夏休み編あたりで登場予定(誠の友情は真実の愛より難しい)

 アミティエ学園にひっそりねむる七不思議。

 数少ない女子トイレにしゅつぼつする幼女『トイレの花子さん』から、運動場を走る首なしランナー。

 理科室で実験をかえがいこつ標本、音楽室の電子ピアノを鳴らすきゅうけつ

 プールには白いスク水を着た美少女――と後半からはろんな内容になっていく。

 

 まず男子校で美少女のかいが出る時点で、しんぴょうせいうすれていくのだ。

 しかしこうしんおうせいな者はめようと、話の続きをせがむのである。

 

「の、残り二つは……?」

 

 スメラギ・ことの場合は好奇心というよりは心当たりがあった。

 初夏のころに見たなぞの指。女子トイレから出ようとしただれか。

 半ばじょうだんばなしのつもりで語っていた覗見としては、予想外の反応に少しまどう。

 

「えーと、残りは確か……家庭科室に現れるはさみかいじんでござったような……」

 

 放課後のろうを歩きながらの会話は、二人以外の耳には届かないはずだった。

 しかし七つ目を思い出せない覗見が足を止め、顔を青ざめさせる。

 

「どうしたの? ん……あれ……」

 

 ふらり、とみゃくらくもなく体がかたむく。

 そのまま力なくたおれた真琴の背中に、同じく気を失った覗見が乗っかる。

 気絶した二人を見下ろすかげが一つ。おかっぱ頭の幼女が、あきれたようにいきをつく。

 

「夏休み前に解き明かされては困るのよ。ぼうたち

 

 外見に似合わない大人びた口調で、赤いプリーツスカートをらす。

 かのじょの周囲に異形が集まり、世間話でもするように二人の始末を相談し始めた。

 

かいぼうしてもいい?」

 

 そう問いかけた骸骨標本は、真っ白な歯をかたかたと鳴らす。

 

「ちょうど吾輩のピアノを真っ赤にしたかったところだ」

できが一番事故として処理しやすいわ」

 

 とがったきばしためずりし、吸血鬼は笑う。

 怪異とは思えない現実味を帯びた意見を口にする美少女は、白いスク水から垂れるすいてきを気にかけていた。

 

「――」

 

 声にならない言葉で話す首なしランナーに、幼女はゆっくりとうなずく。

 

「ええ、そうね。いつも通り放置よ」

 

 数名からこうの声が上がったが、幼女はひとにらみで全てだまらせる。

 

「いいのよ、もしも七つ目を知ったら――好きにすれば」

 

 あっのようないんさんみをかべ、くすくすと笑う幼女が消える。

 それに呼応するように鋏の怪人が鋏を鳴らし、不気味な笑い声が合唱となる。

 

 二人が目を覚ましたのは保健室。なにを話していたかも忘れ、宿舎へと帰る。

 その足取りはどこか機械めいており、ひとみさえもぼやけた光を宿していた。

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