第二章 第八話 野草商店のトリッタ、魚料理の試作品①を作ってみる……!?

「さあ、試作品を作ってみますか……!」

「これが、今日の収穫の『マズイうお』!」

「でも、大きいけどね……!『アルミ箔』を用意します……! ここに、調理した『マズイうお』を置きます……!」

「ふーん!」

「ここに、『レモングラッシャー』と『スモモモモモモモモノウチ草』、『アソート香草』、『気分爽快草』、『八椒草の実』の、これらのレアなハーブを『マズイうお』に詰めます!」

「ほー……!」

「『岩塩』をパラパラっと……これで、『アルミ箔』を閉じて……!」

「それで終わりなの? 『左巻きゼンマイ』とか『右巻きゼンマイ』とか入れないの?」

「うーん、でも……!」


 レアなハーブの野草はこれぐらいだ。あとは薬味になる『マジカル草』と『ミョウ菜』があるが、これは少し頭がやられるらしい。


「でも、それにはゼンマイ系が打ち消すって聞いたけど、左巻きと右巻きどっちだったっけ?」

「何が?」

「うーん。少し心配だけど、『マジカル草』と『ミョウ菜』、『左巻きゼンマイ』と『右巻きゼンマイ』……を入れてみるか!」

「大丈夫なの? それって?」

「多分、『右巻きゼンマイ』と『左巻きゼンマイ』両方だから大丈夫! でも、あと『超右巻きゼンマイ』があると良いんだけど……!」


 あと、手元にあるのは、『超左巻きゼンマイ』だけだ。

 『超右巻きゼンマイ』で効果を打ち消せるのに……。

 その時、籠の中にある野草を見つけた。


「これは、『ソウデモナサ草』か……!」


『ソウデモナサ草』と、よく似た名前の野草が効果を打ち消す野草だ。

『ソウデモナサ草』の打ち消す効果は、それほどあるわけではない。

 しかし、採れた全部の『ソウデモナサ草』を試してみれば、『超左巻きゼンマイ』の効果は消えるかもしれない。


「よし! 『ソウデモナサ草』を入れよう! これで、効果が逆になるはず!」

「だから、何の話してるの?」

「これで、よし!」

「あ! 結局、野草が全部入ったね!」

「よし、これを、オーブンで焼きます!」


 それから、一緒にパンを焼いてみることにした。

 昨日の『野草パン』の生地が残っていたので、一緒にオーブンに入れて焼いてみる。

 その、十分後、『マズイうおの香草ホイル焼き』の試作品は、『野草パン』と一緒に出来上がったのだった。


「じゃあ、エッセルバート、食べてみて?」

「いただきます!」


 エッセルバートが『マズイうお』を口に運んで、咀嚼して、食べた。


「おお……おいし! グボハァ……!」

「ど、どうしたの! エッセルバート!」


 私は、美味しい『野草パン』を手堅く食べていたが、エッセルバートが突っ伏すようにテーブルの上に倒れてしまったので、大慌てになった。

 原因がわからないので、エッセルバートの食べていた『オイシイ魚の香草ホイル焼き』のスープをスプーンで少し飲んでみた。


「っ……『超左巻きゼンマイ』の効果は消えているけど、結局『マズイうお』くさみのせいで……!」

「やっぱり、『マズイうお』のくさみはレアレベルのハーブでは……!」


 今回は、レアレベルのハーブだけあって、くさみが少し緩和していたせいか、気絶まではいかなかった……! 一応は、レアレベルのハーブのお陰で事なきを得た……!


「じゃあ、気を取り直して、次の試作品だね! エッセルバート!」

「ああ、そうだね、トリッタ! また、みんなで釣りに行ってくるよ!」


 しかし、その頃、アイマイモ湖には異変が起きていた。

 青ざめたエッセルバートが、翌日の夕方に帰ってきて、それは明らかになった。


「ど、どうしたの? エッセルバート?」

「大変だよ、トリッタ! アイマイモ湖は、『マズイうお』しか釣れなくなってる!」

「えっ……!?『マズイうお』しか釣れなくなっている……? それは、少し、まずいんじゃ……?」


 バックグラウンドで起きている何かに、私は徐々に気づき始めていた。

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