第十話 野草商店のトリッタ、洞窟の場所を教えてもらう……!?
『ウラノウラハオモテ山』にプレートで舞い降りた私は、早々と試作品三回目の野草を摘みにかかった。
まだ日が昇ったばかりで、野草は太陽の光を受けて朝露でキラキラしていた。
少し場所を変えて野草を探し始めた。
野草が、沢山自生している場所を見つけて、楽しい気分で採り始めた。
野草を摘み始めてから、一時間ほど経過した。
【『ウマミ草×3』、『オイシ草×12』を、みつけた!!】
「うーわ……! 『マジヤバ草』がこんなに生えてる……! 『マジキテ草』もこんなに……!」
滅茶苦茶美味しそうに生えているので、困ったものだと思う。
「……!」
たまに、野草商店にも切羽詰まった人がやってきて、こういう野草を買い求めようとしてくる。
「……!」
一般の人だったり、ちょっとしたお家柄の人だったりする。
通常では、そういう客人には丁重にお断りしたりする。
「やっぱり、この場所はこのぐらいしか生えていないか……!」
私は籠を片手に、考えを巡らせる。
「もう少し、香りが良いハーブのような香草のようなそういう野草が生えてると良いのに……!」
採れた野草の籠を手に、プレートを手に、踵を返そうとした時だった。
「クックックックック!」
「……!」
「マジで、『マジヤバ草』と『マジキテ草』がこんなに生えてるわァ!」
別段暑くもないのに、私の頬から汗がしたたり落ちた。
「めっちゃ取り放題じゃないのォ! マジヤバ! マジヤバ!」
「……!」
ゴスロリ姿の少女が、何故かその野草を摘んでいた。
私は、一瞬で判断した。
さっさとこの場から見つからないように退散しようと。
そっと立ち上がって、そそくさと来た道を戻ろうとした。
「なァに? 色々と取れてるじゃなーい?」
「……!?」
さっきのゴスロリの少女に見つかってしまった。
ゴスロリの少女は、私ににっこりと微笑みかけた。
「『マジヤバ草』と『マジキテ草』が見つかったのも、あなたのお陰かもねェ!」
「えっ……? な、何ですか……!」
「これ、お礼にあげるわァ!」
ゴスロリの少女は、私に何かを手渡してきた。
つい先ほどは、見つからないように帰ろうとした私だったのに、ゴスロリの少女にお礼まで言われて、こんなものまで――。
私は手の中を開いてみた。
「地図……?」
どうやら『ウラノウラハオモテ山』の地図を貰ってしまったようだ。
「ここの先には『チョットシタ洞窟』があるのよ! 見てみるといいわァ!」
さっと、地図の上をゴスロリ少女の指がルートをなぞった。
「えっ……! 『チョットシタ洞窟』……?」
「この『チョットシタ洞窟』には、『マジヤバ草』や『マジキテ草』のようなヤバい薬草じゃなくて、結構良い普通の野草が生えているから! じゃあねェ!」
そうして、ゴスロリ少女は帰って行った。
私は半信半疑で地図を見ながらプレートに乗っていく。
そうして、本当に洞窟を見つけてしまった。
「あった……! 『チョットシタ洞窟』だ……!」
私は、プレートをそっと、木の横に立てかけた。
「じゃあ、入ってみるか……!」
洞穴の中心部分には、ぽっかり穴が開いていて、太陽光が降り注いでいる。
洞窟というより別の空間のようで、木々まで生えている。
「ん……?」
木々の下を歩いて行こうとした私の目の前に、キノコが生えていた。
『ヨーグルの木』の下に、『ヨーグルキノコ』が生えているのを見つけたのだ。
「ヨーグルキノコか……!」
考え込んでいるのは、『ヨーグルキノコ』が食べれるキノコだからだ。
「そうだった……! エッセルバートが、野草パンのことで何か言っていた……!」
ニガアマ草は、入れない方が良いだとか。
野草パンのパン生地が、どうのこうのだとか。
「そうだ、ヨーグルキノコで……!」
【『ヨーグルキノコ』×1を、みつけた!】
私は『ヨーグルキノコ』を根元からもぎ取って、籠の中に入れた。
そうして、お目当ての香草を見つけた私だった。
「あっ、これは……!」
一時間で採れた野草はこれだ。
【『ピリットミカン草×5』、『ラリルレモソ草×7』、『バター草の実×8』、『七椒×8』を、みつけた!】
結構、珍しい野草ばかりで、かなり良い収穫となった。
その上に――!
「これは……! 本当に……!」
それから、物凄い野草を見つけた私は、そのまま笑顔で、プレートに乗って、シルヴィーン家に帰宅したのだった。
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