第5話 『傍観者の+と=Q』

「自分の阿呆さ加減に・・・・・・」

 ここで言葉をつまらせるのは何回目だろう。考えることも出来ず、ただ失敗ばかりの毎日で嫌気がさしてしまう。失敗しない日がないぐらい、私の日常は成功という言葉はありえなかった。

 例え、家でずっと何もせず寝ていたとしても、何もしなかった事が原因で後日に倍となって悲惨な結果を生んでしまう。

 踏んだり蹴ったりな人生。泣きっ面に蜂な現在進行形。どう転んでも地獄しかない私の日常は、神様の脚本によって、天空の人々にエンタテインメントを二十四時間放送しているのだろう。

 だから、私はいつも失敗したとき、何か嫌な事があると中指を天にかざすことがある。

 端から見れば、変人に映るだろうが私にはそうせずにいられなかった。

 本当に神様はいるのかなと皆、議論しているが私はいると思う。だって、神様がいなければこんな酷い人生を自然に発生するわけがないからだ。だから、神様はいると思っている。でも、これを他人に言ったら、「神様がそんな酷いことをするわけがない! それは悪魔の仕業だ」と否定される。

 でも、神様が良い奴とは限らない。そもそも、神様が悪い奴じゃ無いなんて誰が最初に言ったのだろう。だって、会ったことの無い人物に対して、悪いとか良いとか性格に判断出来るはずが無い。私達は聞き伝えでしか理解することが出来ないのだから。そんなものではダメなんだ。

 じゃあ、お前は神様に会ったのかと反論されてしまうだろう。そうだな、私は会ったことは無いが、神に会ったことがある人に聞いた事はある。

 その人は、私以上に神様から嫌われている人だった。なんせ、神様に両眼を奪われたのだから。私はその分、まだ五体満足だ。

 その人の名前は知らないが、旅をしているそうだ。自分の目が見えるようになるためにだから、まるでファンタジーな人物なのは覚えている。

 その旅人さんはあっちこっちに訪れては、不幸にも事件に巻き込まれるのだとか。

 それである日、私はその人から何か嫌な事があれば、クソッタレな神様共に中指を立てるんだと教えて貰った。

 それから、何か変わったかと言えば実際の所、わからない。

 そのおまじないで、嫌な事が増えたとか減ったとかは無かった。ただ、私自身の気の滅入りようが、少しだけ軽くなったような気がする。

「全く、どうしてこんなにも世界はいい加減なんだろうな」

 私は肺の奥から詰まっていた重っ苦しかった言葉がいっぺんに外側へ吐き出した。

 ああ、これが詰まっていた言葉だったのかと思えば、先程、私が何を言ったのか忘れていた。まあ、いいや。どうせ、またこんな感じで明日も呟いていくのだから。

 スマホの画面を操作すると、今朝のトップニュースがあった。

 体育館で子供を含む26名の人命が放火犯によって殺されたのこと。犯人は逮捕されたが、亡くなった被害者の一人が犯人の母親がいたそうだ。奇跡的にも一人だけ生き残ったものがいたそうで、なんでもその人物は過去に回復の見込みのない昏睡状態から目を覚ますなど、その他にも様々な偉業を達成し、まさに幸運の少年と言われている。

 ここまでの事から、彼は神様から愛されている人物なのだと思いたくなる。私もどうやったら、神様に愛されるのかを聞きたいぐらいだ。

 でも――それよりも、何より、この放火犯の不幸にはどこか同情してしまう。例え、自分の親を殺してしまったとしても、犯人に対して何か言葉や実際の心境を知ったとしても、理解することが出来ないぐらいの不幸があったのだろう。

 まだ私にはそこまでの不幸は起きていない。

 そう思うと、私の「不幸」や「失敗」や「恥」はまだ煮詰められていないのかもしれない。神様にとって、前座レベルの余興なのかもしれない。

 神様とは、なんて罪作りな人物なんだろう。なんで、誰もが喜べる世界にしていかないのだろう。今も昔も地獄のような世界で変わろうとしないのだ。

 いや、今いる世界こそが地獄であり、ここで生きている私達こそが悪魔なのかもしれない。

 だから、私のような神様から愛されない「人でない私達」は、この地獄で藻掻き苦しんでいる怪物や悪魔なのかもしれない。

 じゃあ、あの神様に愛されている幸運な少年は一体、この世界において何の意味があって存在するのだろう。

 悩んだ末に答えは既に出ていたのだ。

「この世界は、どうしようも無いくらい――他人と比べて憎しみ、妬み、罪を犯してしまうほどに世界の歯車が狂ってしまっているのに誰も直そうとはしない、いい加減な世界なのだから」

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