第六話 野草商店のトリッタ、『ウラノウラハオモテ山』で探索する……!?
エッセルバートに、自分の持ち山の裏山、『ウラノウラハオモテ山』を案内された私は、三日で全ルートを覚えた。
「この辺は魔物なんて出ないの……?」
不安になって訊ねるのも無理はない。
『野草商店』がある私が住んでいたTエリアでは、山奥のほうだと結構な魔物が出る。
しかし、エッセルバートは、そんな私の不安を吹き飛ばすように答えた。
「この辺では、魔物なんて出ないよ。お城の駆除隊が何十年か前に活躍して、みんな魔物は絶滅しちゃったからね!」
「そうなんだ……! なら安心だね……!」
その時に、私の不安は吹き飛んだのだった。
パン屋『パン屋deパンパカパーン!』は、野草パンのレシピは門外不出だから教えないの一点張りで、お城上がりのシェフのレストラン『超絶天下~ナ・ラーヌ~』との対決は、一週間後に持ち越された。
つまり、あと四日で野草パンを自力で完成させなくてはいけないことになる。
「昨日までに、採れた野草はこれだけ……!」
【『シソシソの葉×3』、『バジバジの菜×5』、『ニガアマ草×8』、『ザッコク草×8』を、手に入れた!】
籠の中から、『ウラノウラハオモテ山』で採れた野草をシートを広げたテーブルの上に並べた。
「へぇー、結構野草って生えているもんだね!」
「一応、良さそうな野草だけ……!『シソシソの葉』と『バジバジの葉』は匂いが良いの。『ザッコク草』は、パン生地のアクセントに良いし、『ニガアマ草』は、甘いけど苦いから使えるかどうかは分からないけど、なんとなく選んでみたの……!」
私は野草商店を経営していたので、野草という野草は頭に叩き込んであるつもりだ。
だが、素人の野草ハンターなら、野草図鑑で確かめなくてはならない程、食べれる野草から、食べれない野草、ヤバい野草まで、色々あるので注意が必要だ。
「これで、できるか? 一応、試作品を!」
「じゃあ、私が一応試作品を……!」
「えっ! トリッタは、パンなんて作れるの?」
「うん、一応……!」
「一応、か!」
エッセルバートは何か言いたそうに私を一瞥した。
「あんまり期待してないけど。任せたからね。できたら呼んでね。ふあぁ……!」
エッセルバートは、勝負はもう目に見えていると言わんばかりに消沈して、自分の部屋に戻って行った。
「なんだ、あれ……!」
文句を言いたくて地団太を踏んだ私だが、既にエッセルバートは部屋に戻ってしまっている。
「さて、始めるか……!」
仕方なく、野草を洗い始めた。
野草といっても、山のひと気がない場所に生えているので、手つかずで結構きれいだと思う。
野草を何回も洗って、『シソシソの葉×3 バジバジの葉×5 ニガアマ草×8』をあく抜きする。
「あく抜きしている間に、パン生地をこねるか……!」
私は、小麦粉の『ササメユキ粉』を適量計って、イースト菌の『イイスト菌』の粉末をさらりと掛けた。そして、『井戸水』を足しながら、程よい硬さに生地をまとめる。
「……! ……!」
渾身の力で、まな板にパン生地をぶつけながら、生地をこねて鍛え上げる。
「よし……! 次は、野草だ……!」
シソシソの葉は、3。バジバジの葉は、5。
全て消費して、細かく刻む。
茹でると量が減ったかのように、僅かになってしまうので、全部入れてもそこまで多いというわけでもない。
「次は、『ザッコク草』のさやから『ザッコク草』の小さなビーンズを入れて……!」
『ザッコク草』は、3消費した。
「あとは、問題の『ニガアマ草』だけど……!」
これは、ニガいのかアマいのか、むしろアマいかニガいかどうかも微妙な味で、実際のところ料理に使ったことはない。
「うーん、失敗するのも目に見えているようだけど……!」
考えあぐねた私は、パン生地の50個の中の25個だけ『ニガアマ草』を入れて、野草パンを焼いてみたのだった。
オーブンで、じっくりと焼くと、野草の良い香りがしてきた。
「……!」
違和感を覚え私は、エッセルバートが作らせたひとかけらのパンを取り出した。
見た目も焼き加減も、絶妙なのに……?
「あれ……?」
焼きあがったとき、その違和感は顕著になったのだった。
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