第三節 大広間にて
大広間にて その一
一九一八年 一一月 帝居地下 神殿内部
◇
案内係が
瑠璃家宮と娘が神殿内に入ると他の神官達や会員達も続いた。
宮森は列の最後尾に付き、少しでも長く外装を検分しようと試みる。
⦅神殿の外壁はまだ新しい。
建造されてから間もないと云う感じだ。
材質は
ありふれてはいるが、花崗岩は非常に硬く加工が難しい上に重量も
それにも
量もふんだんに使われているな。
人海戦術なのか最新の加工器具、
表面は深緑色で、
国産の御影石でこの様な物は、未だかつて見た事がない⦆
宮森は九頭竜会の持つ莫大な財力に唸らされはしたが、金に糸目を付けなければやれない事ではないだろう、とも思っていた。
⦅矢張り、特段異質なのは神殿前の門……⦆
彼はその事を頭の
外装の様式も宮森がこれ迄に見た事がないもので、矢張り多国籍、多文明の要素が混交している。
壁面には精緻だが不気味な
壁面を調べ尽くしたいと云う強い欲求に宮森は駆られたが、
後ろ髪を引かれる思いであったが、彼は仕方なく神殿内に入った。
――⁉
神殿内に入って直ぐ、一瞬だが猛烈な悪寒と潮の香りを宮森は感じる。
地下空間の気温と湿度は調整されている筈なのに、だ。
――生物の死骸が
――その怪物と眷属達によって、世界そのものすらも飲み込まれて往く――。
その様な
ここは常識がまるで通用しない未知の場所である、と宮森は痛感せざるを得ない。
神殿の入り口はかなり巨大で、内部の回廊も同様であった。
回廊の壁面に
装飾があったりなかったり、建材も御影石であったり
未完成なのかも知れないと宮森は判断した。
壁面には照明が等間隔で設置してあり充分明るい。
内部は電気も通っており近代化されている。
回廊を抜けると、そこには恐るべき規模の
これ程の大規模屋内
回廊の出口からは下方へと向かう幅広の階段が伸び、階段左右には階段席の様な場所が設置してある。
何故階段席の様な場所と表現するのかと云えば、一席あたりの空間が異様に大きく明らかに人間の
まるで身長八メートルから一〇メートルの巨人が座る為に作られた様な巨大座席が、階段左右に二十席以上も並んでいる。
大
若干だが装飾過多の
[註*マヌエル様式=建築様式の一種。
地球儀、ロープなどの航海に関する器物や魚貝類など、海に関する物をモチーフとした装飾が特徴的。
又、それらが過剰に施される傾向が強い装飾手法の一種]
宮森が装飾に目を向けてみると、柱や壁面には見物客に合わせたであろう
宮森は、目にした
⦅人と獣の合いの子の様なモノ……。
獣頭の他にも鳥頭、魚頭、蛇頭、
⦅甲殻類を思わせる鋏と円錐形の胴体を持ち、三つ目の頭部器官を持つ生物……⦆
⦅直立した樽状の胴体と
そして、それを襲う
⦅大勢の小人達と、明らかに現生の哺乳動物とは違う奇妙な獣……⦆
⦅人間が住めるとは思えない建築様式の街や城、正体不明の建造物、平原、山、川、海、太陽と月、未知の惑星とその配列……⦆
⦅異頭人、有角人、単眼人。
神殿と生贄の儀式。
天変地異と……戦争⦆
『浮彫の流れから行くと異頭人、有角人、単眼人は巨人で、小人達こそが現生人類と見て間違いないだろう』と宮森は断じる。
そして、
⦅
その
――人々より遥かに巨大、強壮であり、遥かに悍ましく忌まわしい怪物達……。
――その怪物達が、虫けらでも踏み潰すかの様に
――怪物達同士と、ソレを崇拝するニンゲン達が相争っていた。
――そして迎える……滅び。
気の遠くなる年月と密度で織りなされる文明の
為政者達が隠し通す世界の真実がそこには在った。
既に知っていたのである。
多野教授やこの国の太帝一族、恐らくは世界の権力者達も。
有史以前に何が在り、何がこの地上を支配していたのか……。
宮森は苦心して求めていた研究の答えを、心ならずも
その代償として、これまで
◇
大広間にて その一 了
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