第13話 後輩とのお出かけ

 コーヒーを飲み終わった蓮夜と美里は出かける準備を済ませて九時少し過ぎに家を出た。

 家を出てバス停まで歩き二人はバスで近くのショッピングモールまで移動した。

 ショッピングモールについた蓮夜は美里に視線を向けて問いかけた。


「それで何を買いに来たんだ?」

「一応目的は夏服だけど、気に入るものがあれば買う予定」

「じゃあ、服屋を回ってみるか」

「私はそれでいいけど、蓮夜は買っておきたいものとか無いの?」


 美里の答えを聞いてショッピングモールに入り服屋を探して歩き出した蓮夜の隣に美里は並び問いかける。

 美里の問いに対して蓮夜は少し考えるが、特に思いつかなかったのか首を横に振った。


「特にないな。まあ、軽く見て回って欲しものがあれば買うさ」

「じゃあ、全部見て回りましょうか」

「気になる場所だけで充分だ」

「早く行きましょうか」

「聞いてないし……」


 蓮夜の意見を聞き流した美里は隣でため息をついてる蓮夜を気にせず、大量に並んでいる様々な店を見ながら歩いていた。

 美里は少し店を見て回っていると、女性用の服を扱っている服屋を見て立ち止まった。

 美里が止まったのに合わせて蓮夜も立ち止まり、美里の視線の先を服屋に視線を向けた。


「あの店が気になるのか?」

「ん、ちょっと入ってみよ」

「俺も一緒に入る必要あるか?」


 店に入ろうとしていた美里は面倒くさそうな顔で問いかけてくる蓮夜に振り向いて返した。


「蓮夜の意見を聞きながら選ぶから、一緒に来てくれないと聞けないじゃない」

「俺の意見を聞く必要性あるか?」

「男子の意見も参考にしたいからね」

「じゃあ、どっちがいいって質問はなしな」

「分かったから、早く行くよ」

「はいはい」


 テンションの高い美里に蓮夜は呆れてため息をつきながら面倒くさそうに美里の後を追って店に入った。

 蓮夜が店の中に入って美里の近くに行くと、美里は振り返り蓮夜を見て問いかけた。


「どんな服が良いと思う?」

「そうだな。美里は派手な服よりシンプルな清楚系の服の方が似合うんじゃないか?ちょうど、今着てるのみたいな」

「こんな感じね……」


 美里の問いに少し考えた蓮夜は美里が今日着てきた特に飾り気のない白いワンピースに黒いパンツを見ながら返した。

 蓮夜に言われて美里は自分の服を軽く見て店に置かれているたくさんの服を見比べ始めた。

 美里は服を選び終わると、何着か持って蓮夜に話しかけた。


「これから試着してくるから外で待ってて」

「了解。金は払ってやるから試着終わったら連絡しろ」

「ん、ありがと」


 美里は蓮夜に御礼を言って試着室に歩いて向かっていった。

 それを見て蓮夜は店の外に置いてあった椅子に座って美里からの連絡を待ち、連絡が来ると店に戻って美里の代わりに会計を済ませた。

 店から出て美里が買った服が入った袋を持って美里に問いかけた。


「それで他の店も見て回るのか?」

「服は買ったから他の店を見て回ろうかな」

「じゃあ、この階は服屋しかないから上の階に行くか」

「蓮夜は服買わないの?」

「服はあるからいい」


 蓮夜は美里の問いに簡潔に返して上の階へ向かうためにエスカレーターに向かって歩きだした。

 美里も蓮夜の隣に並んで蓮夜に話しかけた。


「服買ってもらった御礼に私が服選んであげるよ」

「別にいい」

「……そ」


 服を全く買う気が無い蓮夜に服を選びたかった美里は少し不満そうな顔で返した。

 蓮夜と美里が三階の店を見て回っている途中で蓮夜は立ち止まって店を見ていた。

 美里は急に立ち止まった蓮夜に美里は不思議そうな顔で蓮夜の視線の先を見て納得したように声を出した。


「そういえば、蓮夜はパワーストーンや天然石好きだったわね」

「まあ、正確には天然石の原石だけどな」

「見ていく?」

「……」


 美里の問いに蓮夜は何も返さずに少しの間無言で考え始めた。

 少しすると蓮夜は美里に視線を向けて返した。


「少しだけ見ていこうか」

「ん、好きなだけ見てもいいよ」

「原石はそんなに無いだろうし、少しでいいさ」

「そう」


 天然石店に入った蓮夜はアクセサリーに加工された天然石ではなく原石を探して見て回り始めた。

 原石を見つけると蓮夜は真剣な目で原石を見始めた。

 珍しく真剣な顔をしている蓮夜に美里は気になったことを問いかけた。


「蓮夜はどうして天然石を好きになったの?」

「ん?ああ、小学校の頃の友達が好きだったんだよ」

「どんな子だったの?」

「どんなか……結構変わった奴だったよ。無口な奴かと思えば、好奇心旺盛で我が強くてよく引っ張り回されてた」


 原石を見ながら話す蓮夜の話に美里は少し呆れ苦笑して返した。


「蓮夜を引っ張り回すって、すごいわね……」

「美里も人のことは言えないがな」

「そう?」

「…………」


 美里の言葉に蓮夜が返すと、美里は首を傾げ何を言っているか分からないと言った顔で返して来た。

 そんな美里の態度に蓮夜は無言でジト目を少しの間向けて、原石に視線を戻した。


「蓮夜はどの石が好きなの?」

「……そうだな。アクアマリンとかも好きだが、セイクリッドセブンやフローライトも結構好きだな」

「どれか一つって言われるとどれ?」

「一つか……天然石はものによって結構変わるからな」


 美里の問いに蓮夜はしばらくの間考えて返した。


「今持ってるものの中だとルチルクウォーツかな」

「なるほど。それで、買うものは決まったの?」

「いや、気に入るのはなかったよ」

「そ、残念ね」

「よくあることだ」


 蓮夜は美里に返事を返しながら店から出てまた三階を見て回り始めた。

 しばらく店を見て回ったため時間が十二時を少し過ぎていたため、二人はショッピングモール内の飲食店が並んでいる場所に向かった。

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