第8話 ステータスって見れるんですね。

 幼女は泣いているが、何かしてやれる事もなく見守ることしかできなかった。


暫く幼女は項垂れていたが、額の涙を拭い無理矢理ほくそ笑んだ。


 目の縁を赤く腫らす幼女に、気の利いた言葉を掛けられなかった。


 くるしくも、泣いていた幼女を慰める術を現実で持ち合わせていない。


 「名前忘れられたくらいで、めそめそしてられますかってねっ?」


 『なっ…なんかごめんな。』


 こんな時、いもスカだったら勝手に二択の選択肢が表示される。


 それに画面の右上辺りにあるメニューを選択すれば、攻略対象ヒロインのステータスも一目瞭然。


 『ステータス…。』


 小太郎はボソッつぶやいた。


 『…?!』


 するといきなり目の前に薄氷の様な液晶画面が現れた。


その液晶画面に触ろうとするが、接触部分を手指が突き抜ける。


 (それよりなんだこの違和感は。)


 その画面を初めて見るというのに、不思議と液晶画面の操作方法がわかる。


 あたかも、既にそのもの自体を熟知しているように。

 

 メリィに目を向けると、液晶画面も視線について来た。


 画面越しにメリィが見えるが、変なウィンドウが頭から出ている。


 そのウィンドウには何やら日本語の文字が表示されている。


 「幼女のステータスを見る」


 俺は今、少し間抜けな顔をしているだろう。

 それもそうだろう。


 いもスカの恋愛シュミレーションゲームとRPGが合体したような世界。


 『どう考えたっておかしい。』


 ウィンドウを選択したら幼女のステータスが一瞬にして分かってしまうのだ。


名前、性別や性格、種族、能力値、経歴、好感度なるものが一覧に表示されている。


---------------

 <ステータス>

<名前> メリィ・ソクラテス

<性別> 女性?

<性格> 大人しい

<種族> 人造人間ホムンクルス

<知性> LV.5

<器用さ> LV.7

<魔力> LV.3

<好感度> LV.1

<攻略難易度> A+

 賢者メリクルスが、自身の所有する書庫の番人として錬金したフェティシズム満載の美幼女ロリエルフ自律型兵器となっている。

 身長は、152.7㎝。体重45.8㎏

 口癖は、「ご主人様。」

 服装は、メイド服か、ゴスロリ。

---------------



 『色々ツッコみたいが、好感度の低さ…。』


 小太郎は表示してある情報を一通り見た。


すると、メリィが顔を膨らませ睨んでいる。


 「そのっ…ご主人様。この後なんだけど、メリクルス様に会って来なさい。」


 『賢者メリクルスか?』


 「そっそうよ!記憶戻ったの?」


 『いやっ、そこのやつ見たから。』


 メリィは小太郎の指差す箇所を一瞥して、ため息をついた。


 「もういいから、お風呂入ってきて。ご主人様…獣くさい。」


 『俺…そんなに匂う?』

 メリィは静かに頷き、小鼻を摘んだ。


 『直ちにお風呂に入って参ります!』


 小太郎はベッドから飛び降りて、トレーに入ったシチューを完食した。


そのあと、メリィに用意してもらった入浴セットを持って、お風呂に直行した。


 『お風呂というより、温泉だなっ。』


 洋風の建物にはそぐわず、和風の暖簾に温泉のマークがある。


そして、暖簾は青でも赤でもない。紫色で「混」の文字。


 『怪しいなぁ…。』


 小太郎は不安をよそに、取り敢えず暖簾を潜り入った。


入ってすぐに脱衣所があり、温泉への入り口のような扉もすぐ確認できた。

 

 『早く入って、メリクルスに会おっと。』


 小太郎は脱いだ服を棚の籠に入れ、タオルも巻かずに温泉に向かった。


 『へぇ〜、豪華だなぁ。』 

 小太郎は広大な温泉内を見渡すと、体を洗い湯船に浸かった。


 『ひぇ〜、極楽ごくらくぅ〜。』


 「やっぱ温泉って最高よねぇ〜。」


 『何もの…でございましゅか?!


 小太郎は驚いたのか、しどろもどろになりながら言った。


 「やっぱり、忘れてるんだね。

ブレスきゅんはっ。」

 

 近くから声は聞こえてくるが、肝心の姿は見えない。


しかも、その声は無駄に妖艶で色っぽい。


 『あなたは一体?』


 「お姉さんはねぇ〜、んふふっ。

メリクルスって言うここらじゃ名の知れた賢者なのよっ。」


 『あなたが賢者メリクリュぅぶぶぶぅ…』


 小太郎は背後から飛びかかってきた人影に、湯船の中に蹴落とされた。


 何か当たっている。


 柔らかくて、とんがったもの。


 『おっぱすぅ!』


 「久しぶり…ブレスきゅん!」


 小太郎が抱きつかれている対象に目を向けると、そこには声色には似合わない風貌のメガネ少女がいた。


 『と…とりあえず離れてもらえますかぁ。』


 「んっ嫌です。」



 

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