第3話 

 ここが江戸の玄関口、品川宿に羽代の行列が着いたのは羽代を発って六日目の午後まだ早い時間だった。

 支出を渋る加納でもこの宿場入りばかりは衆目の手前、手を抜くわけにもいかないと、奴を雇って木遣り歌を響かせながらの由緒正しい行列を編成した。だが、かえって変わり映えもなく目立ったところもない、地方の小藩としてはこんなものかと、可もなく不可もなくの評判は噂になることなく町の日常の中に埋没した。

 おりしも参勤の大名が次々と品川の宿を通り過ぎる頃合いで、有名な大藩の行列が次々に訪れるのであれば羽代のような小藩などその前座にぐらいにしか思われない。

 見方を変えれば、噂にならないということは失態もないということの裏返しでもある。

 余計な下馬評に惑わされ、只でさえ落ち着きのない羽代家中がこれ以上浮ついた空気になるよりも、と加納は宿入りの行列に満足のようだった。

 人数の嵩増しに羽代の江戸藩邸から呼び寄せられた人足と合わせて、江戸市中を通って羽代藩上屋敷に向かう行列の準備が到着してすぐ、休む間もなく始まった。

 

 品川宿は南北に長く伸びた宿場町である。おおよそ南半分が南品川と呼ばれて、大名行列の本陣となる建屋はそこにある。

 本陣の護衛は土地勘のある江戸藩邸の者達が主に勤めて、修之輔たち羽代の国元からやってきた者たちは本陣とは異なる建屋、隣に立つ脇本陣に集められた。そこで割り振られたのが、挟み箱や長持ちが道中に被った埃を払う雑務だった。


 修之輔が巾を浸すための水を盥に汲んでくると、手拭で道具を擦りながら外田たちがなにやらこそこそ話している。

「今夜は外に出られるのか」

「外田さん、やはり行くつもりですか」

「品川に来て飯盛り女の姿を見ずに江戸入りしたとあったら、道場の者達に示しがつかないだろう」

「儂らがどこに泊まらせられるかですよね。そのあたりのしみったれた宿屋の方が抜け出しやすい」

「まだどこになるのか、山崎から知らせはないのか」

「ええ。早く知らせてくれれば明かるい内に店の見極めもできるんですが」

「こりゃあひょっとして、加納様に警戒されているのかも知らんな」

「それでギリギリまで泊まる宿を教えてもらえないんですか。ありそうだ」


 どうやら決められた宿を抜け出して、女のいる場所で一晩を過ごそうという算段らしい。初日の遅刻も、道中の厳しい締め付けも、彼らはまったく気にしていない。こちらに声を掛けられても返事に困るので、修之輔は彼らに背を向けて他の道具の手入れを始めた。


「秋生はいるか」

 脇本陣の入り口から、山崎が修之輔を呼ぶ声が聞こえた。外田たちが今か今かと待っていた山崎は、だが彼らには目もくれず、どたどたと相変わらずせわしない足取りで修之輔の近くにやってきた。

「本陣からのお召だ。あちらに出向いて、指示に従え」

 突然の指示だったが、頷いて、けれど何の仕事かと尋ねると、知らん、とひと言だけ返ってきた。

「いや本当に儂も知らんのだ。ただお前を呼んで来いとだけ伝えられてな。そこそこ急ぎのようだったから直ぐにここを出ろ」

 そう云われて修之輔は襷を外し、羽織を手にした。山崎が外田たちに振り向いてその顔ぶれを見回す。

「お前らが今晩寝るのはこの脇本陣だ。入口は江戸藩邸の者が武具を以って出入りを見張っているから、そうそう外に遊びに出ようとは思うなよ」

 そんな山崎の言葉に外田たちが上げる落胆の声を背中に聞きながら、修之輔は脇本陣を出た。外はまだ明るく、夕方にも早い。何の用事だろうか。


 隣の本陣の玄関で名を名乗ってしばらく待つと、道中、言葉を交わした藤木という用人が出てきた。修之輔本人かどうかを確認するためらしい。脇に立つ見知らぬ者に、秋生で間違いない、と告げた後は、他にも仕事があるのか、足早に本陣の中に消えていった。後に残った知らない顔は羽代江戸屋敷に勤める者だという。

