元魔王嬢の廃城(没含めた雑多)

 親愛なる、勇者にたおされたお父様へ。

 貴方あなたが残した大切なおう城ははいきょになりました。

 

 

 

 割れた窓がらのそばを歩いていく。くつにはじゃりじゃりとへんこすれた。

 つちぼこりれきだらけのろうに、時折にくへんが落ちている。かべにはぶきがくすんだ色合いで飛び散っていた。

 落ちているシャンデリアをふわりとえ、玉座の間に美しい少女が足をれた。

 

 きんぱつのツインテールがれているが、かみはくるくるとうずいている。リボン代わりのいばらみずみずしい緑色。

 強気な青いひとみはまっすぐ玉座をえ、紅緋の薔薇ばらドレスのすそがめくれ上がるのも無視して進む。

 黒のブーツで千切れた赤じゅうたんみにじり、小さな階段を上る。

 

 よごれた玉座であることも構わず、少女は堂々とすわる。

 まるで人形のように愛らしい少女だが、玉座の風格とそんしょくないふんかもしていた。

 

「オルニス! 出てきなさい!」

 

 りんとした声を張り上げた少女の前に、一人の男が現れる。

 瞳は銀色だが、かれに色をあたえるなら白がとうだろう。

 髪や背中に生えているりょうよくさえ白い。衣服だけが黒く、とう人形に服を着せたような姿だ。

 

「城のしゅうぜんは進んでいて?」

「見ての通りだ。一割にも満たない」

 

 てんじょうに空いた穴を見上げ、男――オルニスはいきいた。

 一日に十二回、一時間ごとに投げられる「しんちょくどうですか?」にうんざりしている。

 しかし口に出してしまえばかんだかい声で、数倍の八つ当たりを聞くしかない、

 

「このルコリッタ・アルラウネの居城でしてよ!? わかっているのかしら?」

「仕方ないだろう。人手が足りない」

 

 勇者と魔王が相打ちになって七年。

 元四天王の内、三名が死亡をかくにんされている。

 ゆく不明になった魔王にもはや求心力はなく、いまやぞくの間では天下統一をもくむ者たちあふれかえっている。

 

「それを集めてくるのが、貴方のお仕事ではなくて?」

おれはお前の護衛けんアドバイザーだ」

 

 冷ややかな返答に、ルコリッタは「ぐぬぬ」とうなごえを上げた。

 魔王のむすめかたきだけではそくせんりょくは集まらず、むしろ見下されているくらいだ。

 歴代最強とうたわれた魔王、その娘は弱い植物じんだと。

 

「ではアドバイスをよこしなさい! あとは私がなんとかします!」

 

 その言葉を待っていたかのように、白い男はにやりと笑った。


(いつか続きを書くかもしれない……かも)

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