第五十五話 依頼完遂と拠点購入計画

 瞬間移動で王都に戻り、そのままパーゼマン商会へ直行する。遅くなると、店が閉まっちゃうかもしれないからね。ちなみに、アニとアルトにはちょっとした買い物をお願いして別行動だ。

「ありがとうございました。」

商会の中にあの大量の木箱を置くスペースは無かったみたいで、こっちも店の裏に置くことになった。このまま置いておいたら盗まれそうだけど、すぐに移動するから平気らしい。

「今回はこっちにも収穫があったし、気にしなくていいよ。依頼料も貰ってるわけだし。じゃあこれにサイン貰える?冒険者ギルドに提出しなきゃいけないらしくて。」

依頼を受けたときにギルドから渡された書類。これにサインをもらうことで、依頼達成となり、報酬を受け取れる。魔物の討伐とかだと、死体の一部とかを持ち帰れば達成した証拠になるけど、こういうタイプの依頼は証拠が無いと言えば無いから、サインをもらうってことになってるんだと思う。報酬に関しては依頼を出したときに依頼者側がギルドに預ける仕組みになっていて、これは依頼料を踏み倒されないための措置だって言ってた。依頼を完遂したのにサインを書かないなんてことが過去に起こったみたい。

「依頼完了のサインですね。…はい。これで大丈夫ですか。」

一応確認する。特に問題はない。

「うん。大丈夫。」

「そうですか。よかったです。お早い仕事でこちらも助かりました。」

「じゃあ私はこれで。」

「はい。この度は本当にありがとうございました。」

こんなわけでケルベロスに続いて、二つ目の依頼を完遂した。



 買い物に行っているアニとアルトはそれが済んだら先に宿に戻っていいって言っておいたから、特に合流するわけでもなく、宿に戻る。帰り道に冒険者ギルドに寄ってサインをもらった書類を提出するのも忘れない。その後は宿の部屋へワープするだけだ。

 部屋に戻ってもまだ二人は帰ってきていない。思ったより時間が掛かってるみたいだ。よく考えると、久しぶりに一人きりの時間かも。旅に出てからは、ずっと誰かがそばにいたからね。まあ、一人になったからと言って特にすることもない。新しい魔法でも考えてみようかな。どちらか言うと、攻撃魔法よりも、日常で使える魔法を増やしたいところだ。今日創った望遠魔法みたいなやつだね。こういう時はあったら便利なものを考えるといい。欲しいのはやっぱり状態維持の魔道具だよね。だけど、同じ機能を魔法で再現するとなると難しい。仕組みが分からない物はどうしてもイメージしにくい。望遠魔法は文字通り双眼鏡をイメージして創ったし、マッピング魔法は前世でやったゲームの中の機能を再現した。逆に攻撃魔法は創りやすいんだけどね。どんな風に魔法が発動するかをイメージするだけでいいから。この際、状態維持はあきらめて、温め直したり、冷やしたりする魔法を創った方が早いかも。状態維持の魔法具と違って、汎用性はないけど、食べ物に関しては、美味しく食べるためって考えれば差はあんまりない。まあ、とりあえず作ってみるか。まずは温める魔法。イメージは電子レンジかな。トリガーはまあ魔法名でいっか。よし。試してみよう。昨日買った蜂蜜パイがあるし、ちょうどいい。確か五日後までなら食べられるって言ってたし、まだ全然平気だ。

「加熱魔法!!」

うん。十分温かくなったね。これなら十分使えそう。なんなら攻撃魔法にも転用できそうだ。

次は冷却魔法だけど、さすがに蜂蜜パイに使うわけにはいかにから、水にでも使おうかな。ちゃんと出力を調整できるようにしないとカチンコチンに凍っちゃうから注意しないと。ちょっとイメージが難しいけど冷蔵庫のイメージで…

「冷却魔法!!」

コップに入れてあるだけだから、見ただけだと冷えてるかわからないから触れてみる。うん。ちゃんと冷えてるね。ここまで冷えた水を飲むのは久しぶりだ。これも攻撃魔法に流用できるね。水魔法と組み合わせたら凶悪コンボになりそう。

 温めた蜂蜜パイを食べながらまったりしていると、アニとアルトが戻ってきた。

「ただいま戻りました。これ、頼まれてたものです。」

アニから渡されたのは便箋。これを買ってきてほしいと頼んだのは私だ。便箋といってもただの便箋じゃなくて貴族に送っても大丈夫なような高級な物だ。

「それ、何に使うの?」

アルトがそう聞いてくる。便箋なんだから、そりゃあ手紙を書くためだけど、聞きたいのはそういうことじゃないだろう。

「使うっていうか使うかもって感じかな。」

絶対に使うとは今の段階だと分からないけど、もしかしたら必要になるかもってかんじだ。

ある意味二人次第でもある。

「これを使うかどうかは二人次第なところもあるんだけど…」

「あたしたち次第?」

「そう。私、ブルグミュラーに土地を買って拠点を建てようと思うんだけど、どう思う?」

この便箋はブルグミュラーの領主に送る手紙。土地購入の許可を得るための手紙だ。

「やっぱり、ずっと宿に泊まり続けるのは不経済だし、自分たちの好きにできる拠点が欲しいと思うんだけど…」

移動に関しては、ワープポイントを作っておけば問題ないし、やっぱり自分好みにカスタムできるのは大きい。そして何より、ブルグミュラーの町が気に入ったっていうのもある。スイーツも食べ放題だしね。

「いいんじゃないかしら。結構メリットもあると思うし。」

似たようなことを考えたのかアルトが賛同の声を上げる。

「私も基本的には賛成ですが、私たちは拠点を空けることも多いと思いますので、警備人員や使用人を雇う必要があるのではないですか?」

確かにそれは必要かも。警備はともかく、使用人は必須だね。拠点の管理に、身の回りの世話、頼みたいことは山ほどある。料理人なんかも欲しい。

「そうだね。そこは考えないと。まあ、まずは土地を買って拠点を建てるところからだね。いろいろ調べてみないと。」

土地購入をどこに頼めばいいか。拠点になる建物を建ててくれる場所も探さないと。拠点作りに向けてやることがいっぱいだ。

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