第7話 街道にて

 街道を進んで数日。

向かうは冒険者ギルドのある街。テッカーナ。

ギルドに登録して仕事をしよう。

収入がなければ4人は食べていけない。

ハーレムを目指すうえで、とんでもない落とし穴だ。

いくらチート級の魔法能力があっても、お金や食料は出せない。

うう、お腹すいたな。

これからハーレムはもっと増える(予定)だ。俺の甲斐性が問題だった。


 ふと、辺りを警戒するために使っていた【千里眼】に4つの人影が道を塞いでいるのが見えた。


 御車役のエミも見つけたようで、

「ヒデル、前方に怪しい男が見える。このままだとぶつかるけど、どうする?」

「お兄ちゃん、この辺りは盗賊が出ると噂で聞いたことがあります」

「うん、警戒しておこう。ミカは、セレナに守ってもらってね」

「は~い」


 ついに馬車は男たちの前に来たが、どいてくれる様子もなく、その中の一人が声をかけてきた。


「検問だ。荷物をすべておいてゆけ。」


 エミが一瞬こちらを見て、アイコンタクトで頷き、言い返す。

「そんな理不尽な検問聞いたことないわ」

「ならここで死んでもらうしかないな」


 むくつけき男たちは武器を取り出してニヤニヤしている。

うへ、気持ち悪い。


「【アイスランス】!」


 馬車の中から男たちを狙い魔法を唱える。

指先から無数の氷柱が男たちを襲う。


ドスドス!

男たちに当たらないギリギリを氷柱が突き刺さる。


「ぎゃあああああああ」


 地面に突き刺さった氷柱は辺りを氷結化し、1人を除き氷で固めてしまう。


 馬車から降りて、先ほど話しかけてきた男に俺は言い放つ

「まだやるかい?」


 男は武器を捨て、両手を上げ、

「こ、降参だ」

「お前たちの拠点はどこだ?」

「へへへ、いうわけないだろ?」

「【ファイア】」


指先から放たれた小さな火は男の尻をあぶった。

拷問とか嫌いなんだけどなあ。


「あちちち!わかった!いう!いうから殺さないでくれ!」

「最初から素直に言えばいいのに。」



 4人を縄でふんじばり、その場で放置しておく。運がよければ他の通行人が気づくだろう。

俺たちは盗賊のアジトに向かった。




 アジトは数キロ離れた山中の洞穴にあった。

急なことだったので、なんだかんだ夜になってしまったが、奇襲をかけるには最適だろう。

 といっても、馬車に女子を残し、真正面から入って、すべて氷で固めてしまうつもりである。燃やすと物資がもったいない。


 馬車を少し離れたところに止めて、俺は洞穴に忍び寄る。

【身体強化】の魔法をかけ、見張りを【アイス】で凍らせる。

よし、順調だ。

とつにゅー!!!!

 洞穴はしばらく続いていた。月光もアテにならなそうなので【ライト】の魔法を指先で光らせて進む。思ったより深い洞穴だな。

周囲を警戒しつつ奥へ進んでいくと


「・・・!」


 おっと、人の声が聞こえてきたぞ・・・?

【ライト】を消し、物陰に隠れて声を盗み聞く。



「街道に張ってるヤツらはまだ戻ってこないのかい?」


 ん?女の人の声だな。だいぶ綺麗な声だなぁ。


「へ、へい、連絡ありません」


 こっちは男だ。対照的にすごく声が低い。


「うーん、おかしいね。いつも暗くなる前には帰るんだよって言ってあるのに」

「お頭は優しいですからね。きっと今日の成果がなくてまだ頑張ってるんじゃないですか?」

「夜は魔物が出るから危ないって言ってるのに…」


 っく、なんて優しい姐御さん?なんだ。

数は6人か。余裕だな。

俺は物陰から躍り出た。


「やい!盗賊ども!お前たちの仲間は俺が倒した!お前らも観念しろ!」


 バアンという擬音が似合うだろう。俺はドヤ顔だった。


「だ、誰だお前は!」

「ヘッ、たった一人でバカなやつだ。」

「たたんじまえ!」


 迫りくる男たち。

 

「【ウインドランス】!【ホーリーランス】!」


俺の周囲に発生した風の刃と光の刃が一瞬でその場を沈黙させた。


「つ、つよい!」


 暗くてよく見えなかったので【ライト】の魔法を点ける。

そこには粗削りながらも見目うるわしい妙齢の女性がそこにいた。

金髪に紅い目か。カッコいいな。


「さあ、どうする?残りはあんただけだぜ…?」

「……ございます」

「なんて?」

「助けてくれてありがとうございます!実はこいつらに無理やりお頭をやらされていたんです!」


 お頭?は俺に抱き着いてきた。


「え?そうなの?」

「そうなんです!」

「な、なら、君は助けてあげないとね?」

「はい!ありがとうございます!」


 そのとき俺は背中にぞわっとした感触があったので飛び退いた。


「ちっ、もう少しで殺れると思ったのに。」


 あぶねー、美人だからって油断したわ。

お頭の手にはナイフが握られていた。


「この手で倒せなかった相手はいなかったのにね。見破ったのはアンタが初めてだよ」

「お前が頭目だってわかっていて警戒しないわけないだろ?」


 大嘘です。めっちゃ無警戒でした。

わかったのは、セレナのときと同じ感じを嗅ぎ取ったから!

あぶねー、暗殺に注意しててよかった~。また死んで転生課のねえちゃんに会いに行くとこだった。絶対バカにされる!


「さて、どうする?最後の手段だったんだろ?」

「アタシの負けさ。降参する。アタシより強い男。いいね。惚れちゃいそうだよ」


 あれ?戦わないの?


「こ、今度は本当だろうな?」

「ああ、本当さ。縛ってくれて構わない。ここにあるものも、アンタのもんだよ」

「ふむ。じゃあ、そうさせてもらう。俺の名前はヒデル。君の名前はなんていうの?」

 

 女を縛って、そのへんを物色しながら名前を聞いてみる。


「アタシの名前かい?ルシールだよ」

「じゃあ、提案だ。ルシール、今日から君は俺の部下になる」

「え?」

「俺はこれから魔王軍と戦う男だ。だから部下が欲しかった。俺のこと惚れちゃいそうなんでしょ?ならいいよね?」

「…いいけど、裏はないんだろうね?」

「ないね。逆に、ルシールが俺を裏切るようなことがあったら、そのときは容赦しないからね?」

「わかったよ。その話飲もうじゃないか。」


 ルシールの縄をほどく。


「君の部下も解放してあげるね。で、俺たちはこれからテッカーナに向かうから、部下さんたちは準備ができたらそこで合流しよう。」

「手下たちまで部下にしちまっていいのかい?」

「ん、もう何人いても同じだから。ただし、もう盗賊は廃業だよ?」

「承知しました。これよりアタシたちは、ヒデル様の配下です」


 こうして部下を得た俺たちは、テッカーナへと向かうのであった。




続く
















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