「刀はここで預かる。余計なものは持ってきていないな。不審なものを本陣に持ち込めばその場で罰則もあり得る」

 いきなり厳しい口調でそう告げられて、修之輔は腰の刀を相手に渡した。付いて来い、という相手の言葉に従って本陣の建物奥へと歩を進める。人の行き来の多い廊下の突き当り、ここに入れと足を踏み入れたのは、六畳ほどの部屋だった。中には女中が一人いてこちらに頭を下げている。背中で襖が閉じられて、部屋の中、修之輔は女中と二人きりになった。

「なにか仕事があると聞かれて呼ばれたのだが」

 訊ねた修之輔の言葉には応えず、女中は部屋のもう一つの入り口、木戸になっている面を指して修之輔に指示を寄越した。

「あちらに湯が用意してありますので、お体を清めて下さい。必要ならば私が手伝います」

 まったく状況が呑み込めないし、仕事の内容も何も分からなかった。だが羽代の本陣で命じられたことに逆らうわけにはいかず、戸惑いながら木戸を開けると湯の入った手桶が二、三個並んでいた。

「これを浴びるだけでいいのか」

 そう訊くと、はい、と女中が頷く。手伝いは不要、と断ると、女中は部屋を出て行った。

 なにかに化かされたような心持のまま、確かに体についていた道中の埃を湯で流す。置かれていた手拭で体を拭いて、脱いだ衣服を取ろうとすると、木戸の向こうから声が聞こえた。

「お着替えをご用意してあります」

 修之輔が木戸を開ける前に気配は消えて、代わりに新しい下帯に帷子の単衣、そしてこれも生成りの帷子の上下が用意されていた。ここに着てきた着物は見当たらない。柔らかな上質の麻布を身に着けて帯を結び終えると、先程修之輔を連れてきた江戸藩邸の者が部屋の中に入ってきた。平伏して頭を下げると、面を上げろ、と相手はいう。


「秋生、これからそなたにはご当主様の湯殿でのお世話を申し付ける。御気分を害されるようなことがあっても、ましてほんのかすり傷であっても傷を負わせたら切腹だと思え」


 羽代当主の湯殿でのお世話。

 つまり、弘紀の入浴の手伝いが修之輔に与えられた仕事だった。


 その後、その藩邸の者から一連の作業の手順を教えられてから部屋を出て、連れていかれたのは直ぐに隣の部屋だった。畳敷きの八畳ほどの部屋に修之輔一人が残されて、部屋の様子を見てみれば欄間の彫刻、襖絵の華麗さから、ここが大名にあてがわれる部屋の一つだと察せられた。 


 急な話の成り行きに、考えをまとめようとして頭の整理が追いつかないまま、先程修之輔が入ってきたのとは別の襖が開いた。麻の浴衣姿の弘紀が、こちらを見ても驚かずに軽く微笑んで寄越す。説明を求める修之輔の視線に弘紀が応えた。

「明日の江戸入りの準備で藩邸からの人員が足りなくなったのです。入浴ぐらい私一人でもいいといったのですが、当主がたとえ屋内であっても一人きりになるのは駄目だと。なので貴方を呼びました」

 弘紀はそう言いながら、自分の着物の帯を解き始める。

「急なことですがお願いします」

 弘紀は脱いだ浴衣を修之輔に渡した。修之輔がそれをたたんでいる間に弘紀は部屋の隅の襖を開けた。そこがどうやら大名用の湯殿の入り口で、修之輔は弘紀の後に従って湯殿の中へと足を踏み入れた。


