第2話 りとるしすたー

「お兄ちゃん?外寒いから早くお家はいろ?」


 長い黒髪が風で揺れる。

気づけば俺は一軒家の外で寝転んでいたようだ。

こっちの世界での記憶もはっきりしてくる。

テッレタリア。

いわゆる剣と魔法の世界。

魔王軍が人間界を蹂躙しようと日夜、戦闘が繰り広げられている。

世界観は中世ヨーロッパか。

いいね。ベタなのいいよ!

こっちでの俺の名前はヒデルらしい。

なんとなく前世の名前が継承されてるのが面白い。

そんなことより、家族構成だ。

どうやら両親は魔王軍に襲われて死んでるらしい。

逃げてきた村で兄妹二人暮らしをしてるようだ。

うう、、我ながらなんて切ない人生なんだろう。


「ああ、セレナ。ごめんよ。眠れなくてね。ちょっと夜風に当たりたくなったんだ」


 まっぴら嘘だ。めちゃくちゃ寒い。たぶん冬だコレ。


「そうなんだね。明日は街に行くんでしょう?早く寝ないと?」


 俺の3歳下のセレナに心配されるなんて、情けない兄貴だなあ。


 そこでハッと思い出した。

俺はチーレムを目指してここに来たんだ。

なら、妹だって対象なんじゃないかな?


 くそっ!自信がない!前世が童貞で女の子つきあいがなかったから基準がわからん。


 こんなんじゃだめだ!

妹すら攻略できない男にハーレムなんて築けやしない!


 俺は決意した。

セレナに手を出そう!


「おにいちゃ、、あ」


 二人で家の中に入ろうと戻る途中。

彼女の肩に手を回す。


 ビクッとしたあと、身体をこちらに預けてきた。


ン!

これは脈ありなんじゃねえの?


「お兄ちゃん、いい匂いがします」


 え?俺臭う?


「違いますよ。草原の匂いと…お父さんみたいな匂いです。とっても大好きです」


 清楚系かくっそ!

いい子じゃねえか!

罪悪感が湧いてきた。

お兄ちゃん歴10分もないけど、いい妹になってくれてありがとうといいたい!


まて。ここからどうしたらいい。

つ、次はき、キスかな?

この至近距離ならいけるやろ!


 たくさん予習はしてきたはずなのに、いざ本番になるとなんてっ難しいんだ!


「セレナ。キスしてもいい?」


 聞いちゃった~!

こういうのは黙ってするもんだよね?知らんけど!


「え?いいですよ。おやすみのキスですね。」


 しまった~。文化圏の違いが出た~。

ほっぺやおでこにするやつ~。


「ち、ちがっ。こ、恋人のキスだ!」


 キョトンとするセレナ。

やっちまったかぁ!?失敗か!?


 月明りでもはっきりとわかるほど顔を真っ赤にして目を閉じ、唇をこちらに向けてくる。


こ、これは!いける!


ぱくっ


 はい、キスっていうより、唇を食べました。

唇、ぷるっぷる。


「ふふふ、、、キス、、しましたね?」


 あれれ~?様子がおかしいぞう。

ものすごいプレッシャーを感じる。

笑顔がダークですよセレナさん。


「兄さん。」

「はい!」

「兄さんはもう私だけのものです。今それが決定しました」

「え?」


 素早く後ろに回り込まれ、手を縛り上げられる。


「え?ちょ、なにしてんの?」

「兄さんはこれから、なんにもしなくて大丈夫です。私が全部お世話してあげます」


 まずーい。これ、いわゆるヤンデレじゃない?


「あ、でも、やっぱり、二人きりになるなら、兄さんを殺して私も死ねば永遠よね?


 あかんでこれ。

殺される流れやないか。


「兄さん、こんな危ない世界じゃなく、平和なあの世で一緒に暮らしましょう。」


 どこからか取り出してきた包丁を俺に向ける。


さくっ





 どうやら俺は死んだらしい。

ヤンデレ妹に刺されてデッドエンド。

まだキスしかしてなんだぜ?

そりゃ、もっといろいろしたかったよ。

また童貞だ。

おいおい、チートな能力持ってても、妹に使うわけにはいかないだろ?

セレナ可愛かったなあ。ヤンデレ気質がなければ。ベストな女の子だった。



じーっとこちらを見てくる転生課の巨乳。


俺のせいじゃなくね?


「何回死ねば気が済むんですか。あなたは」

「今回ばかりは誰も悪くないと思う。」

「まさか30分で戻ってくるなんて、あり得ません」

「ほんとだよね。あり得ないよね」

「転生先はテッレタリアのまま、時間軸を元に戻すので、次は上手くやってください。」

「はい。すんません」


 俺の周りを泡が包み込む。

ああ、、、異動だ。






「ぶはっ!ひどい目にあった!」


 月明りがキレイだね。

テッレタリアに戻ってまいりました。


「お兄ちゃん、そんなとこでなにやってんの?」


きた。

奴だ。

俺を殺したあの女。

セレナだ。


次こそは上手くやらねばならない。




続く








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