第二章 第五話 野草商店のトリッタ、「犯人はお前だろォ!」というややこしい事態を知る……!?

 事態がややこしくなってしまった。

 エッセルバートは、仕方なくお城の若覇者に会いに行った。

『トリュフ草』を探せなかったことにして、代わりの品をどれにするのか、尋ねてくる手はずらしい。

 私はというと、前回で汚れてしまったプレートを庭で水洗いしている所だ。

 良く落ちるという洗剤を使って、プレートを綺麗にしていた。

 大事そうに仕上げにワックスで光沢を出して、ピカピカに磨き上げてみた。

 そんなことを、とろとろと何時間もかけてしながら、時折り空を眺めていた。

 向こうの方の雲が西の方に移動したそんなことを確認した昼過ぎのことだ。

 ごく自然に、飛行機雲が空に流れていた。

 そんな飛行機雲が一回転したかと思うと、段々と私の方に近寄ってきた。

 そして、逆光になっているそれは、徐々に私の前に舞い降りてきたのだった。


「あっ、エッセルバートお帰り……!」

「……」


 エッセルバートは、プレートからよたっと地上に降り立った。

 心なしか、足取りがおぼつかないような気がする。

 そして、疲れ切った顔で私を恨みがましそうに上から眺めていた。


「結局、料理対決を受けることになってしまった!」

「えっ、どういうこと……? カラス・ガインは、高級魚ばかり使うだろうから、2千Gの予算で料理対決するのは無理だって言っていたんじゃ……?」


 不思議そうな私に、エッセルバートは苛ついたように片眉をピクッと上げた。


「結局、トリッタのせいだけどね? 『トリュフ草』を届けられないなら、料理対決を受けるようにとのことだ!」

「メモを書き換えた犯人を見つけたら解決すると思うよ……!」

「……」

「エッセルバート、何……?」


 何故か、エッセルバートは暫く黙視してから口を開いた。


「……どう考えても、内部の犯行だろ? 一番疑わしいのはトリッタだよね?」

「えっ……! で、でも……!」

「ポリバ結署に行って、ポリバーに犯人を探してもらう?」


 ポリバ結署は、いわゆるこの異世界でいう警察署だ。

 ポリバーというのは、警察官のことだ。

 大体、そんな感じで、異世界も元の世界も良く似ているところもあるなァ、とぼんやりと思ったことを思い出していた。

 やはり、ポリバーに犯人を捜してもらった方が、スッキリと事が運ぶのではないか。


「そうした方が良いよ……!」


 ハハッとエッセルバートが笑った。


「でも、多分、トリッタが捕まるよ? 一番疑わしいのは、トリッタだからね!」

「はぁ……?」

「何故か、ここに居座ってるし、何故かいつも事態を難しくしているからね!」

「いや、でも……ああ、うーん……!」


 そういわれてみれば、疑わしいのは私なのではないか。

 前回も、メモの通りに野草御飯を食べたのは、私だ。

 そうして、勝てる勝負をややこしくした。

 今回も、メモの通りに野草を売ったのは、私だ。

 そうして、何故か事態がややこしくなっている。


『だけど、犯人が残した証拠のメモがここにあるんだけど……!』


 そう言おうとして、私はメモを見たまま固まった。

 何故か、言わないほうが良い。

 違和感と共に私を警告する何かがある。

 無言でメモを見つめる私に、エッセルバートがあっけらかんと言った。


「じゃあ、『アイマイモ湖周辺の土地』で、『トリュフ草』でも見つけてきてよ!」

「えっ?『アイマイモ湖周辺の土地』で……?」


 私は、メモからエッセルバートの方に目を向けた。


「そう! この間は、俺がそこで『トリュフ草』を見つけたんだよ!」

「それで、見つけたのを私が売っちゃったわけか……!」

「でも、目を皿にして全部取りつくしたから、もうないとは思うけどね!」

「う、うーん……でもあるかもしれないし……! じゃあ、行ってくるか……!」


 私は、『アイマイモ湖周辺の土地』に出かけようと、磨いたばかりのプレートに乗った。

 そのまま、私はエッセルバートからもらった地図を頼りに、そこに出かけて行ったのだった。

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