第8話 テッカーナ
城塞都市テッカーナ。
円形の城壁に囲まれたこの都市は幾度となく魔物からの侵攻を阻止してきたらしい。
四方のうち北は海に面して拓けており、貿易も盛んだ。
って、旅人の入場門の衛兵さんが教えてくれた。
「うわ~、でっかい街だね~。」
エミがミカの服をぎゅっとつかみながら、
「こら、ミカ、あんまり馬車から身を乗り出すと危ないよ。テッカーナに無いものはないと有名よ。なんでも揃うんだって」
いいねなんでも!俺の新たなハーレムメンバーも揃うかな?
行き交う人々が笑顔で明るい雰囲気だ。
俺たちは冒険者ギルドに向かう。
ここで登録して、仕事と住処を見つけなくては。
ギルドの建物はとても大きく、セレナが見上げすぎてひっくり返りそうになった。
中に入ると、数多くの冒険者と思しき人たちがいた。
おお、戦士っぽい大剣を持ってる人や、三角のとんがり帽子をかぶった魔法使いのお姉さんとかいるよ!わくわくするなぁ!
窓口では、とてもキレイなお姉さんが担当してくれた。
緑がかった髪にピンととがった耳が、まるでエルフみたいだな…。
「いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ。ご新規さんですね。登録は5名様でよろしかったでしょうか?」
俺、セレナ、エミ、ルシール、ミカも一応登録しておこう。年齢制限はないらしい。
子どもでも冒険者になれる。ただし、後見人が必要。俺が後見人だ。
「冒険者ランクには5段階あります。新人は銅から、銀、金、金剛、虹の順です。
優秀な冒険者でも、金ほどです。金剛、虹となるとほんの一握り、ドラゴンなどの伝説級の生き物を倒したものだけが到達できます」
この世界にはドラゴンまでいるんだ…。
まあ、魔王軍がいるんだから、何がいてもおかしくないよね。
問題は俺がそいつらを倒せるかどうかだ…。
そしてダメ元で聞いてみる。
「5人以上が住める空き家はありませんか?」
「はい、ございますよ。冒険者限定価格で賃貸利用が可能です。あ、ただあんまり期待しないでください。管理はしてますけど、中の掃除まではしてないんです」
「十分です!!!!!」
やったぞ!幸先がよい!
野宿とか、もうやだ!ほぼ寝ずの番だったもんな…。
宿屋で5人だとすごい金額かさむし、助かった。
さっそくお姉さんに連れられて空き家に向かう。
ありがたいことにギルドからそう離れてなく、日当たり良好な4階建てだった。
え、大通りも近いじゃん、いい物件なのになんで安売りしてるの?
「実は…、幽霊が出るそうなんです。」
事故物件だった。
ちょっと、やめてよ。
お姉さんの語り口調もなんだかそれっぽいよ。
「4階は厳重に鍵がかかっていて、入れません。」
ええ、開かずの扉!?こわいんだけど!
「それでも住みますか?」
え、なんでお姉さんそんな怖い雰囲気だしてんの?
売る気あるの!?
「ふむ。いいんじゃないですか?」
なぜか真っ先に我が可愛い妹がOKを出した。
まだ内見してないんですけど!
「お兄ちゃん、幽霊なんて怖くありません。もしものときは、成仏させましょう?」
お、おう。
「そうだよヒデル、幽霊より怖いものはいっぱいあるわ。ここで決めちゃって、とっとと中を掃除しましょう。」
エミがお姉さんから鍵を受け取り、入口を開けて中にずんずん入っていく。
「お姉ちゃんまって~。」
パタパタとミカまでついて行ってしまった。
「ヒデル様、どういたしますか?」
ここまで黙っていたルシールが聞いてくる。
「う、うん。幽霊くらい倒せるよね。ここにします。」
「毎度ありがとうございます。何かありましたら、わたくし、ヒデル様の担当のビエッタまでお越しください。ではごゆっくり。」
ギルドのほうに戻っていくビエッタさん。そっか、ビエッタさんっていうのか。
いいな、エルフ。ハーレムに受付のお姉さんを狙っちゃダメっていう縛りはないよな…。
「ヒデル!大変よ!」
二階から俺を見下ろしてエミが慌てた様子で声をかけてきた。
「なんだ!エミ!どうした!」
「家具がない!」
おおう、賃貸なのは家だけなのね…。
続く
チーレムを目指して何度失敗しても諦めない俺の話! 松田ゆさく @yusaku86
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