 湯殿の中は蒸気で蒸されて、肌身のままで寒くない温度だった。檜でできた湯舟が湯殿の真ん中に置かれており、先程修之輔が使ったのと同じ手桶が、だがこちらは十数個も並んでいる。

 向かって右手が熱湯、向かって左手が冷水。先ほど付け焼刃で教えられた配置を思い出す。空いた手桶に熱湯と冷水を混ぜて温度を調整し、木製の座床几に座る弘紀の肩から背中に流し終えると、弘紀は立ち上がりすたすたと湯船に近づいて、湯の温度も確かめないまま、勢いよく湯の中に入った。跳ねた水滴が周囲に飛ぶ。教えられた手順では、湯船にはいる時には修之輔が手を貸すはずだった。

「湯加減はちょうどいいので、水もお湯もいれなくていいです」

 弘紀は湯船の水面を手で叩きながらすごく機嫌が良さそうだった。


 弘紀が湯船につかっている間、修之輔は手順通りに次の支度をした。弘紀はその様子を眺めてながら修之輔に話しかけてくる。

「黒河の修之輔様の家で、お風呂をいただいたことがありましたよね」

 ここで修之輔が口を聞いて良いのだろうか。姿は見えなくても気配を察することができる範囲に近習が控えているはず。けれど弘紀は小首を傾げて、修之輔に返事を促してくる。

「そうだな、家の風呂はたらいだけだったが」


 修之輔の住居にやってきた弘紀が盥の風呂を珍しがった。なので湯を沸かして入れてやったのだが、慣れない盥での湯浴みに、辺りに湯を撒き散らして湯がほとんど零れてしまって弘紀はただ濡れただけだった。そうして結局囲炉裏の火で体を温める羽目になった過日の出来事を思い出す。

 今思えば、盥の湯浴みに慣れていなかったのは、湯殿での入浴が弘紀の日常だったからだろう。三年も経っていないはずなのに、ずいぶん昔の出来事のように思えた。


 充分温まったらしく欅の湯船から上がった弘紀に、新しい麻の浴衣を掛けて肌から湯を吸い取った。濡れた浴衣を脱がせると、弘紀が先ほどの床几に座る。覚えさせられた作法の手順通りに、弘紀の方が率先して動いてくれるので修之輔が迷うことがないのは有難いのだが、先ほどから弘紀が物言いたげにこちらを何度も見上げてくる。


 修之輔が糠袋ぬかぶくろを湯に浸してから弘紀の後ろに膝立ちになると、弘紀が右腕を上げる。伸ばされた右腕を肩から手の先まで、糠袋で軽くこすっていく。右が終われば左。左が終われば背中。手順通り、弘紀の体を洗っていく。


 背中を洗い終え、弘紀の肩から湯を掛け流していると、いきなり腕を掴まれた。


「背中の後は、前もそれでこすって下さい」

 それは教えられた手順になかったことだった。修之輔の腕の中、弘紀がこちらを見上げてくる。濡れて光る黒曜の瞳。その目には、どうしても抗えない。

 修之輔は弘紀の肩の上からその腹側に腕を回した。手に持った糠袋で胸から腹へと擦っていくと、弘紀は上体を修之輔に預けてくる。修之輔の指が脇腹に微かに触れただけで弘紀は強く身を捩った。

「……下の方も」

 そうねだる弘紀に、分かったから下帯を外すように、と修之輔が云うと、弘紀が腰を浮かせた。

「濡れているから、自分では外しづらい」

 甘えた声音で訴える弘紀の声を間近に聞きながら、修之輔が弘紀の下帯を解いて外した。あらわになったそこを、内腿からなぞり上げるように洗っていく。

「いつもはこうして誰かに洗わせているのか」

 弘紀の濡れている体を片腕に抱き支えながらそう尋ねる。

「いいえ、自分で、洗っています」

 弘紀の答える声は掠れて、息が乱れ始めている。


 糠袋の柔らかな、けれど肌を研ぐ布の感触。内腿に沿わせた手で弘紀の足を広げさせて、糠袋を持った手で体の中心を丁寧に擦る。上下にゆっくりと、緩急をつけながら。そして時折それを糠袋で柔らかく包み込むように擦りながら、細やかに刺激を加えていく。

