第三章 青のダンジョン攻略

第二十三話 ダンジョンの入り口

 今日は待ちに待ったダンジョンへ行くことになった。そんなわけで朝から準備に勤しんでいる。冒険者ギルドで簡単に情報収集してみたところ、私たちの行く青のダンジョンは階層構造になってるみたいで、どこまで続いているかもわかってないらしい。確認されているのは17層までってことだった。それに低階層のお宝は随分前に取りつくされてしまったみたいで10層近くまで潜ってようやくぽつぽつと宝箱が見つかるみたいだ。そうなると質のいい魔力炉を見つけるには結構深くまで潜らないといけないかもね。一応17層までの地図は売ってるらしいけど、銀貨30枚とだいぶ高額なうえにたくさんの冒険者からの情報を継ぎ接ぎしてるから正確さは保証できないと来た。こんなの誰が買うんだろうか…。そういえば最近買いものをするようになってこの世界の貨幣価値が分かってきた。銅貨が100枚で銀貨1枚、銀貨が100枚で金貨1枚、金貨が1000枚で白金貨1枚って感じみたい。白金貨はほとんど使われることがないらしい。領地内の予算とかそういうことで使われるみたいだね。日本円に直すと銅貨1枚100円、銀貨1枚10,000円、金貨1枚10万円ってところかも。白金貨はよくわからない。使ったこと無いし、使うこともないだろうし。でもこの世界、食べ物とか、必需品は随分安いから全くこの通りとはいかないけどね。金貨が数枚あれば何年か暮らせるって話だったからね。

 「じゃあ後は灯りの魔道具を買いに行ったアニを待ってダンジョンに行くだけね。」

灯りの魔道具なんて魔法を使えばいらないかもだけど、何が起こるかわからないから念には念をということで持っていくことになった。魔道具にくわしく触るのは初めてだからとっと楽しみだ。

 初めての魔道具に思いを馳せることしばらく、アニが小走りでこちらに向かってくるのが見えた。

「すみません。お待たせしました。買うのに少し手間取ってしまって。」

「何かあったの?」

「いえ、初めに入った店が品切れでして。少し遠くの店まで行ってたものですから。」

「そう。まあ買えたならよかったわ。」

そんなことを言う二人よりも私の興味はアニが手から下げてる袋の中の魔道具だ。

「アニ。ちょっと見せてよ。」

そう言ってアニから袋を受け取ると中に入っていたのはランタンだった。でもそれは形だけで、中には電球もろうそくも入ってない。魔道具だから魔力を使うんだろうけど、見ただけだといまいち使い方が分からない。

「これどうやって使うの?」

「これは私たちが自ら魔力を込めて使うタイプです。もともと魔力が込められているものもあるにはあったのですが、込められている魔力が少ないうえに、差額が大きかったのでこちらのタイプにしました。」

魔力が扱えない人たちの足元を見ている感じだ。商売ってある意味そういうもんだし仕方ない。

「なら魔力を込めたらもう使えるの?」

「そうみたいです。魔力込めて、電源をつければ明かりがつくようです。ただ、魔力炉は搭載されていないので、あとから魔力を込め直すことはできません。」

「となると、最初から多めの魔力を込めておいた方がいいってことだね。了解。」

もしかしたら魔力炉って充電池みたいなもののかも。灯りの魔道具は充電できないタイプの電池ってことかな。でも魔力炉があるとエネルギーの変換効率が良くなるみたいだし、一概に充電池ともいえないのかも。エネルギーを貯めておくだけじゃなくてほかにも役割があるわけだし。

「ちょっとハイデマリー!?魔力込め過ぎよ!!そんなに込めたら魔道具の方が耐えられないわ!!」

おっと、考え事しながら魔力を込めてたらやりすぎてしまった。

「ごめん、ごめん。」

一応、一言謝っておく。

「全く、注意しなさいよ。せっかく買ったのに壊しでもしたら元も子もないでしょ。」

それはそう。全く持ってその通りだ。

「でも、ある意味最大まで魔力を込められたってことですから、逆に良かったんじゃないでしょうか。」

アニのフォローが染み渡るね。

「意図してやってないことが問題なのよ…まあいいわ。じゃあ行きましょうか。」

目立たない場所に移動してから、私たちはワープした。




この前設置したワープポイントへと飛んできた私たちは早速ダンジョンの前まで来ていた。

「あれ、この前の…」

「どうも。」

受付というか門番というか、とにかく、ダンジョンの管理をしていたのはこの前と同じ人だった。

「無事に冒険者になることができたみたいだね。一応ギルドカードを見せてもらってもいいかな。」

三人してギルドカードを差し出した。

「やっぱりAランクか。君たちのことだとは思ってたけど…。じゃあ大丈夫だとは思うけど念のため簡単に説明をさせてもらうよ。」

「よろしく頼むわ。」

そんなことを言うアルト。アニは少し緊張しているのか表情が暗い。

「まず、このダンジョンは階層構造になっていて、下に行けば行くほど出てくる魔物は強くなるし、攻略難易度も難しくなる。階層ごとにボス部屋と呼ばれる部屋があって、そこにポップした魔物を倒せば次の階層へ続く階段が開かれるって話だよ。ボスは何度倒してもよみがえるから、ボス部屋に魔物がいないってことはないから注意して。そのボスが初めて倒される魔物…要するに18層からのボスだね。そうだった場合は、希少価値の高いアイテムをドロップするみたいだからそこにも意識を向けておくといいよ。」

ボスドロップで魔力炉を手に入れられるかもね。

「それにこれはすべてのボスで必ずドロップするものなんだけど、タグって言って、金属のプレートを落とすんだ。これはその階層のボスを倒したっていう証拠になる。新階層のボスを倒したってなれば冒険者ギルドから報酬が出るから持ち帰ることをお勧めするよ。」

ここまでの話を聞くと古代魔王軍の拠点だって話が現実味を帯びてくるね。各階層のボス部屋っていうのはこれ以上の侵入を防ぐために設置されたものだろうし、ドロップアイテムはボス魔物の装備品とか所持品だろうね。さっき言ってたタグは兵士が持つ認識票みたいなものだと思う。無限に復活するっていうのもどういう仕組みかはわからないけど、軍隊という面から見れば、これほど効果的なことはない。死んでもよみがえる兵士なんて敵からしたら脅威以外の何でもない。

「今説明することはこれくらいかな。ちなみに君たちはどのくらいまで潜るつもりなんだい?」

「とりあえず行けるところまで行ってみようって感じかな。」

「そうかい。幸運を祈ってるよ。出来ればダンジョンから出るときに一声かけてくれ。生死の確認をしなければならない決まりなんだ。一週間経過しても出てこない場合は死んだと判断されるから注意して。」

面倒な。ワープで帰ったとしてもここに顔を出さないと死んだことにされてしまう。

「頭にとどめておくよ。」

その言葉とともに私たちはついにダンジョンへ初めの一歩を踏み出した。

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