第10話 学校一の秀才
月曜日の朝、美咲は登校途中にあった愛奈と悠斗の二人と一緒に教室に入ると、すでに登校していた数人の生徒が雑談をしていた。
美咲が教室に入ったことに気づいた生徒たちは雑談をやめて美咲を見て挨拶をした。
『神宮さん、おはようございます』
「おはよう」
美咲はいつものように微笑んで挨拶を返すが、一緒に登校した愛奈と悠斗は呆れた顔でそんな光景を見ていた。
生徒たちに挨拶を返して美咲達が自分達の席の方を見ると、いつもぎりぎりの時間に来る蓮夜がすでに登校していて机の上で腕を枕に寝ていた。
「こんな時間からいるなんて……」
「どうせ、寝たら遅刻するから学校で寝ようってだけだろうぜ」
美咲が蓮夜が来ていることに驚いていると、悠斗が呆れた声で予想を話して席に座った。
悠斗の話に美咲が少し驚いて愛奈を見るが、愛奈は苦笑して頷き悠斗と同じように席に座った。
二人の反応に美咲は驚きながらも席に座り、二人に問いかけた。
「今日みたいなこと今までにもあったの?」
「中学の時にたまにあったかな」
美咲の問いに対して悠斗は中学の頃のことを思い出しながら答えた。
「まあ、蓮夜だからね。細かいこと気にしても疲れるだけよ」
「確かにそうだな。蓮夜と友達になるなら、蓮夜だからっで流さないと過労で倒れるぞ」
「そこまでのことなの……」
笑いながら話す愛奈と悠斗に美咲は苦笑してぐっすりと眠っている蓮夜を見た。
「過労は流石に冗談だが、気にするだけ無駄なのは確かだぞ」
「蓮夜と一ヶ月一緒に居ればすぐになれるわよ」
「そういうものなんだ……」
三人は寝ている蓮夜を見て笑い、蓮夜から視線を外して朝礼までの間雑談をして過ごした。
蓮夜は朝礼や授業の合間に寝て起きてを繰り返していたが、昼休みが始まるとすぐに昼食のパンを持って教室から出て行った。
三人は教室から出て行く蓮夜を見送り、机をくっつけて一緒に弁当を食べ始めた。
「相変わらず、蓮夜は昼休みになるとすぐにどっか行くわね」
「蓮夜はどうしていつも一人で食べるのかな?」
「理由なんて知らんが、あいつは誰かと積極的に仲良くしようとしないんだよ」
「私達も仲良くなったのはたまたまだしね」
「そうだったんだ」
愛奈の言葉に美咲は少し驚き意外そうな声で返した。
「そうだ。今日、弁当食べ終わったら図書室に行かないか?」
「いいけど、どうして?」
「先週話したでしょ。蓮夜は昼食を食べたら図書室で本を読んでるって」
「もしかして、蓮夜に会いに行くの?」
愛奈の言葉で先週の二人が言っていたことを思い出した美咲は少し驚いて問いかけた。
その問いに対して二人は当たり前だと言いたげな顔で頷いて返した。
二人の態度に美咲は少し考えて返した。
「分かった」
「じゃあ、早く食べていきましょうか」
「そうだな」
美咲の了承を得て二人はいつもより急ぎ目に弁当を食べ始め、美咲も少し急いで弁当を食べた。
弁当を食べ終わった三人は机を元に戻して教室から出た。
廊下を雑談しながら歩いていると、図書室に辿り着いた。
三人は図書室に入って室内を軽く見渡してすぐに目的の相手を見つけた。
「蓮夜、あそこに座ってるわ」
「見つけるの早いな、美咲」
「ん、隣に座ってるのって……あ!?」
図書室の窓際に置かれた机の椅子に座って本を読んでいる蓮夜の隣に座っている少女を見て愛奈が何かを思い出した。
悠斗も愛奈と同じように隣の席の少女を見て困った顔で座っている二人を見てため息をついた。
二人の態度に美咲も蓮夜の隣に座る少女を見るが、美咲と同じくらいの髪の長さの黒髪の少女が座っていた。
美咲達からは顔は良く見えないが、僅かに見える横顔だけでも美里に負けず劣らずの美少女だということは分かるが、美咲にも彼女のことは知っていた。
「あの子って、確か学年主席の子よね」
「ああ、うちのクラスの八神智美」
「私達の知っている限りでは、間違いなく学校一の秀才よ」
「学校一の秀才……」
美咲は蓮夜の隣で教科書とノートを開いて真面目に勉強をしている智美を見つめた。
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