当時先行で公開した最新話(色欲編8話として更新済み)の一部(バシリス・クライム)

※(これは別口で編集しているため、実際に公開された内容と少し違う形になっているかもしれません)


 ニアミスと言えばいいのか、ニアピンなのか。

 くるるクルリの電話を終えたおれらの耳に、別の着信音。

 そしてあせった青路シュウの声が電話口からひびき、ふじさんがろうばいしている。

 

 聞き耳を立てる俺――雑賀サイタと、その他二名。

 カナメママはゆうすわったままだが、多々良ララはいつでも動けるようにちゅうごし姿勢だ。

 

 青路シュウの家にどろぼうが入って、きょうだいがいが出たらしい。

 そのことで警察を呼んでほしいとか、ふたたちの保護をたのんでいる。

 なにを急いでいるのか、あっという間に通話がしゅうりょう。混乱している藤さんが残されてしまった。

 

「サイタ、アタシ達はどうする?」

「そこで俺にるなよ……」

 

 鏡テオもゆうかいされたらしいし、大和やまとヤマトと天鳥ヤクモは夕方以降にしか動けない。

 あのねこみみろうが引きこもらずに外出すれば、まだマシなんだが。

 

「あー、ちょっと待て」

 

 考えろ、俺。なにか大事なことが置き去りになっている。

 ここに来た意味がなくなる前に、それをめなくてはいけない。

 事態が混迷している。きっとまたやばい目にう。そんな時に立ち位置をかくにんするには――。

 

「藤さん!」

「は、はい!?」

 

 警察への手配を準備しているダンディに、申し訳ないが声をかける。

 俺が青路シュウに出会って数日。いっしょに過ごした時間は半日にも満たない。

 そこへわくの事件がぶっまれている。それが薔薇ばらとげみたいに深くさるから、このかんは消えないのだろう。

 

「シュウが本当に父親をとしたと思いますか?」

 

 多分、本当の答えを知っているのは本人だけかもしれない。

 だから藤さんに聞いても、それは確証には至らない。

 けれど俺がほしい答えは、単純だ。

 

ぼくはそう思いません。シュウくんは家族おもいのいい子ですから」

 

 じゃあ、それでいい。

 俺が勝手にその答えを信じるだけだ。

 この気持ちが裏切られる結果が待っていても構わない。

 

「教えてくれてありがとうございます! 俺達はテオを探しにいきます!」

「わかりました。ご武運を」

 

 なんかもう焦っているからか、藤さんのげきれいが少し変だったが悪くない。

 カナメママにもおをして、俺と多々良ララは店から出る。

 気づけば太陽がかたむいて、夕方のセールが始まる時間帯になっていた。

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