「もう少し、先の方も」

「もっと、速く」

 喘ぐ弘紀の出す指示に従いながら刺激を続けていくと、弘紀の腰が前後に震え始めた。鼻にかかる甘い声音が断続的に漏れて、修之輔に手を止めないよう求めてくる。濡れる糠袋から垂れる白い雫、明るい日の中に見る弘紀の濡れた肌。修之輔が一段と力を込めてそれを握ると、弘紀は背を逸らせてその先端から白い体液を放った。


 弘紀の息が整ってきた辺りで、すこし温めの湯を背中から掛けた。快楽の余韻は目の端の赤さだけ、その他はいつも通りの口調、態度で弘紀が振り向く。

「えっと、修之輔様も、します?」

 

 躊躇なく断ってその場を立ち、弘紀に新しい浴衣を持ってきた。

「いいのですか?」

 手拭で軽く弘紀の体の水気を拭き取っていると、弘紀に重ねて聞かれた。

「湯殿の世話が終われば速やかに出てくるように言われている」

「それは屋敷の者の指示ですか」

 修之輔がうなずくと弘紀が眉を上げた。

「貴方はほんとうに上役からの命令に忠実ですね」

 その声に呆れた響きが滲む。

「私が羽代の当主です。貴方は私のいうことだけに忠実であればいいのに」

 浴衣の前を合わせながら湯殿を出る弘紀の後について行こうとして止められた。

「汗、かいたでしょう。風呂を使っていってください。江戸屋敷の者には私の方から言っておきますので」


 水蒸気に蒸されて全身に汗をかいていたのは確かで、けれど弘紀がいなくなった広い湯殿の中、手桶の湯を浴び、一人湯船につかっても落ち着かない。修之輔はすぐに湯から上がって、さっき弘紀の体を拭いた手拭で自分の体も拭き、水気と汗に湿っているが先ほどまで身に着けていた帷子を持ち上げた時、湯殿の戸が少し、開いているのに気がついた。

 向こう側の床に乱れ箱が置かれている。もしやと思い戸を開けると、乱れ箱の中には修之輔がここに来るまでに着ていた自分の着物が畳まれていた。


 湯殿の外の畳敷きの部屋で身繕いを済ませて本陣の表に向かう。特に何も声を掛けられることなく、玄関番に名乗ると刀が返された。湯を浴びてきたから皮膚が清められて心地いいのは確かだが、現実味を欠いて足元がどこかふわふわと覚束ない心地がする。

 本陣の門を出ると品川の町は既に夕暮れの気配だった。街道沿いに何軒も並ぶ料理屋の二階から、客の影を映しながら明かりが零れて、三味線の音も聞こえ始めている。本陣にいたのは一刻ほどだったのだろう。


 修之輔が脇本陣に戻ると、玄関に居座っている山崎に今夜宿泊する部屋を指示された。

「いつ、何の役目で呼び出されるか分からん。部屋で待機しているように」

 そう伝えてから、山崎がふと、こちらの顔を覗き込んできた。

「秋生、どうした。珍しく反応が鈍いな。疲れたか」

 聞かれて、確かに自分の反応が一呼吸遅れていることに気がついた。

「ああ、そうかもしれない」

「部屋にさえいれば仮眠していても大丈夫だ。夜まで休んでいろ」

 山崎に促されて決められた部屋に入ると、まだ相部屋になる者は来ておらず中は暗かった。廊下の灯明から火を借りて部屋の明かりを灯し、刀を帯から外す。


 今、手に持っているのは弘紀から貰った揃いの刀。艶やかな黒漆は橙色の灯りを受けても微かに青白い光を零す。ふと、何気なしにその滑らかな鞘を指でなぞって。


 途端、先程の湯殿で触れた弘紀の肌の感触を思い出した。


 いつもより滑らかなその手触りは、全身に湯を浴びていたから。水滴を弾く皮膚。夜の灯りにしか見ていなかった弘紀のその体を、明るい日の明かりで見たのはさっきが初めてだった。


