第4話 ラカド村①

 旅に出ると豪語した俺であったが、つぎの目的地は隣のラカド村である。

徒歩で約2日の距離だ。

ラカド村には何があるって?

いるんだよ!

幼馴染がっ!

幼いころ村を焼かれ逃げだした村民の中に、幼馴染がいたんだ。

年に一回くらいのペースで村同士の交流で会ってた記憶がよみがえったのです。

いいよね。幼馴染。

年齢は2つ下だったかな。


 しかし、あれだな。

チーレム目指すうえで、移動手段に困るな。

今後、メンバーを増やすと、ぞろぞろ歩かなきゃいけなくなるぞ。

あれか?一列になって歩くのか?ツボ調べたり、人んちのタンス調べたりするのか?

そんなゲームみたいなことしたくないな。


「何を考え込んでいるんですか?お兄ちゃん。夕食の支度が出来ましたよ」


 旅の初日、野宿。

おらこんな生活いやだ。

早く抜け出したい。

どっかに一国の姫でも落ちてないかな。

さっと助けて、城に案内されて褒美に家とかもらいたい。

なんなら姫ももらいたい。そこは必ずだ。


 ずずっと野菜スープをすする。

美味いなあ。我が妹の料理スキルは天下一品だ。

いつかメンバーにコックも必要じゃないかな?


 ダメだダメだ!必要なものが多すぎる!頭の中がいっぱいいっぱいになりそうだ。

なにがチーレムだ!生活すら危ういじゃないか!


 一旦落ち着こう。

セレナを抱きしめる。

くは~、いい匂いだ。

胸いっぱいにセレナ香を吸い込む。

あれ?少し焦げ臭いぞ?

料理のときに少し焦げたかな?


「お兄ちゃん、大変です!火事です!」


 ハッと我に返る。

そうだよな!セレナが焦げてるわけないよな!


 火事は俺たちが向かう方向。

行先の村がある方向だ。

これはマズイぞ!幼馴染を助けに行くフラグだ!

急いで支度をして走り出す。

くそっ!間に合え!幼馴染!無事でいろ!





 一方そのころ、ラカド村は燃えに燃えていた。


「みなさーん、急いで逃げましょう!こっちです~!!」


 エミは村民を誘導している。


 こんな小さな村に魔物の群れが攻めてくるなんて。

飛び交う悲鳴。燃える家。

さながら地獄とはこういうことを言うんじゃないだろうかと思う。

でも、まだあきらめちゃだめだ。

逃げないと。


「お姉ちゃん、私たちどうなるの?」


妹が泣きながら私にすがりついてくる。

なんとかこの子だけでも守らないと。


ギエー!


ゴブリンが鳴き声を上げながら駆けてくる。

万事休す。

妹を守るようにかばう。

そしてゴブリンは短剣を振り下ろす。


ドスっ


鈍い音とともに血しぶきが舞う。

あれ?痛くない。






「ようエミ。間に合ったな。早く逃げろ…」


ゴフっと吐血しながらエミに逃げるように促す。

ぶっちゃけ、超痛い。

とっさに庇ったはいいけど、カッコつけすぎたな。


「お兄ちゃん!」


遠くでセレナの声が聞こえる。

ああ、やっちまったな。

もっと上手くできたんじゃないかな…






 どうやら俺は死んだらしい。

幼馴染のエミを庇ってデッドエンド。

おいおいゴブリンにやられてだぜ?

そりゃ、急だったし、こうするしかなかったよ。

あ~、失敗したな。

せめてもう少しセレナの匂い嗅いでたかったな…。




「ようこそ、異世界転生課です」


あれ?この人も美人だけど、前会ったお姉さんじゃない。


「崑崙坂英樹さま、テッレタリア転生担当官、ウェンディと申します。よろしくお願いします」


そっか、あのお姉さんは日本担当だったのか。

今後このお姉さんが俺の担当になるんだな…


「日本担当官が日本転生課への転送を拒否されたので、こちらで対応いたします」


くそっ!あの女!めんどくさがり屋が!


「転生じゃなくて、テッレタリアで時間を巻き戻してやりなおしたい」


エミをきちんと助けてやりたい。


「かしこまりました」


待ってろよエミ。

今度は村も助けてやるからな!






続く








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る