第11話 二人の関係
美咲達が教室で弁当を食べている頃、蓮夜はいつもの場所でパンを食べ終わり図書室に来ていた。
図書室に入ると部屋の隅にある机の椅子に座った智美が入って来た蓮夜に気づいて手を小さく振った。
蓮夜は智美に見えるように小さく手を振り、本棚から適当な本をタイトルだけで選び智美の隣の席に座った。
「今回もよろしく」
「毎回思うが、俺が手伝わなくても大丈夫なんじゃないのか?」
周りに気を使ってか小さな声で話しかけてくる智美に蓮夜が問いかけると、智美は首を横に振った。
「教えてもらった方が効率がいいから」
「……なら、勉強始めようか」
「うん」
智美は蓮夜の答えを聞いて数学の教科書と参考書、ノートを広げて練習問題を解き始めた。
蓮夜も智美が勉強を始めたのを見て先ほど適当に選んで来た本を読み始めた。
智美はあまりかなり無口で自分の主張を言わず、教室でも教科書や参考資料などを読んで過ごすほどの勉強好きで友達付き合いより勉強をする方が好きだと言うほどだ。
そんな智美は蓮夜には積極的に関わり、かなりの頻度で勉強を教えてもらっている。
「ん?」
本を読んでいた蓮夜の肩を左手で軽く突いた智美は、蓮夜が気づいたことを確認して参考書に乗っている問題を無言で指さした。
智美が指さした問題は高一ではまず解けないほど難しい問題で、中間テスト範囲の応用問題ではあるが絶対に出ないだろう問題だが、蓮夜は頭の中ですぐに解いて教科書のどこを見ればいいか教えて読書を再開した。
智美も教えられたページを見ながら問題を解き始め、解き終わると少し嬉しそうに微笑んで次の問題を考え始めた。
蓮夜は智美が問題を解いている間はずっと図書室で適当に選んだ本を読んでいる。
そんな二人を離れたところから見ていた美咲達は少し呆れたような顔していた。
「あの二人どういう関係なの?」
二人の関係が気になった美咲は呆れた顔で二人を見続けている悠斗と愛奈に問いかけた。
美咲の問いかけに悠斗と愛奈はお互いに見合った後、美咲に視線を戻して説明を始めた。
「簡単に説明すると勉強仲間かな」
「蓮夜は勉強してないみたいだけど」
「細かいことは気にしなくていい」
「……けど、どうして二人は一緒に勉強してるの?私の知ってる限りだと、二人とも積極的に誰かと関わるような人じゃないと思うけど」
美咲は二人を見ながら悠斗と愛奈に問いかけると、愛奈は少し困った顔で悠斗を見た。
「私はあの二人が一緒に勉強するようになったきっかけ知らないのよ」
「悠斗は知ってるの?」
「まあ、何となくな」
美咲と愛奈に視線を向けられた悠斗は蓮夜と智美を少し見た後、美咲に視線を戻して話し始めた。
「あいつらが一緒に勉強するようになったのは中一の夏頃からだ」
「そんな頃からあの二人一緒に勉強してたの?」
「一緒のクラスだったから知ってるだけで、そこまで詳しくはなんだけどな」
「けど、蓮夜は平均点しか取らないんでしょ。なのに、八神さんはなんで蓮夜に勉強を教えてもらってるの?」
悠斗から蓮夜の中学の頃のテストの点を聞いていた美咲は、中学の頃から学年主席であった智美が蓮夜と一緒に勉強をする理由が分からなかった。
「ああ、それは蓮夜が八神さんが解くのに苦労してた問題を簡単に解いたからだよ。蓮夜が八神さんに興味を持ったのも普通の中学生は解こうとしない難しい問題を解こうとしてたからだしな」
「八神さんっていつもそんな問題ばっかり解いてるの?」
「そういうわけじゃないさ。予習、復習を以外の余った時間で発展と応用を勉強してるだけみたいだぞ。息抜きに雑学も勉強してるらしいけど」
「そうなんだ」
悠斗の話を聞いて美咲は蓮夜の隣で勉強している智美を感心した顔で見ていると、愛奈が悠斗の説明を補足した。
「智美の勉強に対するやる気は異常だからね」
「そこまで?」
「最初の頃、分からない問題があるたびに蓮夜に聞きに来てたからな」
「すごかったよね。あの蓮夜が本気で困ってたし」
愛奈と悠斗は昔のことを思い出し苦笑して蓮夜の隣で無表情のまま黙々と勉強をしている智美を見た。
美咲は真面目に勉強している普通の少女にしか見えない智美が、隣の席に老若男女を魅了する絶世の美少女でも驚きもしない蓮夜を困らせたと聞いて少し驚いていた。
「困った結果、勉強を教えるのは昼休みか休日に家か図書館でってことになったわけだ」
「なるほどね」
悠斗の説明で蓮夜と智美が一緒に勉強をしているのに納得した美咲は図書室の出入り口の方を向いて二人に声をかけた。
「邪魔しても悪いし、教室に戻ろ」
「そうだな」
「そうね」
美咲の言葉に二人も同意し、三人は図書室から出て教室に戻った。
蓮夜と智美は午後の授業が始まる予鈴の少し後に教室に戻って来た。
午後の授業が始まると、蓮夜はいつも通り授業の大半を眠って過ごした。
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