 黒河では、弘紀は周りに比べれば健康的な肌の色に見えたが、羽代の家中にあっては薄い方だということを修之輔は羽代に来てから知った。首筋から肩甲骨の間の皮膚で水滴が消えるのは産毛があるからで、いつも弘紀の首筋を撫で、唇を這わせるときに修之輔の鼻先をくすぐっていたのがその産毛だったというのも、さっき気づいたことだった。


 背中の真っすぐな筋、肩の肌の張り具合、脇の皮膚の薄さ。弘紀の健康な肌を水が滑り落ちていく。

 糠袋で傷つけぬよう、そっと擦った胸の小さな突起のまわりはそこだけ薄紅い。その色合いをはっきり見たのも今日が初めてだった。糠袋から染み出す白く濁った湯がその上を垂れていく。反対側のそれは空いている手の指で捏ねるように撫でて、摘まむ。

「あ……、んぅ」

 弘紀の声の幻が耳元で再現される。


 腹の皮膚の滑らかさ、脇から触れる骨の硬さ、そして、腹を打つように立っていた弘紀のそれ。あの色。先端から溢れた透明な液体が、湯とは別の質感でそこを濡らしていた。

 あれをもう少し見ていたかった。糠袋で加減をしながら擦ると、それは赤味を増して膨らんだ。その先端を弘紀が望むままにゆっくりと撫で回し、脈打つ茎を握りしめて。糠袋越しでなくせめて指で直接、できれば口づけて、目でその形を確かめながら舌で愛撫を加えたい。濡れた音に羞恥と快楽を煽られた弘紀が、その唇から思わず漏らす快感の喘ぎをこの耳で聞きたい。

「もう……、もう、出る……から!」


 身を捩って修之輔にその濡れた体を押し付けてきたあの感触。掌の中のあの律動。

 あの場で弘紀の誘いに乗って、出したばかりの体液の残渣が残る湯殿の床にあの体を押し倒していたら。きっと弘紀はその黒曜の瞳を潤ませながら、自ら両脚を開いて修之輔を受け入れただろう。

 互いに濡れた肌を重ねて、湯の蒸気に息を詰まらせながら奥まで何度も体を繋いで。


 あの時、弘紀の誘いに乗っていれば得られた快感を思って胸が灼ける。

 せめて今、触れられなくても、弘紀の傍に。あの体の温度を感じられるぐらい近くに。


 唐突な焦燥に駆られて立ち上がり、襖を開けて廊下に一歩足を踏み出し。そして、本陣に近づくどころか脇本陣の出入り口を番兵が固めている、と云った山崎の言葉がよみがえった。目線を落とし、意味もなく廊下の木目を目で辿り、そして部屋の中にもどるしか他になかった。


 しばらくして、襖が勢いよく開き、小林と、あと数人が部屋に入ってきた。急に辺りが騒がしくなる。

「秋生、同部屋だな。外田さんは山崎と同室で、外に出ないよう首根っこを掴まれたみたいだぞ」

 そう笑いながら小林は部屋の中に腰を下ろして、そして修之輔の様子に首を傾げた。

「どうした秋生、元気がないな」

 先程、山崎からも聞かれたその問いに、同じ答えをかろうじて返した。

「なんでもない。いや、少し道中で疲れたのかもしれない」

「大丈夫か。今晩、これから見回りが当たっているぞ。そんなに遅くない時間だから、終ったらすぐに寝ればいい」

 羽代家中の人使いの荒さは江戸に来ても変わることがない。だが、今の修之輔にとって少しでも湯殿の記憶から気を逸らすことができる任務は有り難いものだった。

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