初代のとある思惑(ミカミカミ)

 それは私にとって当たり前で、天地をひっくり返すような事実でした。

 

「世界は丸い」

 

 ええ、知っています。教えてもらいましたから。

 星は丸く、そう作られたと。とある「目覚まし時計」が、世間話でもするように語ったのです。

 卵のように、えんばんのように。えがいてつなげると、あらゆる意味を内包するのだそうです。

 

 他にも色々たずねました。

 たましいのこと、せいれいが見えるちがいについて、星にあまねく元素の全て。

 しかしその知識は私が持つには早く、あまりにも時代がおくれていたのです。

 

 私は森に住むただの女。みょうも持たない、しょみんむすめ

 あたえられたもの全てをかすこともできず、静かな人生を終えるのだろうと思っていました。

 かれに出会うまでは――。

 

もんせいれいじゅつにならないか?」

 

 そんな役職名は聞いたことありません。くわしくたずねれば、やはり初代だと言います。

 王族の、王位けいしょうけんを持つ王子がどうして……何度も訪ねた彼を、私は追い返しました。

 けれどあきらめてもらえず、私はその役職を引き受けることになったのです。

 

 彼は不思議な人でした。

 とにかくへいぼんなのです。それがことさらみょうに映り、どうにもこうにもかれてしまうのです。

 私は「目覚まし時計」に相談しました。この道は正しいのかと。

 

「知らないよ。その答えは君が見つけることだろう?」

 

 いつもの調子であっさりと返事が来ました。私としても「確かに」という感想しかありません。

 しかし続けてこうも言ったのです。

 

「まあ人が正しく進むかぎり、たいていのことはくいくものさ」

 

 それは数多くの人をながめてきた存在にとって、ごく当たり前なのでしょう。

 星にねむりゅうを守り、その生命線――竜脈がこの世を満たし続けるためにも。

 その存在はこの世を生きた体を借りて、私たちの動向を見張るのでしょう。

 

「ユリア。君の運命はどうまわっていくのだろうね」

 

 いくら精霊が見えるからといって、そこまでは私にもわかりません。

 けれど少しでも多くの情報を後世に残し、だれかの土台となるならば幸いだと思います。

 別につうに生きるのならば必要のないものばかりです。しかし必要とする人は少なからずいるでしょう。

 

 知識は善悪を問いません。使い方にし、判断するのです。

 私が得たものは本に残しておきましょう。一文字でも多く、伝えられたならば。

 そうして誰かが見つけた時、すぐに解明できないように単語の細かい使い方に気をつけましょう。

 

 ほら、だって――解き明かすのって楽しいでしょう?

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