第九話 野草商店のトリッタ、野草パンの試作品②ができる……!?
「じゃあ、野草パンの試作品、その二を作るか……!」
まず、野草の『ウマミ草×7』と『オイシ草×7』をあく抜きに取り掛かった。
エッセルバートから忠告された『ニガアマ草×2』は今回は使わないでおくことにした。
「あく抜きしている間に、パン生地をこねるか……!」
私は、小麦粉の『ササメユキ粉』を適量計って、イースト菌の『イイスト菌』の粉末をさらりと掛けた。そして、『井戸水』を足しながら、程よい硬さに生地をまとめる。
「……! ……!」
渾身の力で、まな板にパン生地をぶつけながら、生地をこねて鍛え上げる。
「よし……! 次は、野草だ……!」
『ウマミ草は』、7。『オイシ草』は、7。
全て消費して、細かく刻む。
前回と同じく、茹でると量が半分程度になった。
「次は、『ザッコク草』のさやから『ザッコク草』の小さなビーンズを入れて……!」
『ザッコク草』は、3消費した。『ザッコク草』の残りは10だ。
「あとは、『シソシソの葉』と『バジバジの葉』だ……!」
これは香草なので、香りが引き立つように大きめに切る。
「これを、パン生地に練りこんで……と!」
まだ、パン生地を焼いていないので、香草の良い香りはしてこない。
「うーん……、一応、焼いてみるか……!」
そのままオーブンにパン生地が乗った鉄板を入れた私は、野草パン試作品その二を焼いてみたのだった。
オーブンで、じっくりと焼くと、野草の香草の良い香りがしてきた。
「……?」
私の頬から汗がしたたり落ちていく。
「アレ……?」
私は、またしても違和感を覚えずにはいられなかった。
思わず深呼吸してみる。
そして、またオーブンの中を覗いた。
パン生地がこんがりと焼けていて、ゆらゆらとした熱気が漂っている。
「よっと……!」
取り出すものの、エッセルバートの野草パンと、私の野草パンとの違いがはっきりと線引きされたかのようだった。
「やっぱり、違う……!」
私は、野草パンの二作目を一個手に取った。
その野草パンを、半分に分けるようにそっとちぎってみる。
ふっくらとした生地が、ゆっくりと解けていく。
しかし、線引きされたような違いに気付くと、それにも駄目出ししそうになる。
「はぁ……」
それに、野草パンのこの香りだ。
「確かに、味は一段と良くなっている……! けれども、エッセルバートの試作品には……!」
また、最初からやり直しだ。
野草パンの二作目は、それでも美味しかった。
私の空腹をすべて満たしてくれた、その野草パン50個よ。
満腹になっていた私は、キッチンで眠っていた。
「ふあ……?」
キッチンから窓の外を眺めると、朝日が昇りかかっている。
「あっ、いけない……! 眠ってた……!」
私は、ついこの間作った野草パン25個を焼き直して、朝食にした。
疲れがたまっていたのだろう。
野草パン25個を、すべて平らげてしまった。
「ふああ、アレ? もう起きていたんだね?」
「エッセルバート……! おはよう……!」
「おはよう、トリッタ!」
「じゃあ、また『ウラノウラハオモテ山』に野草を摘みに行ってくるよ……!」
「がんばってねー!」
「……」
キッチンで眠っていたのに、気付かないものなのかなぁ。
満たされた空腹のせいで、文句も出にくいが。
「あのさ!」
「え、何……?」
「野草パンのことなんだけど!」
「香草のこと……? 香草はもっと種類を集めてみるよ……!」
「香草はその方向で良いんだけど、もっとパン生地が美味しくなるものを集めたほうが良いよ!」
「パン生地、か……! うん、心に留めておく……!」
パン生地、パン生地、と思いながら、私はプレートに足を乗せた。
エッセルバートが見送る中、そのまま方向転換して、『ウラノウラハオモテ山』に野草を採りに向かったのだった。
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