女の独白(バシリス・クライム)

 夢を見る。

 幸せな、温かい、ほしかったもの。

 

 母たちが笑っている。父はやさしく頭をで、花畑に連れていってくれるのだ。

 妹と競争し、きたら花輪作りを始める。

 少しかっこうな花輪を、大好きな人が受け取ってくれる。

 

 そんなありえない夢を見る。

 私は永遠のように長い五百年、同じものをながめている。

 王子様がいつかやってくることを、あきらめるまで続く夢物語だ。

 

 童話のおひめさまのようになりたかった。

 愛される存在として生まれたかった。

 自由にこいをするおとみたいにかれたかった。

 

 私は黒鳥。きらわれる女。

 白鳥のようにゆうにもなれず、愛されることもない。

 運命の二人をくためのわな。愛を深める香辛料スパイス

 

 どんなにじゅんすいな気持ちをかかえても、私の恋はかなわない。

 ああ、童話もよごれればいい。罪におぼれた姫をえがこう。

 

 にんぎょひめはなんでごうまんなのかしら。

 声も出ないのに愛されると思ったの?

 

 シンデレラはしっぶかいのね。

 だまって家のそうをしていれば、へいぼんな愛を手に入れたかもしれないのに。

 

 ラプンツェルはたいね。

 とうから出ることもできないおくびょうさが、王子の目をつぶすの。

 

 しらゆきひめごうよくだわ。

 継母の愛さえも欲しいなんて、はなから無理な話よ。

 

 ねむりの森の美女は暴食なのね。

 一体どれだけの男をいばららったのかしら。それでも足りないようだけれど。

 

 おやゆびひめふんを知っているのかしら。

 泣いてばっかりで、流されて生きているわね。そのなみだはまるでかざりね。

 

 美女とじゅうの色欲ですって。

 まあ一番罪深いわね。でも他人のことは言えないわ。

 

 自分がいやになる。

 こうやってれいなものを汚して、満足する浅はかな女。

 だからじょなんて呼ばれてきらわれてしまうのね。

 

 だれでもいい、なんて言わないけれど。

 愛してほしい。

 なぐさめてほしい。

 やしてほしい

 

 私を――救ってほしい。

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