あとがきの世界の物語――生きた僕の終わり

あとがきの世界の物語

 敵とは自分自身の生き方である。

 理想の先には他者をかならず傷つける。

「我」は人を笑顔にしない。

「自分」を殺す事で世界に拒絶されながらも歯車として回ることが出来る。


 回らぬ歯車に、世界は反応しない。空回り。

 空虚にもカラカラと無音に己の心に伝わる心臓の鼓動。


 どこにも居場所がない。ここには僕の役割はない。

 だから、旅をしよう。どこか必要としている住処を探して、夢を見る。


 敵を探して旅をする。夢を見る。世界は大きいが、どこもかしくも満室だ。

 だから、誰かの居場所を奪いたい。


 鬱の波は強くなる。人間の目線も冷たくなる。


 怪物、怪物。

 人間は怖い。

 私は怪物。

 人間じゃ無い。

 人間は普通。普通は当り前。

 当り前が出来ない私。

 私は誰? 人間?

 僕はいつも人間から始まる独り言を呟くと、訂正する。

「ああ、わたしは人間じゃない」


 人になれない。普通にはなれない。

 人になれないなら、世間は死ねと言葉を告げる。


 何も知らないのに、私達を知らないのに、死ぬ事を望んでいる。


 だったら、早く殺してよ。

 苦手なタバコも酒も無理して、受け入れるが、死は訪れない。


 夢の中で毎日、お化けが見下ろしている。


 限界は来ているのに、まだ壊れない。

 頑張っている。耐えている。傷だらけになる。


 目も見えず、耳も聞こえず、発音もままならない。思考が欠如。


 包丁で腹を刺せ、キッチンにあるのに握らない。

 卑怯者、卑怯者、卑怯者。


 怪物は生きるな、死ぬな、どうしろと? 

 答えを教えて、どうしたらいいの?


 人ではない私達はどうしたらいいの?


「死ねば良いのに――」


 世界人間はいつも答えを囁いている。



 僕はここから去るけど、僕に似た? いや、近い“存在”は逃げて欲しい。

 君たちは、居場所がある。僕がいなくなるから、一人分の居場所が空くはずだ。


 だから、死なないで欲しい。探して、見つけて欲しい。

 君たちにはチャンスがある。僕がここから消えてまで、守った居場所があるんだ。

 だから、繋いで欲しい。


 僕はここで落ちていくけど、君たちは落ちていくモノ達に手を伸ばして救って欲しい。

「諦めてもいいから、生きる為に、死ぬ瞬間まで、全速力で走って逃げろ! 殺されるまでは生きているのだ」


 あなた達は人間モドキだ。怪物は私だけで良い。


 さよなら。 

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