入口近くの電気をつけた。
部屋の中は棚が置かれ様々な種類の石がガラスケースに入れられて大量に置かれていた。
「こ、これ全部天然石なの?」
「ああ、宝石の原石や隕石もあるがな」
何でもないかのように言う蓮夜の言葉に美里は呆れながらも部屋の中の石を軽く見渡し、一つだけ他の石と違いアクセサリーに加工されたものが一際厳重に管理されていた。
美里はアクセサリーの入れられたケースに近づいてよく見てみると、オレンジがかったピンク色の宝石が桜の花の形をしたペンダントが入っていた。
「なんでこれだけペンダントなの?それも他の石以上に厳重に保管してるみたいだし」
「それは今日話した友達から貰ったんだよ」
「こんなペンダントをくれる友達って……」
美里は蓮夜の話を聞いてペンダントについている綺麗な宝石を見ながら呆れて苦笑した。
蓮夜も美里の言葉に同意して苦笑しながらペンダントの入ったケースを軽く撫でて話を続けた。
「桜型の宝石の周りを縁取ってる宝石があるだろ、あれ全部ダイヤだぞ」
「え!?」
蓮夜に言われて美里がじっくりと見てみると、ピンクと透明な宝石が桜の形を縁取るようについていた。
小さいとは言えダイヤモンドを大量に使っているアクセサリーに美里はかなり高額な事しか分からなかった。
「どうしてこんな物貰えたの?」
「…………呪いだよ」
「え?」
「あいつと知り合って少し経った頃に言われたんだよ、『私があなたに呪いをかける』ってな」
「そんな……呪いなんてあるわけ」
蓮夜の言葉に美里はあり得ないと言いたそうな顔で蓮夜を見るが、蓮夜は美里の顔を見ずに少し悲しそうな顔で宝石を見ながら続けた。
「呪いなんてない、俺もそう思ってた。けど、これを渡された時に理解したさ。なんであいつが呪いなんて言ったのか」
「……どうして?」
「悪いが、これは呪いを解くときまで誰にも話さないって決めてるんだ」
「呪いの解き方分かるの?」
蓮夜の言葉に美里は気になったことを問いかけた。
美里の問いに対して蓮夜は頷いて返し続けた。
「ご丁寧に渡して来た時に教えてくれたよ。解けるものなら解いてみろだと」
「……すごい友達ね」
「まあな、呪いをかけられて三年以上経つが全然解けてない。いや、解く気がないだけなのかもな……」
「え、それって……」
小さな声で呟くように言った蓮夜の言葉に美里がどういう意味か問いかける前に蓮夜は首を横に振り、ガラスケースから離れていった。
「俺は先に風呂に入るわ」
「……分かった」
蓮夜は美里にそれだけ言い残して部屋から出て行った。
美里は蓮夜を見送った後、ガラスケースの中にあるペンダントを見つめてため息をついて部屋から出た。
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