第四節 つかの間の休日、そして仕上げ
つかの間の休日、そして仕上げ その一
◆
――
――水。
――色のない壁の向こうで誰かが笑っている。
――
――ゆらゆらとして固まらない。
――上手く形造れない。
――ウタが聞こえる。
――歌っているのはあの子か。
――あの
――あの
――ウタを聞いていると頭の
――せっかくカタチになれたのに。
――このままだと
――
――もう
――色のない壁の向こうに。
――こっちを
――
――壁の向こうからウデが伸びる。
――腕ではない、
――ああ、これで交ぜるのか。
――ちゃんと交ぜ切って貰えるのか気になる。
――――……あの子を助けてください。
――あの娘?
――あの児?
――――、
◆
――
――
――虹色の柱の向こうで誰かが泣いている。
――随分悲しそうだ。
――くらくらとして定まらない。
――
――
――
――あの
――あの
――
――せっかく産まれてくれたのに。
――このままだと
――
――もう
――虹色の柱の向こうへ。
――あっちを観ている。
――
――柱の向こうへアシが引っ込む。
――脚ではない、
――ああ、あれで啜るのか。
――残らず吸い尽くして貰えるのか気になる。
――――あの子を助けてください……。
――
――
――――。
[註*
白餡に砂糖や
見た目の美しさから『食べる芸術』と称される事も。
◆
一九一八年 一一月 宮森の自室
◇
『……リ、……モリ。
ミヤモリ起きろー、コノヤロー』
「…………う、うぅ~ん、ん? 明日二郎? もう朝?」
『朝っつーかもう昼前だぞ。
そんでもって肉声でてんぞ。
イイカゲン気を引き締めろ。
布団片付けたら飯食うぞ。
早くしろ』
『分かった、分かったからそう急かすな。
先ずは一服させろ』
宮森は明日二郎に言われた通り布団を片付け、明日二郎には取り合わずゴールデンハットを吹かし始めた。
何かを思い出したのか、
その光景を観ていた明日二郎は宮森の脳中で得意気に声を上げた。
『な、ダイジョーブだったろ?
お前さんを起こさずに処理してやったぜ。
だから、一服したら直ぐに飯だぞ』
『あー女将さんと顔合わすの気まずいなー。
誰かさんの所為でー』
『終わったコトをネチネチと
三日前出逢ったばかりの筈だが、彼らの掛け合いは
ようやっと一服し終えたのか、宮森は
用を足し乍ら、昨夜の明日二郎の手並みにひと先ず安心した宮森であった。
炊事場からは良い匂いが漂って来ていて、居間に入った途端に明日二郎などは興奮し出す。
女将にどう言い訳しようかと気を揉んでいた宮森であったが、腹の虫に加えて頭のムシまで騒ぎ出しそれ所ではなくなった。
女将が炊事場から上がって来る。
「あら宮森さんおはよう。
「あのっ、女将さん……。
昨晩は大分酔ってたみたいで、よく覚えていないんですが、なんか変なこと言ったかも知れませんが……その、気にしないで下さい……」
「あはははは……な、なんかあったかね~。
意中の
「そ、そうでした。
振られたんでした、自分。
ご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした……」
「なんの、若いうちは当たって砕けろってね。
ん? 鯖の味噌煮、もうそろそろだね」
当たり
だが、隣で気分を爆上げする相棒には
◇
つかの間の休日、そして仕上げ その一 了
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